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そうして迎えた心優の誕生日。
篤は半休を取り学校まで迎えに行った。
さすがは私立のお嬢様学校。送迎車専用の車寄せが有る。普段は母か運転手が行くのだが、そんなところに篤が行けば当然目立つ。しかもわざわざ車を降りて助手席のドアを開けてくれるのだから……
女子校に若いイケメンが来ればそれだけで大騒ぎになる。
迎えの車に乗り込むだけで、こんなに消耗するとは思わなかった。今日は金曜日だけど、来週はもう質問攻めでとんでもないことになりそうで大きくため息を吐いた。
「どうしたの?疲れた?」
車を出しながら心配そうに尋ねる篤に苦笑する。あの騒ぎに何とも思わないのだろうか?
しかも、今度はポケットに入れたスマホに次々着信が入る。
内容は見なくてもわかる。
「なんでもないです。篤さんこそ、大丈夫ですか?あんなに騒がれて……」
「女子校なんてそんなもんでしょ。若い男が珍しいだけで。ここ、姉さんの母校でもあるからね。何回か来たことがあるんだ。小学生とか中学生だったけど、それでも『可愛い』って大騒ぎだったよ。珍しければなんでも大騒ぎする場所って認識かな〜違ってる?」
「いえ、違ってません。確かにそんなところは有りますね。
でも、篤さんが格好いいせいでも有りますよ」
制服のままどこに行くのかと思っていたら篤のマンションに着いた。そのまま着替えの入った紙袋を渡され洗面所に向かう。袋の中を見てみれば下着まで揃っていた。
ドキドキしながらシャワーを浴びて新しい下着を身に付ける。全然セクシーじゃない可愛い清楚系な薄い水色のセット。
誰が買ったんだろう……?篤さん?里英先生?お母さん?と疑問に思わないでもないけれど……何故かサイズもぴったりだったし……。可愛いから良いんだけど、気に入ってはいるんだけど気恥ずかしい。
洋服は水色のゆったりしたワンピース。伸びる素材で着心地も良い。
鏡の前でくるりと回って確認し、脱いだ衣類を紙袋に仕舞ってリビングへ行けば、ご馳走が並べられていた。
心優に気付いた篤が直ぐに来て手を繋ぎ…ソファに連れて行かれフルートグラスを渡される。
黄金色の液体に泡が昇っていく。
「ノンアルコールだから大丈夫。二十歳の時は本物のシャンパンを用意するよ」
二年後の約束。未来があること、それを言ってくれることが嬉しくて頷いた。
「心優、お誕生日おめでとう!」
「ありがとう」
一口含むと甘い味と炭酸のシュワッとした辛味が合わさって美味しい。並べられた料理も美味しかった。何より二人でこうして過ごせることが嬉しい。
「心優、手を出して」
隣に座る篤に言われて素直に両手を出せば、篤の左手が心優の左手を掴み薬指に指輪をゆっくりとはめた。
ピンク色のキラキラしたハート型の石とその両端の下の部分に透明の多分ダイヤモンドだろう石が二個光っている、綺麗な本当に綺麗な指輪だった。
驚き過ぎて声も出ない心優に微笑んで囁く。
「心優、愛してる。結婚しよう」
夢のような言葉が聞こえた。
「心優、返事は?」
「…だって…」
「僕は『はい』って返事しか聞かないよ。僕には心優しかいないんだから」
「良いの?私で良いの?」
「心優が良い。だから結婚しよう」
「はい。ありがとう、篤さん」
「ありがとう、心優」
そのままぎゅっと抱きしめられてキスされた。
この前みたいな心優を翻弄するような情熱的な口付けに圧倒されてどうして良いかわからず本当にされるがまま。
びっくりはしたけれど求められているのがわかる、そんなキスが嬉しい。恐る恐る両手を篤の背中に回せば、さらにぎゅっと強く抱きしめられた。




