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きみよりも  作者: 日高
2/5

甘い夢

耐えきれなくなって、靴も履かずに新聞を蹴って立つ。

金尾が座っている長机まで小走りして、突っ伏した。

「だめだ」

「え、どうしたの」

金尾は一言で言えば頼れる部長。

私はあごで白石をしゃくった。

「かっこよすぎてまったく集中できない」

この美術室にいるのは私を含めて5人。私は、白石に聞こえないような無声音でそう言った。

金尾は何時ものように朗らかに笑った。

白石にバレてしまうのはなんとなくいやだったので、紙に書いて伝えようとすると山中もやって来た。

(さっきからしらいしがかっこよすぎて集中できねえ)

書きながらジェスチャーで伝えると、山中には十分伝わったようだった。

そうして白石への想いの丈を書き綴っている間に白石は帰る支度をしていたようで、さようならと言って扉の前に立っていた。

私はなるべく平然を装って白石を見てから、部員に混じってさようならを言った。


***


白石が帰ってからの私は暴れっぱなしで、帰り道も山中に語り続けた。

家に帰っても白石のことばかりを考えてしまうので、小説でも書いてやろうと思い立った。iPhoneのメモを開いて少しだけ考える。


☆☆☆


高校三年生の夏。

蝉の声を聞きながら、美術室に立てこもる毎日。

いま、同じ部活に気になる後輩がいる。

気になるといっても、ミステリアスで生態が謎なのだ。

だから私は、今日も彼の机に突っ伏す。

「ねえねえ白石」

「あ、はい」

いつもと同じ返事を聞いてから、いつもと同じ質問をする。

「誕生日いつだっけ」

「その質問、何回目ですか」

さすがの白石も、先輩の質問に口答えをし始めた。おうおう、私少しムッとしたぞ。

「じゃあさ、血液型」

「それも何回目ですか」

「じゃあ地区」

「それもです」

「じ、じゃあ彼女いんのか!」

口が滑った。

白石は珍しく間抜けな顔で私の顔を見た。めったに目が合わないので少しドキドキした。

「いませんよ」

期待すらしていない予想を下回るほど、普通の返答だった。なんだ、いないのか。

「へえ、いないんだ」

「なんですか」

「べつに」

あげていた顔を再び腕の中に埋めてもごもごと言ってみた。

「私がなってやろうかな、とか」

「え?」

「なんでもねえ〜」

ぬっと顔を上げると案の定聞こえてなかったようで、また間抜けな顔をした白石を見てすこし笑った。

むすっとしてから、なんなんですかと言ってそっぽを向かれた。

かわいいやつだな、と思いながらまた机に突っ伏して、私はすこし寝た。

白石の耳がなぜかすこし赤かったのは、見ないふりをした。


☆☆☆


ここまで書いて、ソファに寝転んだ。

余計に、虚しい。


***

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