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第一話

これを読む前に旅人と歌姫を読んだ方が良いかもしれません……

読まなくても多分理解できると思います。



雇主、アイツが俺を壊した。

ぶち壊しやがった……

「……聞いているの?」

「……あぁ聞いている……」

「ほんとに聞いてるの? お姉様の話を聞かないと痛い目見るのは

 アナザー、貴方なのよ?」

酒の入ってるグラスを傾けている俺に話しかけるのは夜影女郎蜘蛛やかげじょろうぐも

という異名を持つ巫八手鬼姉妹みやたきしまいだ。

姉は巫八手鬼みやたき維織いおり、妹は巫八手鬼みやたき紫織しおり

という、二人の容貌は男を寄せ付けるような妖艶さがある。

しかし二人は双子なのだ。

二卵性双生児なのだろう、それならば似ていないのも分かる。

維織は冷たさの塊、紫織は温かさの塊とでも言えばいいか……

正反対だ、全てが全て、しかし反対なはずなのに

二人の間には姉妹愛という名のものががっちりと結び付いてある。

「お姉様、主様ぬしさまが呼んでるわ」

「……主殿ぬしどのにでも言っておくとしよう、覚悟はしておいた方がいいぞ?」

姉妹は俺に背中を向けて去っていった。

俺だけが取り残された空間から聞こえるのは古めかしいラジオから流れる弦楽器の

アンサンブル曲。

変わることのない時間を俺は憎んでいる、あの時もしも俺があんな選択さえ

しなければ……

時間は待ってはくれない、それは昔のある出来事で分かっている

あの出来事がなければ、俺は普通に暮らせていた……

「アンタ……何か、大切なものを忘れてきたのかい?」

初老の男がゆっくりとした口調で淡々と俺に問いかける。

俺は苦笑いしながらこう答えた。

「大きいものを落っことしてきちまった……とっても大切なものをね」

「それは……アンタ自身が背負わないといけないもんじゃないのかね?」

そんなのは分かっているんだ、背負わなきゃならない物なんて

幾らでもあること……ナニのために生きてきたか

そんなのは分かってるんだ……あんな事さえしなければ……

俺は金をカウンターに置き店を出る、ジャケットと長剣を抱えて出たはいいがこれから

何をすればいいか、どこをどうしたらよいかなんて分からない

ただただ黙って人を殺す事しか許されない

ゆっくり歩いて周りを見回す、もう夜も更けてきた。

「おい……出でこいよ俺を殺しに来たのか?」

いつの間にか町外れの薄暗い廃墟の連なってる場所にいた

「……早く出てこい……俺は今虫の居所が悪いんだ……」

殺気の含んだ声で俺は誰もいないはずの空間へ声をかける、すると

暗闇の中から出てきたのは複数の青年や少女たちだった、手にはナイフや銃、

ナックルなどを持って、すぐにでも仕掛けられるようにしていた。

「こんな時間まで何をやってるんだ?」

「何をやってるって……見れば分からない?」

「分からんな、何がしたい、早く親の元へ帰れ」

青年は俺が抱えている長剣を指差しへらへらと笑う

「ソレ、ソレを俺らにくれない?」

「やめとけ、おめぇらには手の余るもんだ」

「なぁに、使わないよ、売るだけ」

少年はにっこりと微笑み、

左手を差し出す。

俺はもう一度言った。

「親が心配してんだろ、早く帰れ」

俺の近くに居る青年以外の子供たちはざわめいた、

そして青年は呟く

「俺らには親なんて居ないんだよ……」

「はぁ? どういう事だよ」

「そのまんまの意味だよ、アナザーさん」

「! ! なぜ名前を知っている……」

「さぁ? 何でだろうね」

相変わらず笑顔で答える青年、

巫八手鬼姉妹に雇われたのか、それ以外には考えられないがな……

(なーんだ……あいつ等も少しは気づいてたか……)

俺は少し苦笑いをした。



(紅き、赤き、紅き、紅蓮の炎の衣を纏い、我ここに彼の者たちを一掃せん……)



この言葉が長剣アトロイを覚醒させる言葉、

剣を覚醒させないと剣に飲まれてしまう、簡単に言うと剣に乗っ取られる。



そして、この剣を覚醒させた時の俺の記憶は

消えてなくなってしまう……







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