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10話 俺と汚部屋と冒険者ランク

と、とにかくフィリーダをベッドに寝かせようか。

幸いベッドの上は散らかっていない。いや、厳密に言えばシーツとか荒れ放題なのだが床に比べたら幾分かマシだ。

血を吐きそうなのを何とか堪え、ヨーヨーの力を借りゆっくりとベッドに置く。くそう、気持ちよさそうに寝やがって俺の苦労も知らずに!

……怒っても仕方ないか。頑張って来たんだろうしゆっくり寝かしておいてやろう。

ただ、掃除はするべきだと思うんだけど。



部屋を出た後、溜めこまれた血を吐いたが、フィリーダを運んだ報酬として夕飯のおかずが一品増えたのは嬉しかった。

女将さんの料理美味いからな



翌日、朝食を静かに食べているとズンズンと何ともデカい足音が俺に向かって近づいてくるような

振り向いてみるとあらあら


「よう、フィリーダさん。おはようございます。」


にこやかに挨拶しているはずなのに対するフィリーダの顔は怖い。

この顔は見たことあるぞ、羞恥に歪む顔だ。


「ケン、私不思議な体験したのよ。」

「ほう。」

「昨日ソファで寝ていたはずなのに起きたら私の部屋だったのよ。不思議じゃない?」

「寝ぼけて起きて部屋に戻ったんじゃない?」

「……女将さんに聞いたのよ。」

「あ。」


あちゃー女将さん話しちゃったのか……という事はフィリーダを部屋に運んだのは俺と知られてしまったか。

それ故の顔か。確かに自分の部屋に男が入ったとなると恥ずかしいよな。

俺がそんな彼女に送る言葉と言えばこれだな


「もちょっと部屋綺麗にした方がいいんじゃない?」

「うるっさい!」

「ぶげぇ!」


何で俺頭思いっきり殴られたし。

アドバイスしただけだろうが!

なんて言い返そうものならもっと殴られてそうだから黙っておこう。

幸いフィリーダはまだ怒っていながらも俺から離れた席で食事を始めた。

今の彼女には触れないが吉だろう、俺たちはさっさと食事を済ませギルドに行くとするか。



「……あのケンさん。昨日もそうですけど本当に依頼終わらせるの速いですね。駆け出し冒険者とは思えないスピードなんですけど。」

「何かすいません……」


パムルさんの複雑そうな表情、その原因は俺がバタフライバットと呼ばれる魔物の討伐依頼を一時間で達成してきたことにある。

バタフライバットはいわゆる吸血蝙蝠なのだが、俺の喀血による血に反応したのかわんさか飛び出してきた。

パタパタと飛び回る奴らに俺のナイフはかすりもしなかったが、ヨーヨーは的確に魔法をぶつけ、バタフライバットを沈めていった。

その結果、依頼を迅速に完了することが出来たというわけだ。


「いえ、依頼が早く終わることに越したことはありませんから大丈夫ですよ。ただ――」

「ただ?」


一拍おくパムルさん……あの、嫌な予感がする溜め方ですね。怖いんですけど。


「流石にこれだけ早く依頼をこなす人に駆け出し向けをさせるのも他の冒険者にも悪いので、ケンさんには上のランクに行ってもらいます。」


「え?ランクとかあったんですか?」


そんな話聞いたことないんだが?俺の疑問にパムルさんの動きが固まる。

あ、話していたつもりだったんだな。俺はそんな覚え全然ないけど。


「……すいません。ケンさんは今の今までプレーンランクでしたが、ブロンズランクになります。」


お、おう。仕事できる感じのパムルさんだったが、結構抜けているところもあるのか。

何にせよランクが上がったという事はより質のいい依頼を受けることが出来るんだな。


という訳で早速ブロンズランクから受けることのできる依頼――とある廃村に蔓延るゾンビの討伐を受けることにした。

ゾンビを討伐に行くのなら聖水を買って行った方がいいとパムルさんに教えてもらったので、道具屋で売られていたものを購入し、門からその廃村へと向かった。


……なんか、無性に息苦しい気がするのは気のせいだろうか。おかしいな、ここ高地という訳じゃ無い筈なのにな。


『喘息を習得しました』


……え?

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