My life is her life.
続いて、第七弾。
タイトルは『My life is her life.』
私の創作としては、初の英字タイトルになります。
尚、日本語訳としては『僕の人生は、彼女の為に在る』となります。
今回は、シリアスというよりも切なさがメインになるかと。
では、学生時代を思い出しながら、御楽しみ下さい。
side:高橋柊二
「お早う、逢花。」
「あ、お早う、シュウ!」
「今日も冷えるね。ちゃんと、マフラーや手袋してきてる?」
「うん、勿論。もう、私だっていつまでも子供じゃないんだよ?」
「あはは、ごめんごめん。」
「もうっ、絶対悪いと思ってないでしょっ。」
突然済みません。どういう状況か判らないですよね。
僕は、高橋柊二。大学二年生です。
僕と一緒に喋ってるのは、高校の時からの同級生で河澄逢花と言います。
それで、今は大学へと向かうバスの中。
そして、今は冬も近付き、最近めっきり冷えて来た11月です。
上でも言いましたが、僕達は高校の時からの知り合いで、
何とか頑張ってその時親しかった友達全員で同じ大学に来る事が出来ました。
その大学に着くまで、二人で他愛も無い話をしていると、いつの間にか着いていました。
そして、逢花は降りるとすぐとある人物を見付け出し、その人へと駆け出していきました。
「カイナ!」
「ん? よお、逢花! お前は今日も朝から元気だなあ。」
「うんっ!」
「…お早う、快南。」
斉藤快南。高校の時からの僕達の親友。
で、今見ても解ると思うけど、逢花は快南にベタ惚れ。
でも、残念ながら快南は逢花の事を親友としか見ていないらしく、
可哀想な事に、彼女の想いが実った事は今の所、唯の一度も無いのが現状だったりします。
そんな今までの事を思い出して、思わず溜息を付きながら、僕も快南に朝の挨拶をすると、
快南はそれを目敏く見付けて突っ込んできました。
「おう、シュウ。お前は今日も朝から元気ないなあ。」
「そうかな? 多分、逢花に僕の元気、全部吸い取られちゃったからだと思うよ?」
「あ、酷い! そんな意地悪言うシュウなんかキライっ。」
「おいおい、朝っぱらから嫌われてんなよな。ほれ、さっさと仲直りしろって。」
「おやおや、誰か俺をお呼びかな?」
軽口を叩いた僕に、ちょっと剥れてしまった逢花を宥める様に言う快南。
ちょっと困ったなあ、って感じで頭をポリポリと掻いた僕達に声を掛ける人がいました。
「あ、薊。お早う。」
「『あ、薊。おはよう。』…じゃないでしょ。ホントにノンビリさんめ。
喧嘩の仲裁屋と言えば、俺以外にいないでしょーが。で、どーしたん?」
陽河薊。彼も快南同様、高校の時からの僕達の同級生。
そして、今彼自身が言っていた様に、薊はよくこうやって僕達の仲を取り持ってくれる。
今、僕達が仲良しの儘、こうやって一緒に居られるのは、間違いなく薊の御蔭です。
「いや、いつもの軽口を叩いてたら、ちょっと逢花がご機嫌斜めになっちゃってね。」
「……それだけじゃないもん。朝バスの中でも、私の事子供扱いしたもん。」
「あ~、そりゃお前が悪いな。ほれ、さっさと謝っちゃいな。」
「激しく同感。ほれほれ、シュウ。」
「…………ごめんね、逢花。」
「…………ハァ。もう、しょうがないなあ。許してあげちゃおうっ。」
「うん、ありがとう。」
そんな風に、のんびり教室に向かいながら話していると、途中で誰かが声を掛けて来ました。
「お早う、みんな。」
「あ、優花! おはよう!」
浅野優花。彼女だけは僕達と違って、大学からの知り合いです。
でも、逢花とはすぐ気が合ったらしく、入学初日から僕達に彼女が紹介し、
