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 約束の午後、宣言通り親友六人がそれぞれ御用達のお菓子持参で押しかけて来た。

 一階の客間の椅子やソファに心優を取り囲むように座ると今日は哉子が口を開く。


「それじゃあ、色々聞かせていただきましょうか。

 だいたい、私達の誰一人として篤様とお付き合いどころか、誰かとお付き合いしていることすら聞いてないなんて!

 まず、いったいいつからお付き合いを始めたのかしら?」


「えぇっと…あの、ごめんなさい。

 あの、本当に心苦しかったの。皆を信用してなかったわけではないのよ……ただ、他に漏れたら色々大変かな…って思って…」

「まぁ、確かにファンクラブまで出来ちゃったし、バレたら大騒ぎだったわね」


 椎菜が半分納得と同情的に言う。

 が、宙が口を挟む。


「でも、あのお迎えにいらした時にはお付き合いしてたんでしょう?心優の誕生日でしたし」

「えぇ、まぁ…」


「で、いったいいつからお付き合いを始めたのかしら?」


 椎菜が問い詰める。


「…二年生の秋くらい…」


「そんなに前から?」


 沙羅があきれたように呟いた。皆も頷く。


「じゃあ、篤様がおっしゃってた二人の出逢いっていつ頃のことなの?」


 絵梨果がことの始まりから知りたいと言い出し、やはり皆が頷く。そしてリーダー的な存在でもある智尋が言い放つ。


「心優、観念なさい。皆聞きたいことを聞くまで帰らないわよ」


 それから三時間、それこそ心優が疲れてぐったりする直前まで追及し、その後はいつものとりとめもないお喋りを楽しんだ。

 話は尽きない。


 だが、時間になればそれぞれお迎えがやって来る。

 いつもなら、そのまま娘を連れ帰るところだが、タイミングが悪かった。迎えに来た母達はそのまま上がり込んで母達同士で盛り上がった。


 考えてみれば幼稚園からのママ友。まして昨夜の婚約発表。ママ友だって色々聞きたくてうずうずしていた。

 案の定既に打ち合わせ済みか皆上がり込んで母達のティーパーティーが始まった。

 そしてそのまま母子が合流してディナーへと突入する。


 結局、披露宴の招待状を渡しただけでなく篤の友人を紹介すると約束させられてお開きとなった。

 篤の友人でそこそこ有望であれば年の差は気にしないらしい。後輩ならなおのこと良しといったところだろう。

 勝手に約束してしまったけど大丈夫だろうか?篤さんに迷惑かけてしまう………


「とにかく相談しなきゃ……」


 でも、沙羅と椎菜は彼氏がいたはず……

 ん〜………良いのかな……?



 入浴後にタイミング良く篤から電話があった。

 早速正直に真正面から相談してみる。心優があれこれ思い悩むより余程簡単に解決するはずだ。

 案の定、篤が笑って了承した。


 聞けば、昨夜の婚約発表はあっという間に広がって、今日はあちこちから祝福が届き、と同時に羨ましいとやっかみ半分か心優の友達を紹介しろとうるさい輩がいるらしい。

 女子高生への憧れというか幻想もあるだろうが、心優とその同級生は既に卒業して女子高生ではなくなったというのに……


「だから、紹介するだけなら出来るよ。もちろん心優の友達だから、その中から厳選して」




 意外なことに、この件は柾が主導してメンバー集めしてくれることになった。

 こんなこと面倒臭がって逃げそうに思っていたのに、いったい何がどう気が向いたのか……

 何か企んでいそうな雰囲気で嬉々として人選に励み計画を立てる柾は少々不気味だ……


 だが、柾が参加なら丸投げ出来る。

 紹介者として自分や心優も顔を出さないといけないかと思っていたが、柾なら先日の卒業パーティーで彼女らと面識がある。

 わざわざ心優を連れて行って見せびらかすつもりはない。野郎共の目的に心優の姿を見るというのが含まれているのを充分承知していながら狭量な篤であった。


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