僕の眠り姫、私の白馬の王子様
先ず、活動報告にても書きました、次なる(?)恋愛小説第一弾。
タイトルは御覧の通り『僕の眠り姫、私の白馬の王子様』。
片や無自覚。片や片想いと勘違い中の、バカップルの一幕。御楽しみ下さい。
『僕の眠り姫、私の白馬の王子様』
side:隼樹
「……え? みぃがお弁当を忘れて行ったんですか?」
「どうもそうみたいなのよ。隼樹、悪いけどこれ届けてくれない?
あ、序でにお買い物もお願いね♪」
トイレに降りて来た僕に、義母さんが台所から話し掛けて来たから何事だろうと思ったら、
どうやらみぃ……僕の義妹の美耶子が忘れ物をしたらしい。
みぃがお腹を空かせてるとあっては一大事。
早速届けに行こうと、独り言を呟きながら着替えに二階に戻った。
「分かりました。それじゃ、早速着替えて来ますね。
……それにしても、みぃが忘れ物をするなんて珍しいな。…………あ、もしかして。」
そう。僕には、彼女が忘れ物をする理由に一つだけ思い当たる事があった。
というか、ほぼ確実にそれが原因だろうな。……丁度いいや。
朝は忙しそうにしてたから謝る機会も無かったし、帰って来てから謝ろうと思ってたから、
それが早めに出来ると思えば、却って幸運かもしれない。
そこまで考えている内に着替えも済んでいたようで、
すぐに階下に降りて、弁当を持って早速みぃのいる中学校へと車を飛ばした。
義母さんが、「あらあらうふふ♪」と謎の感想を漏らしながら、手を振って見送ってくれた。
…………しかし、毎回疑問に思うんだけど、義母さんのアレは一体何なんだろうね?
side:美耶子
「う~~~…………//////」
「……何? 未だ唸ってるの? もう何時間も経つのに……。」
「う~~……!////// う~~……!//////」
「…………ハァ。それこそ、あんたらなら今更でしょ~に……。」
「ち、違うモン!/// そんなの子供の頃だけで、今は、その……ち、違うモンッ!/////////」
「…………あ~、ハイハイ、ゴチソウサマ。」
う~……みゅ~ちゃん、絶対分かってくれてないよぅ…………。
え? 何に唸ってるのって? …………き、聞かないで下さい/////////
ま、また思い出しちゃって、恥ずかしくなっちゃったじゃないですかぁ!/////////
「う~~う~~…………////////////」
「…………ハァ。全く、この天然ドバカップルは……(ボソッ)。」
何かみゃ~ちゃんが言ってるけど、それどころじゃないよぅ~……。
う~……どうしよう。今日は、はや兄は大学がお休みで家に居るんだよね……。
だ、だから、あんな事になっちゃったんだけど……//////
う~……どうしよう!/// 顔、合わせづらいよぅ~……//////
そんな風に放課後の教室で私が唸ってると、先生が突然教室に来たの。
「ん? 何だ、神坂に霧谷。まだ残ってたのか。」
「あ、先生。いえね? いつもの、みやのアレが発症中でして……。」
「…………そうか。お前もいつも大変だな。」
「いえ、いつもの事ですし、何より友達ですから。これでも。」
何か、みゃ~ちゃんとせんせ~が話してる。でも、私はそれどころじゃなかったんデス。
だって、せんせ~の後ろに…………/////////
「みぃ、迎えに来たよ?」
「は、はや兄?!//////」
そう。私のお義兄ちゃんこと、はや兄がいたのデス!
私が真っ赤になって硬直してるのにも拘らず、はや兄は私に近付いて来て、
頭を撫でた後、その手を頬に持っていきながら、耳元で囁くように言ったのデス!
更に真っ赤になった私をクスクス笑いながら、はや兄は「……可愛い♪」と、
また耳元で囁きながら私を抱き締めて来たのデス!
