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試験は無事なんとか全教科受けれた。
傷に響いて階段を上ることが厳しかったし、廊下等で人に当たっても傷に響いて痛む。まだ入院中に抜けて来ているということも考慮した特別措置とやらで一階にある保健室で試験を受けることができた。疲れたら背もたれのあるソフアが有り難かった。
保健室の前まで車を横付けすることもできたので歩く距離も短く、身体への負担は最小限に抑えることができたと思う。
意外だったのは紀井先生のマメさかもしれない。
休憩時間の度には無理だったが、数回送信したメッセージがすぐに既読になっていたのだ。返信こそなかったものの、気にしてくれてるんだってわかって嬉しかった。
試験が終わって病棟に戻ったら、見計らったように熱が出た。
喉も赤くないし血液検査も異常無いので
「疲れが出たのね。大丈夫、ゆっくり休んで栄養のあるものを食べたら良くなるわ」
里英先生がすぐに駆けつけ診察してくれた。
いつもの症状なのでそんなに心配してなかったが、里英先生に言われたら安心する。
「今日のお勉強は断っておくわね」
と言われ、ハッとする。そう言えば今日はお勉強の日だった。
無事試験が終わったしお礼が言いたかった………
入院中は小中学生は院内学級があり毎日授業が行われるが、高校生は義務教育ではないからかほとんどの病院に院内学級はない。
短期ならともかく長期入院になると勉強で困る患者がいる。とはいえ一時期には数人いるかいないかなので希望者には学生がボランティアで勉強を教えている。
心優には医学部の女子学生がついていた。
「あの、樫山先生にお礼を伝えていただくのは可能ですか?」
「もちろんよ。何て?」
「先生に教えていただいたところがバッチリ出ました。おかげで何とかなりました。ありがとうございます。と…長いですか?」
「全然大丈夫よ。伝えておくわね」
里英が出て行ったので目を瞑る。本当は横になりたいけど呼吸が苦しいので背はもたれたまま起き上がっているしかないのが辛いところだった。
いつになったら寝転がれるんだろう?早くごろごろしてみたい〜
氷枕のひんやり感が心地良い。
などと思いながらうつらうつらしていたら篤がやって来た。
「ごめんね。起こしちゃった?具合どう?」
「いえいえ、うとうとしてただけなので大丈夫です」
「里英先生も言ってたと思うけど、数値的には問題無さそうなのでゆっくり休んで体力つけるだけだね。
テストはどうだった?」
「まあ、なんとか……ベストは尽くしました。結果はわかりませんけど……」
「頑張った分は後からついてくるよ。
あ、メッセージ、返信出来なくてごめんね。ちゃんと見て、大丈夫そうってことは確認してたから」
「仕事中ですし、先生がお忙しいのはわかってますから大丈夫です。気にしてくださってありがとうございます」
「気にするのは当たり前でしょ?」
その後も少しだけお喋りして、紀井先生が出て行った。
紀井先生とのメッセージ画面を開けて眺める。
『ありがとうございました』
いろんな『ありがとう』を込めて送信をクリックした。
今度はすぐ既読にはならなかった。
学生ボランティアの家庭教師は、あると良いなぁ〜という願望から書いてみました。
実際小中学校の院内学級ですらどこの病院でもあるわけではないようです。しかも転校手続きをしないと授業を受けることは出来ないので、かなり面倒です。
私立等で一度籍を抜くと戻れない場合は相談に応じてもらえるようですが、一度抜けると退院後に編入試験を受けたりしないといけなくて……五教科とか三教科プラス編入試験代金は結構な負担だと思います。これを入院の度に繰返すわけですから……
ただ、高校によっては教員が入院中の生徒の元に出向き授業をしてくれるケースもあるようです。非常に稀だと思いますが…




