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4、テープ(2)
●7
「あなたはよく月重湖に来られるんですか?」
「はい。その、私の仕事をするのに、ここはちょうどいいので」
「ああ、ご自宅からも近いようですしね」
「いろいろと都合がいいんです」
「それで、その仕事をしていた時間なんですが。大まかにでも何時くらいだったか覚えてませんか」
「そうですね……、始めたのは九時ごろでした。いつもは三〇分くらいかかりますから、あの日もそうだったのじゃないかと思います」
「九時半ごろだったと」
「ええ。その倉知さんが亡くなったのもそれくらいでしたか」
「そうです。やはり知ってたんですね」
「少し見ていたんです」
「やはり、倉知さんは……」
「はい。完全に、──られた跡が見えました。あたしもなんとか直せないかと思ったんですけど、どうしても上手くいかなかったんです、だから、それで」
「無理だったんですか」
「はい。あたしでは、力が足らなかった……」
「……。」
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