その日の内にみんなで仲良くなりました。それ以来、ずっと彼女とも一緒にいます。
そして、逢花と優花ちゃんは、日を重ねるごとにどんどん仲良くなっています。
丸で、前世では双子の姉妹だったかの様に、趣味も好みも殆ど一緒なんです。
でも、たった一つだけ。二人には決定的に違う部分がありました。それは……。
「お、お早う……柊二君。」
「うん、お早う、優花ちゃん。」
どうやら、彼女は僕の事が好きだそうなんです。
既に一度、彼女から告白もされました。でも、ボクは断りました。
だって、僕にはずっと好きで好きで、恋焦がれている女性がいたから。
それでも、彼女はめげずに毎日頑張っている様です。
それを好機と捉え、逢花も快南に毎日意識して貰える様に頑張っています。
そして、薊は苦笑しながらそんな僕達を見守っている。
これが、僕達五人の日常です。
……でも、僕と彼女の日常は、これだけでは無いんです。
その日、講義も終わり、みんなそれぞれ家の事情やバイトで、バラバラに帰りました。
その後は、みんな誰とも会わずに、誰とも遊ばずに一日を過ごしました。
僕もバイトが終わり疲れた体を引き摺って、大学近くのアパートの自分の部屋に帰りました。
疲れた体を敷きっ放しの布団に投げ出し、疲れに身を任せ眠ろうとしていました。
部屋に入る前に腕時計で確認した時間は、11:30。
明日は幸い、一限はありません。起きてから色々としようと思い、瞼を閉じました。
丁度、そんな時でした。彼女から電話が掛かって来たのは。
「……もしもし?」
「…………シュウ? もしかして、もう寝る所だった?」
「ううん、まだだよ。どうしたの?」
「……うん、あのね、これからちょっと付き合って貰える?」
「うん、勿論いいよ。今どこ?」
「……シュウのアパート近くの公園。」
「うん、解った。それじゃ今すぐそこに行くよ。ちょっと待っててね。」
「……うん。」
僕は寝かけていた頭を思いっ切り振り、眠気を無理やり誤魔化してから、
急いで身支度をして、何とか五分以内に彼女の元へと着く事が出来ました。
「あ、シュウ。ごめんね、いつもこんな夜中に…。」
「ううん、気にしないで。それで、今日はどうしたの、逢花?」
そう。先程電話を掛けて来たのは、逢花でした。
彼女は、いつも何か困った事や相談事があると、僕に電話やらメールを寄越すのです。
僕としても、友達が困ってるなら、極力相談に乗ってあげたいですから、
よっぽど疲れてるか、どうしても外せない重大事とかでも無い限りは、
必ず彼女の相談に乗ってあげる事にしています。例え、それが何時であろうとも。
「……うん、あのね、快南の事なんだけど……。」
やっぱり。そうだと思いました。
だって、今まで彼女から受けた相談の内容は、九割方が快南の事だったからです。
「やっぱり、私じゃ魅力ないのかな? 今日も、快南…綺麗な人を彼女にしてたし。」
「そんな事ないよ。逢花は可愛いよ、僕が保証する。
それに、あの娘の様なタイプは快南にとっては只の遊び友達だよ。
いつもみたいに少しの間付き合ったら、またすぐ別れちゃうから大丈夫だよ。」
「ホント? ホントにそう思う? そう、思ってくれてる?」
「うん、ホントにそう思ってるよ。だから、大丈夫。逢花はもっと自分に自信をもって、ね?」
「……うん。」
いつも、僕はこうやって彼女の愚痴を聞いて、彼女を慰めて、
今の僕に出来るアドバイスをしています。
え? 何でそんな事、ずっとしているのかって? アハハ;
薊からもよく言われます。もう好い加減やめろって。
でも、しょうがないじゃないですか。
しょうがないんですよ。
だって――誰だって好きな女の子に頼りにされたら、頑張りたくなるでしょう?