…………もう、何の抵抗も出来る訳ないじゃないデスかぁ!!///////////////
そんな訳で、私は何故か生温かい二つの視線を浴びながら、
はや兄にお姫様抱っこで連れられて帰ったのデス……。
side:三人称 in 車内
「クスクス……♪ みぃ、まだ顔真っ赤だよ?」
「だ、誰の所為なの!?/// もう、はや兄のばかっ!/// しらないっ!/////////
それに、今日は午前で終わりだって昨日言ったのに、お母さん……(ボソッ)」
「ありゃ。みぃに嫌われちゃった。」
「むぅ~…………! ………………ばか。」
「クスクス…………ごめんね、みぃ。」
「…………ぅん。」
助手席に座らせた、可愛いと目が訴えている義妹を揶揄いながら、運転する隼樹。
その邪魔をしないようにと気を付けながらも、恥ずかしい思いをさせて! と怒る美耶子。
丁度、赤信号になって止まった車内で、改めて美耶子に向き直り頭を下げる隼樹。
美耶子も本気で怒ってた訳では無い為、それであっさり頷いた。
……尤も恥ずかしさはまだ抜け切ってはいなかったが、取り敢えずと言った所か。
そのリアクションで、美耶子の機嫌を確認した隼樹は青信号を迎えて発進した車内で、
改めて今朝の事について美耶子に謝罪した。
「…………今朝も、本当にゴメン。まさか、着替えてる最中だったとは思わなくて。」
「…………う、ぅん/////////」
そう。実は、今朝隼樹はまだ美耶子が寝てると思って、
起こす為に彼女の部屋をノックしたのだが、返事が無かったのでそのまま彼女の部屋に入った。
だが、実は丁度その時、美耶子は上着に引っ掛かっていて、声が潜もって聞こえなかったのだ。
その為、隼樹は下着姿の美耶子をしっかりと直視してしまい、
美耶子は声にならない声を上げ、その場にへたり込んでしまった。
慌てて、ドアを閉じた隼樹であったが、今日は幸か不幸か美耶子が日直だった為、
いつもよりも早く学校に出掛けてしまい、謝る機会が無かったのだ。
「……本当にゴメン。今日はみぃが日直だって事、すっかり忘れてて……。」
「う、うぅん……/// はや兄は気にしないで……その、ちゃんと謝ってくれたし……。」
「そっか……ありがとう、みぃ。もう口も利いてくれないかも、とか覚悟してたんだけど……。」
「だ、大丈夫だよ! そんな事は絶対にないから!
そ、その、はや兄になら見られても平気っていうか、むしろもっと見て欲し……あっ……。」
「…………え?」
「…………///////////////」
「え……と…………みぃ?」
「にゃ、にゃんでも…………ふにゅぅ~……/////////」
「…………あ、オーバーヒート。」
思わず本心を吐露してしまった美耶子は恥ずかしさの余り猫化した後、目を回してしまい、
帰った後も真っ赤な顔を更に真っ赤にさせたまま、
隼樹にまたもやお姫様抱っこで部屋に運ばれ、ベッドに寝かされている時も、
その半時間後に目覚めた後も、夕食後もずっと、隼樹に「可愛い♪♪♪」と耳元で連呼され、
抱き締められながら頭を撫でられる続けるのであった。
因みに。隼樹が届けたお弁当は、美耶子が起きた後、
二人であ~んをし合いながら、ちゃんと完食したそうな。バカップル滅べ。
主な内容は、バカップル義理兄妹の日常が毎日唯々繰り広げられる雑記に近い物。
以下は、各キャラのプロフィールです。
神坂隼樹:はや兄。美耶子とは義理の兄妹。美耶子にベタ惚れ。
但し、本人はそれが恋だとは微塵も気が付いていない。
常に首席に居座る大学生だが、その人柄故か友人は多い。
彼が中学時代からの友人達は二人のバカップル振りを延々と見せ付けられた為、
何とか耐性が付いているものの、大学からの友人達はその甘さに常に悶絶中。
中学時代、両親が事故によって他界したが、彼には親戚が一人もいなかった為、
自身の両親達の親友であった今の両親に引き取られ、養子になる。
神坂美耶子:みぃ。隼樹とは義理の兄妹。幼少時に隼樹に一目惚れ。
それ以来、隼樹は初恋にして白馬の王子様の人の儘。
現在進行形で絶賛一途な片想い(と言う名の両想い)中。
因みに、隼樹とは5歳差の現在中学二年生。
彼女の王子様の話は学校中でも超有名な話ではあるが、
無謀な勇者達による玉砕イベントは後が絶えず、既に小学生時代からの迷物と化している。
霧谷深優:美耶子の友人。みゅ~ちゃん。
いつもバカップルに振り回され、溜息を付くのが癖になっている。
実は、せんせ~とは恋人同士だったりする、何気に危険な橋を渡っている少女でもある。
藤村彰人:せんせ~。美耶子が通ってる中学校の先生。深優の恋人。隼樹の友人。
当然、周りの人全てに内緒な、危険極まりない関係だったりする。
実は、隼樹にだけは気付かれており、何度か相談に乗って貰ったりした事もある。
……何故それだけの洞察力がありながら、自分の恋心に気付かないのかと小一時間(ry。