2
このお話はフィクションです!
フィクションですからね!と、しつこく言わせてくださいませ。
扉が閉まった途端、心優と里英は顔を見合わせて笑った。
「仲良し、ですね…」
「二人だけの姉弟だし、同じ職業職場でしょ?何かと話すことはあるのよ。まあ、昔から従順で生意気なことは言わないし可愛くてねぇ〜」
そんなことを話しかけると、興味津々とばかりに目を輝かせる。ホントに可愛い。弟も良いけど、こんな素直で可愛い妹も良いなぁとにまにましながらとりとめもないお喋りを楽しんだ。
30分ほど経った頃、ノックの音と共に清水柾医師が顔を出した。
「義姉さん、お願いします」
「仕方ないわね。もう下に来てるんでしょう?」
「産休に入るまで送迎は絶対でしょうね」
「過保護過ぎるのも困るのよ。あなた医師なんだから言ってやってよ」
「僕は外科なので説得力に欠けます。小児科医師の義姉さんでも駄目なんでしょう?あきらめてください」
「同じ医師免許なのにねぇ〜」
などと言いながら渋々よっこいしょと席を立ち、少し目立ち始めたお腹を撫でる。
「じゃあ心優ちゃん、また来るわね。私が早く帰る分、清水先生が話し相手になってくれるわ。男性に慣れる練習と思って頑張ってみて。クレームは私が受け付けるから」
あとはよろしく!と子守りを押し付けられた格好の柾は苦笑い。
子守りは失礼か。現役女子高生だもんなぁ〜
しかも美少女。若い連中が騒いでいて、師長が出入り禁止令を出していたことを思い出す。
どこの病棟でも同じだろうが、小児科以外はたいてい年寄りばかりで若い子は少ない。若い男に看護師が群がるように、若い女にも男はそれなりに反応する。
主治医は紀井姉弟。しかも里英医師が頻繁に訪れ、弟と義弟に虫除けを厳命。これで師長が目を光らせているのだから手の出しようがない。
篤や柾がかまっていても、美少女だが幼さが目立つ儚げな姿に庇護欲はそそられても嫉妬する看護師は見当たらない。むしろ何かと口実を付けて覗こうとする研修医に手厳しく当たっている。
多少鼻の下は伸びていても医師は医師、未成年の患者に節操のないことはしないだろうに。
だがまあ、この少女なら確かにそんな輩に戸惑いそうだし可哀想か………
「ごめんね。せっかくのお喋り中に邪魔して……」
「いえ、旦那様の…お迎え、ですよね?」
「まあね、うちの兄は里英姉が大好き過ぎてねぇ」
「可愛いですもんね……」
「女の子から見ても思うの?」
「ちっちゃい頃から可愛いお姉さん、って思ってました」
痛み止めが効いてきたのか、里英の話題だからか思ったよりスムーズに会話が進む。
「じゃあ、篤先生の印象は?」
「え、……紀井…先生ですか?」
少女はちょっと戸惑い考え込む。
「優しいお兄さん、かなぁ〜……清水先生も、紀井先生も学生時代からよく遊んでくれたじゃないですか……勉強みてくれたり…私も小学生だったし…よくなついてた気がしますけど……」
「そうだったっけ……?」
とぼけながら嘘つきだな…と思う。
俺と篤では明らかに態度が違う。確かに人見知りタイプで下心を隠せない男達に引き気味なのは仕方ない。当然だし、そのくらいでちょうど良いとも思うが、長年の知り合いの俺に誤魔化そうとは……まだまだお子様だな…
俺とは普通に会話できるのにね。
篤の前では途端に辿々しくなる。意識してるのが丸わかりで楽しく微笑ましく観察しているのだが……
さてさて、どうしたらものやら……
年齢差も見た目も、『犯罪』……だよな……
アイツ、どうするだろう?
しばらくは楽しめそうだ。
愛らしい少女と暫し会話を楽しむ柾だった。
ブックマークありがとうございます。