「……ありがとう、シュウ。また、迷惑かけちゃったね。」
「ううん、そんな事全然思ってないよ。逢花は気にしないで、いつでも連絡してきていいよ。」
「……何で、シュウはいつもそんなに優しいの?」
「……親友だからね。逢花も快南も、僕の大事な、大切な親友だから。」
その後、泣き止んだ彼女をこの近くにある住まいに送って、部屋に入ったのを確認してから、
僕も部屋に帰って、先程同様に布団に倒れ込んでそのまま、ぐっすり朝まで寝ていました。
翌朝。
寝過ぎて、昨日計画していた準備や片付けもままならないまま、結局二限にも遅刻してしまい、
逢花に心配させてしまい、また一悶着あったのは、別のお話です。
如何でしたでしょうか?
個人的には、逢花と言う名前は気に入ってたりしますが、皆様は如何ですか?
実はこういう切ない系の恋愛物って、私一番好きだったりします。
まぁ、だからと言って書けるか、と問われれば御覧の通りですがorz
泣ける様な小説を書ける方々には、誠に以て羨望と嫉妬を禁じ得ませんねw
※以下は、小説の内容説明と人物紹介です。
主人公は大学二年生の高橋修二。彼は同級生の河澄逢花が高校の時から好きだった。
だが、彼女は自分の親友の斉藤快南が好きだった。それは彼女を知っている誰もが周知の事だった。
そして、彼はそんな彼女の相談相手にいつもなっていた。いつでもどんな時でも自分の恋心をずっと隠した儘。
これは、そんな彼を取り巻く三角(四角?)関係の物語。
高橋柊二:主人公。僕。逢花に惚れている。優花に惚れられている。
高校の入学式に一目惚れしてからずっと片想いを貫いている。彼女から連絡があれば、四六時中必ず付き合う。
それが例えバイトで疲れていても、誰もが寝静まってる深夜でも御構い無く。
周りからは身体の心配と、好い加減諦めろとの声を良く聞くが、
純情一途な彼は心配してくれた礼を言いながら苦笑しているだけである。
河澄逢花:ヒロイン。私。快南に惚れている。高校の入学式に快南に一目惚れしてからずっと片想いを貫いている。
彼の気を引こうとあの手この手でいじらしく頑張っているが、今の所は一度もその想いが実った試しは無い。
失敗したり、快南にまた恋人が出来ては柊二に電話やメールをし、その都度慰めて貰ってる。
尚、柊二の事は誰にでも非常に優しい、得難い親友だと思ってる。
斉藤快南:俺。逢花に惚れられている。彼にとっては逢花はただの付き合いの長い親友であり、女性としてみた事は唯の一度も無い。
快南自身は非常にモテており、今迄一週間として恋人がいなかった事は無い。
だが、本人の性格・性分もあり、同性からも非常に好まれている好青年。
陽河薊:柊二と快南の友達。俺。最初は快南の御零れに与ろうと下衆な考えで近付いたのだが、生来の御人好しが災いしてか、
柊二の気持ちを知ってからは彼とより仲良くなり、今では彼の愚痴を聞く係となっている。
薊は柊二達三人共好きなので、誰にも不幸になって欲しくないらしく、基本的に皆の橋渡しというか仲立ちやら、
ケンカした後の仲裁役を買って出る事が圧倒的に多い、貧乏役にして皆の女房役。
浅野優花:逢花の学友。私。柊二に惚れている。優花だけ大学で知り合った。
初日から逢花とは不思議と気が合い、直ぐ仲良くなり柊二達に紹介された。
その後、彼等と関わっていく内に柊二にベタ惚れになり、何とか彼と二人きりの時間を作ろうと毎日必死に過ごしている。
尚、柊二は逢花から連絡が来ると誰と一緒に居ても必ず彼女の事を優先するので、大概オジャンになる事が多い。
尤も、優花はそんな所も含めて柊二が好きらしく、大好きな逢花の事は勿論、柊二を恨みに思った事は唯の一度も無い。