12話 俺とヨーヨーと進化
えーっと、今のこの状況を簡単に整理してみようか。
1.ゾンビ討伐の依頼で俺とヨーヨーは廃村にやって来た
2.向かう途中で喘息を発症してしまった俺は善戦しながらも途中で呼吸困難に陥り意識を失う。
3.俺が意識を失う直前までヨーヨーはゾンビをバッタバッタと倒していた。
4.目を覚ますと寝ている俺の顔の上に赤いスライムがいた。
といったところだろうか。
この赤いスライム……いや、こいつ絶対にヨーヨーだろ。
普通のスライムが俺の頭の上、それも額の上で無抵抗の相手に攻撃してこないなんてありえるのだろうか。
そもそも、そこはヨーヨーお気に入りの場所だし……でも何で赤くなったんだ?
一応声をかけてみるか。
「ヨーヨー?お前なのか?」
俺の声に反応し赤いスライムはズムズムと嬉しそうにはずむ。あぁ、この反応はヨーヨーのそれだ。
一度起き上がって周りを見てみるとうわぁ、辺り一面に人型の焦げた跡があるよ。
日も差しているし、動かなくなったゾンビの死体が火の光で消滅したという事だろうか。
しかしこの数……ざっと100はあるよな。これ全部ヨーヨーがやったのか。俺も少しは倒したはずだけどそれ以上か。
ふと、俺の脳内に一つの可能性が生まれ、それを確認するためにヨーヨーを鑑定してみた。
種族名:ヴァンパイアスライム
名前:「ヨーヨー」
Level 18
体力 200
魔力 150
筋力 160
スキル
スライム 吸血 水魔法 氷魔法 血流操作
「……は?」
俺は舐めていましたよ。赤くなったから進化したんだろうなぁとは予想した。
んでもってその種族名がどうせ後ろにベスとかついているんだろうなぁと考えましたよ。
何、ヴァンパイアスライムなんて元いた世界でも聞いたことないんだけど。
確かにヨーヨーは俺の血を飲むのが好きだったがまさかそれが原因で本格的にヴァンパイア、つまりは吸血鬼への扉を開けちゃったのか。
でも日光浴びても平気なんだな、ヨーヨー。この世界のヴァンパイアって太陽平気なのか?
と、とりあえず……
「進化おめでとう、ヨーヨー。」
ヨーヨーはピョンピョンと跳ね、感情を表現する。見た目も種族も変わってもヨーヨーの本質自体は全く変わってないようでとても安心した。
ただ、ヨーヨー。ちょっと弾む力強くなってないですか?ちょ、痛い痛い。苦しい。
まだ喘息も続いてるからそっちもきついしさ……
あ、俺もレベルあがってた……え?1だけ?
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・
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「……ちょおっと待ってください。ケンさん。」
「な、なんでしょうかね。パムルさん。ケホッ」
討伐系の依頼では魔物を討伐したのち、ギルドで討伐した魔物を確認することになっている。
方法はいたって簡単。書類に手を置くというもので依頼受けてからまたギルドに戻って来るまでパーティ内で倒した魔物を表示するというものだ。
その表示された書類を見てまじまじと見るパムルさん。
そんな彼女の後ろからやって来た懐かしい顔が――
「おう、パルム。どうしたんだ?ってケンじゃねぇか。依頼を受けに来たのか?」
「どうも、ブーシェさん。いえ、達成したんで報告に――あぁ、ナイフありがとうございます。使いやすいですねこれ。」
「だろ?俺も若いころは世話になったんだよ。だが最近は流石に魔物と対峙するような体じゃなくなったしな。貰い手を探してたんだ。お前がいたのはちょうどよかったさ。」
なるほどね、じゃあ今後もこのナイフ、有難く使わせていただきましょうかね。
……ってかブーシェさん冒険者とかだったのか?
「あの、ブーシェさん。ケンさんが討伐してきたゾンビなんですけど……」
「あン?どれどれ……ってはぁ?」
何、ブーシェさんまでそんな目をひん剥いて書類見てさ。何か変なこと書いてあったか?
「なぁケン。お前ゾンビを討伐しに行ったんだよな?」
「ん?えぇ、間違いなくそのつもりですけど……もしかして俺が倒してきたのってゾンビとそっくりの別の魔物だったり!?」
「いや、そうじゃねぇ。確かにゾンビを討伐した記録は出ているんだ……まぁそれも依頼で出した討伐数以上の数なんだが。」
じゃあ何だっていうんだろう。言われた廃村にいって言われた通りにゾンビを駆逐したっていうのに(殆どヨーヨーなんだけどね。)2人は何に驚いているんだろうか。
「あの、ケンさん。貴方が討伐した魔物の中に――ゾンビロードがいるんですよ。」
「え?」
「ゾンビの軍団を総べるゾンビロード。その名前が書類にあるんですよ。」
ロード、つまりは支配者……だったよな、確か。
ゾンビの支配者があの中にいたのか?いやでも俺はそんなのみた覚えがないし倒した覚えも……待て。
意識を失い、起きたとき周りはゾンビが焼き焦げた跡しかなかった。そのせいで確認できなかったが、その中にゾンビロードがいたとするなら。
そしてそれを倒した可能性が最も高いのは――!?
「な、なぁヨーヨー。お前ゾンビの中に格別強い奴いなかったか?」
あ、ヨーヨーがプルプル震えはじめた。この時のヨーヨーは思考をめぐらせている時だ。
プルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプルプル
ピタァッ!
どうやら終わったみたいだ。果たしてその答えとは
ポヨンとヨーヨーは元気いっぱいに弾んだ。
これは、○ということかっ!倒した覚えあるという事か!




