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きみよりも  作者: 日高
4/5

抵抗するなり頭をあげるなりする暇も与えられず、白石が耳元で囁いた。

「さっき、俺のこと見てました?それに、俺の名前呼んでた」

自信なさげでありながらも、何処か浮かれたその声音は硬直した身体にさらに釘をさす。

言い終わってくすっと笑った後、あの魅惑的な熱さは消え失せた。

椅子の上で一周しそうなくらいの勢いで振り向いて、白石の方を見る。

「さようなら」

たった数分前の言葉を、デジャヴのように繰り返す白石。

目をぱちぱちさせてなにも言えず、また一人になった私は黙って片づけを始めた。


***


帰り道、外はもう暗かった。

イヤホンをさしたまま夜空を見上げる。

なんだってんだよ白石。先輩をからかいやがって。なあ。

だんだんムカついてきて、足元の石を蹴った。

考えすぎて、さっきのは夢だったんじゃないかというくらい昔の事に思えた。

帰り道も、ご飯も、テレビを見ても、彼氏と連絡を取っても、お風呂でも、寝床でも、ずっと白石のことを考えていた。

また二の舞になりそうな自分の気持ちに、必死でブレーキをかけた。


***


週明けの放課後。

月曜日は部会があって、週一で部員全員が美術室に集まる日だ。

当然、隣の机には白石がいた。

チラっと視線をうつすと、いつもと変わらずすらっとした身体を大きく曲げてぼんやりと前を見ていた。しばらく眺めても目が合うことは無い。

顧問の話を聞いた後、各々が作業に取り掛かる。

白石が帰らなかったので、私も残って描くことにした。

月曜日は比較的描く人も多いので、半分ほどの部員が美術室に残り、締め切りに追われて作品を描く。

何事も無かったかのように作業する白石を薄めで見て、首を傾ける。

ふつうだ。ふつう。

意識しているのはわたしだけのようでまた妙にいらついた。

そわそわして、とにかくなにか変化が欲しかった私は白石に話しかけることにした。

白石の後ろにまわって、近づく、いやでも無視されたらどうしよう、一歩下がる。でも、このまま放っておくのは嫌だ…一歩進み、意を決した時だった。

白石が小さく振り向いた。

動けなくなった私は弁解することもできず前傾姿勢で固まる。

なにを言うわけでもなく元の状態に戻った白石の肩が少し震えた。

なに笑ってんだよお前のせいだろタコ。

なにも始まってはいないのに、なぜか勝ち誇った余裕を見せつけられたようで悔しい。完全に舐められている気しかしない。

渋々話しかけるのは諦めて、おとなしくキャンバスの前に重い腰を下ろす。

必死に平常心を保って、筆を一生懸命動かしながら白石を視界のすみにおいやった。


***


朝起きてすぐ、白石のことを頭に浮かべる。

ため息を着いて準備をし、重い足取りで、でも白石に会える気持ちが溢れ出しそうになりながら、学校に向かった。


ーーー


放課後、クラスの用でしばらく美術室に行くことができなかった。

最上階である3年の階は、もうすでにしんとしずまりかえっている。

肩を落としながら美術室に顔を覗かせてみた。

やはりいなかった。

夏休み前で休日が続くので、部活に来る人もゼロで、白石がいるはずもなかった。

今日に限って一緒に帰るひとも特におらず、とぼとぼと美術室を後にした。

階段に足をかけようとした時。

後ろからの衝撃にバランスを崩し、ふらっとよろめいた。

後ろを見る隙もない。

背後には、ただ息を切らす声だけが響いていた。


***

ストーリーマズったね?

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