晴れ時計Ⅱ
「褒めてるんじゃないですか、ハルキさんきれいだし。安元葉月を新聞部でピックアップしたいくらい、Mystery eyesとコラボとか」
「?なにミステリーアイって」
「男装の麗人っぽい女のイケメン小説作家がうちの大学にいるんですよ、新聞部内でのその人の呼称です。安元葉月も男装とか似合いそうだから個人的に取り上げたい」
「なにそのミステリーアイは人気なの?将来本だしてドラマ化とかしそうならキャストに安元葉月を先約しときたい」
「あぁー世に出すかなミステリーアイ…気が向いたら小説投稿してくれるんですよ、俺達の交渉もやっとできて小説サークルじゃなく新聞部に小説投稿してくれるようになったくらいなので」
「うわなにそれすっごい俺マネージャーしたいわミステリーアイ」
「あ、系統は安元葉月と似てるかも」
彼女の雰囲気とかハルキさん好きそうですねと小説を机にもどす緑。読まないのと聞くと感想を伝える文章力がないんで、と苦笑いしてカフェオレを飲む彼に思わず噴き出してしまった。
「ふははっ、緑さぁ、新聞部でライターじゃないの?」
「そりゃ文は書きますけど俺は主に情報収集だし修さんと真優子にはかないません。小北ちゃんには表現力とかなおさら」
修さんはさすが部長だし、と笑う緑の顔を見上げる。まぁ楽しそうに笑っちゃって。
大学に葉月を迎えに行ったときもそうだ。あまり他人とつるまない緑が修という部長の男にはべったりだった。あれ、男かな。
一緒にいた可愛らしい女の子たちよりまさか男に嫉妬なんてずいぶんと感された日がくるなんてな。
「…まるで人魚が人間に感されたみたいだ」
寝転がったままぽつりと口に出したらえ?と俺の視線の先を見る緑。
仰向けのまま到底届かない机に腕を向けパタパタと指先を動かしたら気づいた緑は腰を起こし本に手をかけた。
「その小説人魚っぽいね」
「あれ、読んでないんじゃないんですか?」
「弟も同じの持ってる。最近その小説を見て海に行きたくなったとか人魚が好きとか言ってたから多分人魚なんかなぁて」
本を取ってきてベッドに腰を落とす緑。のそりと上半身を起こして本を眺める緑の膝にどさりと頭をのっけてやった。