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「ねぇ、お母さん。私の将来ってどう思う?」


 母の持参した学校のプリントをめくりながら呟いた。昨日から長期休暇が終わり学校が始まった。と同時に定期テストの範囲も発表された。これを受けなければ単位が認められるのは難しいかもしれない。


「どうしたの?急にそんなこと……」

「ここにね、志望校と志望学部書くようになってるの」

「もう、そんな時期なのね」

「そうなの。でもね、来週のテストが受けれなかったら留年の可能性があるのよね?出席日数の問題もあるし。

 だとしたら、この紙必要ないのかな……って」


 母は何と答えるだろう?急にこんなこと言っても困るよねって自分でも思うけど漠然とした不安が立ちはだかっていて将来も靄がかかって先は見えそうにない。


 なのに母は笑い出した。


「あらやだ、高校なんて卒業しなくたって高等学校卒業程度認定試験を受けて合格すれば大学に行けるわよ」

「そうなの?」

「そうよ。8月と11月に行われるはずだから、それで合格すれば大学受験できるわよ。でも、大学行きたいの?」

「わかんない。ただ漠然と行くものだと思ってたんだけど、何がやりたいってないの」

「それは困ったわね」


 と、全然困った風じゃなく母が笑う。

 つられて笑ってしまった。そうやっていつでも深刻な空気を壊してしまう。


「とりあえず来週のテスト受けれるか先生に相談して、その認定試験のことも調べてみる。

 それから、先のことだよね………

 難しいね。お母さんはどうやって決めたの?」

「何も考えなかったわね〜幼稚園から大学までエスカレーターで上がったから。大学の学部の中から英語が得意だったから英文科。在学中にお父さんと付き合ってたからそのまま卒業と同時に結婚」

「それって、何の参考にもならないじゃない」

「何でも良いのよ。幸せなら」


「跡継ぎは?」

「そんな先のわからないこと考えなくて良いのよ。

 会社はね、才能ある人が後継者。血縁で決めてたら社員が路頭に迷うと困るでしょう?そこはシビアよ。

 家だって残さなきゃいけないほど格式の高い家でもないし、お墓は永代供養を頼めば問題無いわよ。

 だから婿を取る必要も無し。自由に恋愛なさい」

「どうしてそこまで飛躍するの〜?」

「好きなことをやりなさい!って言ってるの。一度きりの人生なんだから」


 母は笑いながら帰って行った。



 好きなこと……

 それがわからないから考えてるんじゃない!



 夜になって篤がやって来た。


「先生、来週試験なんですけど受けるのは可能ですか?」

「試験?そっか、そんな季節だね。

 体調的にはどう?しんどくない?」

「ん………よくわからないです。術後を思えば元気になりましたけど、試験を二日間受ける体力があるか?と聞かれたら難しいです」

「普段から体力のある人なら退院して、外来で抜糸も可能なんだけどね。心優ちゃんの場合は体力も無いし、検査があるし、免疫力も落ちてるから何らかの感染症とかも心配で入院継続してるんだよね。

 まだ退院は難しいから外出で試験だけ受けに行く?

 その代わり、家族の誰かの送迎と付き添いが必要だけど…」

「ありがとうございます!お母さんに聞いてみます」

「そうだね。お母さんが大丈夫なら外出を許可するよ。でも、無理はしないように」

「わかってます………」


 ぶぅたれた返事をしつつも久し振りの外界に心が浮き立つのだから現金なものだ。


「そうだ、ラインやってたよね?僕ともやらない?」

「へ……なんで……?」

「何かあればラインで連絡取れるから。

 具合をちょこちょこ書いて送ってくれたら安心でしょう?もちろん問題なくてもそう書いてくれたら良いよ。それはそれで大丈夫だと安心できるし。

 それと嘘や誤魔化しは書かないこと。ホットラインの意味がないからね。正直に本当の症状を書いて。

 オペとかで忙しい時は見れないしすぐに返信できないけど、ちゃんとチェックするから」


 はあ、まあ……と篤に押され友達登録させられた。

 じゃあ馴れる練習とか言いながら、それからは篤から朝の「おはよう」から夜の「おやすみ」まで一日数回メッセージが届くようになった。

 一週間も経てば心優も篤とのやり取りに抵抗感が無くなっているから不思議だ。


 ライン上ではすっかり「お友達」みたい……


 それでもまだドキドキしてる……

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