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3話 俺とフィリーダと無実の罪

「な、ななな……」


死体の山の前で呆然とする女、これは厄介ごとの臭いがするからさっさと退散をば……

あ、でも第一遭遇者だよな、人の住んでるところ知ってるってことだよな?

ここはちゃんと会話して聞きだす必要があるな、あわよくば案内してもらおう。


「ちょっとそこのアンタ!」


おっとありがたいことにあちらから話しかけてきたな。

ただあの目は明らかにいい印象を抱かせるものじゃないな。明らかに敵意を向けてる奴だ。

おっと話しかけられたんだ、返事をしないとな。


「ゴホッ……あぁどうも、初めまして俺はケン・フジマだ。ちょっと道を御尋ねしたゴフッ」

「ひぇっ!?」


おぉっと喀血しちゃてビビらせちゃったかな。

まぁでも症状の抑え方とか分からないから仕方ないよね、彼女に血が飛び散る前にヨーヨーが血を吸収してくれるし大丈夫だよね。


「失礼。喀血症なる物を患っているんだ。」

「喀血症!?それって奇病じゃない!?何でアンタそんな平気そうに立ってるのよ!」


結構酷い顔していると思うんだが、平気そうに見えるんですかね。

それにしても喀血症は奇病なのか。それに転移早々罹る俺は運が悪いとしか言いようがないな。


「病気には慣れているんだよ。」

「病気に慣れるって何よそれ……って今はそれよりも!これよこれ!このゴブリン!アンタが全部やったの!?」

「あの、興奮し過ぎ。頭に響くからちょっと声抑えて……で、ゴブリンは俺がやったんじゃないよ。このスライムが全部やったんだよ。」


もしかしてこのゴブリンたちは飼育されていたとかじゃないよな?

それを俺たちが踏み荒らしたなんてことは無いよな?


「アンタのスライム?じゃあ実質アンタがやったようなものじゃない。それにしても全滅か……ただのスライムがゴブリンの集団を全滅?にわかに信じがたいわね。っていうかこの場合私の依頼って――」


考えるそぶりを見せる女、嫌な予感がするからさっさと道を聞いて退散しよう。

付き合ってるとギャーギャー騒がれて頭痛が増しそうだな。


「信じなくても結構だよ。それよりも俺は道を聞きたいんだけど――」


俺の言葉は女に肩を掴まれたことで強制的に止めさせられた。というか細指の割に結構力があるみたいで痛いんですけど。

え、何ですか何ですか。この子怖い。


「アンタちょっと面貸しなさい。」

「面貸せとは……」

「ついてきなさいって言ってるの!これからアンタをギルドに連行して真偽を確かめるの!」

「何、ギルドだと!?ゴホッグヘッ」

「えぇそうよ!ギルドにいる虚断官にかかればアンタが嘘をついてるかどうかなんてすぐに分かるわ!私の依頼を横取りした罪、洗いざらいはいてもらうわよ!」

「是非。」

「ふふっ、そうよね。横取りなんてばれたら軽くても冒険者称号の剥奪だものね、行きたくないのも無理は……え?」


何だよその変なものを見る目は。

お前今ギルドに行くって言ったよな?ギルドがあるという事は街も必然的にあるという事だ!

これは何という行幸!地獄に仏!今目の前にいる騒がしい女が女神に見えるぞ!


「ほら、ギルドに連れて行ってくれるんだろう?案内してくれよ。」

「な、何よアンタ気持ち悪いわね……もしかして捕まりたくてわざと私の依頼を?」

「依頼なんて知らん。俺はただ街に行きたいだけなんだよ。どうせその虚断官とやらは俺が嘘をついていないなんてすぐ分かる。」

「あぁそう!じゃあいいわよ、連れてってあげる!大方、強気でいれば私が引き下がると思ったんでしょうがそうはいかないわ!」


あぁもう、連れてってくれるなら何でもいいですよ。

さっさと街に行ってとりあえず人と触れ合いたい……森の中で1人とスライム一匹は寂しすぎるからな。


俺とヨーヨーは喧しい女――名前聞いても罪人に名乗る名前は無いとかで教えてくれなかった。――に連れてギルドがあるという街に向かった。


途中あちこち見ていると鑑定に薬草と表示されているものがあったので女の目を盗んでヨーヨーと一緒に採取してました。

割とこの女、チョロい。



「さぁ着いたわ!ここがアンタを裁く街、キィーラよ!」


何で街の紹介するだけでドヤ顔するのか不思議で仕方ないのだが……しかし立派な城壁に門だな。

この規模の街なら過ごしやすそうだ。


「お、フィリーダじゃないか。どうしたんだ、今日はゴブリンを狩るんだーって息巻いてたじゃないか。んで隣は……誰だ?」

「あ、どうも初めまして。俺はケンと言うもので――」

「こいつは私の依頼を奪ったこそ泥よ!これからギルドに行って罪を明らかにするの!」


お゛い、自己紹介の邪魔するんじゃないよ。フィリーダだっけ?失礼な女だな全く。接触感染で風邪をうつしてやろうか。

……いや、連れてきてもらったんだから止めておこうか。


「そ、そうか。事情は分かった。通っていいぞ。」


門番さんが何かを察してくれたのか、可哀想なものを見る目で俺を見る。

そうです、俺これから無実の罪でドナドナされるんです。

そういえば、俺のこの服装、誰にも突っ込まれないな……?寝間着のはずなんだけどそう認識されていないのか?


さて、ギルドに行こうか……じゃなくて、連行されようか。


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