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「一つ目は清水家との交流を表向き伏せていただきたいのです。理由はお察しいただけてると思いますが、表舞台にはあまり出て来ない家ですので。我が家も姉の嫁ぎ先は伏せたままなのです」



 これには高杉夫妻もしっかり頷いてもらえた。

 清水家と繋がりがあると知れば変な欲を出す輩もいる。欲を出したところでなかなか一筋縄でうまくいくような家系ではないが、それがわからないような馬鹿に巻き込まれたらそちらの方が迷惑だ。

 だからといってそんなことを避ける為に関係を切るようなことは思っていないようだ。清水家は敵に回せば恐ろしいが味方に付けばこんな心強い家もない。色々手広く商売をやっているだけになかなか強かそうだ。


「それからもう一点ですが、これは私の個人的なお願いです」


 多分おそらく用件の見当はついているはず。


「心優さんとお付き合いしたいのですが、先にご両親の了承をいただきたくお願いに参りました」

「心優の病気のことは……」


 良介が先に口を開く。


「私は主治医ですから全て了解の上で、将来も真剣に考えてのお願いです」


 良介と麻子は顔を見合わせしばらく沈黙が続いたが、おずおずと麻子が口を開く。


「あの、でしたら尚更…これから先体調がどうなるのかわかりませんし、そちらのご実家のことを考えると難しいのではないでしょうか?」


「実家は関係有りません。

 と言ってもそうは思えないことは理解できます。

 先のことはその時になってみないと何が起きるかわかりませんし先にこうしますとは言えませんが、その時その時私が善処します。

 私自身まだまだ未熟ですが努力しますので私を信頼していただけないでしょうか?」


「子供は?後継ぎは必要ですよね?」


 これは心優の病気による懸念だということはわかる。誰が相手だろうと将来子供が産めるのかどうか不安に思わないわけはないだろうと思う。


「そうですね。病院の後継者という意味では。

 でも愚かな実子と優秀な他人、高杉さんならどちらに会社を任せますか?」

「それはもちろん優秀な他人だね」


 良介が即座に答えた。


「その通りです。

 病院の後継者なら実子である必要は有りません。

 次期後継者は今現在私の予定ですが、次世代はきちんと責任を果たせる人を選ぶのが私の役目だと考えています。


 それに夫婦共に健康でも原因不明の不妊カップルはいるんです。

 心優さんは今のところ医学的に妊娠できないわけでは有りません。それにまだずっと先のことです。今から心配する必要が有りますか?」


「すみません。おっしゃる通りなんですけど、親としては色々心配で……」


 麻子が項垂れたが、横から良介が穏やかに話しかける。


「麻子、その心配は一生なくなることはないよ。それも親の仕事だ。

 紀井先生」


「プライベートで先生は止めてください。まだまだ若輩者ですから」


「そうだね、失礼した。では、篤君。

 君は思っていた以上にしっかりしているようだ。

 返事は心優に任せることにします」

「ありがとうございます!」


 篤が勢いよく頭を下げた。声に喜びと安堵が混じる。

 だが良介も男親。愛娘に対しての思い入れと危惧はあって釘を刺すことは忘れない。


「ただ、まだ17歳の高校生。私達から見ればまだまだ子供なんです……」

「はい。それは理解しています。私も急いで何かを進めようと思っているわけではありません。

 今日は私の気持ちをお伝えしておきたかっただけです。

 お時間をいただきありがとうございました」


 男としての欲が無いわけではない。たっぷり抱えきれないくらいあるが心優を怖がらせてはいけないし、その辺は慎重にやらなければ…と心の内で思いつつ、ひとまず両親の了承を得たことに安堵し感謝して頭を下げた。

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