第9話 Where is the first?(たい焼きの話)
!超危険任務発生中!
【 カロ VS 緑王 】
ここは大森林フォレステスト。樹木型マモノ『緑王』と火の能を使うカロとの戦いが起こっている。
木の幹を増殖させ延長させ絡ませ武器とする樹木、緑王に対し、それら全てを高熱の火炎放射によって焼き尽くすカロの構図は、相性もあり一瞬で決着がついたように思えた。
が、緑王とはただ一本の樹木ではなく、森の一部が丸々マモノであるという数的不利。さらに緑王の奥の手である樹木同士の融合による巨大人型化〈巨木人・緑王〉による身体的不利。そこにトドメを刺すようにガス欠を起こしたカロの圧倒的不利。
戦いの構図は当初とは打って変わり、緑王の木の武器をカロが耐え続け、『燠』の内側で燃え続ける性質を利用し着火と延焼を狙う様相へと変化した。
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サワサワサワサワサワサワサワサワ
木の葉の音が騒がしいのは、風が強く吹いているのが原因ではない。
ビュン——!!!!
鞭を振るような音につられて騒ぐ木の葉の原因は、
サワサワサワサワサワサワサワサワ
木の巨人が暴れているから。
(サイズは……伊達じゃない……!あれは棍棒じゃなくて壁だ!木の壁が猛スピードでぶつかって来た!!)
「でも見てみろよ、してやったりだぜ。ちょっと焦げてるぞ……俺を殴ったところがさ!」
「…………………………」
木の巨人はおもむろに焦げた箇所をつまみ、
ベキベキベキ——!!!
そこを剥ぎ取ってしまった。
「な——!!?」
そんなことは関係なかったかの如く、木の幹は再生、元通りに修復されてしまう。
「ズルだろっっ!!」
ゴゴゴゴゴゴゴ…………………
「……それもな」
ビュン——!!!!
「ア…………ッ!!……ウッ……!!」
(割りに合わねえ!!俺が攻撃に耐えても緑王はちょっと焦げるだけ……!!あっちはすぐ再生で、こっちは気絶寸前!!)
「なんとか……なんとか………………——!!」
サワサワサワサワサワサワサワサワ
「ところでなんだが……いい帽子だな、それ」
巨木人の見た目は大きな “木” そのもの。その躰の大きさに比例して数多の枝が、木の葉が付いている。樹木のこの、枝や葉が付いている上部のことを、 “樹冠” と呼ぶ。
「これ以上木の壁にぶつかられるのはもううんざりなんでな。ちょっとだけ頭を使わせてもらう…………と、俺の後ろの木、この木は俺が最初に灼き尽くした木な訳だが………………見てくれよ。上の方なんか炭になっちゃってるんだ。
なあ……なんでこの木はもう動かないんだ?
さっきから幹を使った攻撃ばかりだよな……なのになんでそんな大きくて邪魔な帽子被ってんだ?間違ってたらそう言ってほしいんだが……
そこ、弱点だろ
サ———–––………
今のは木の葉の音か?それとも血の気が引く音か?」
事実、カロの推測は正しかった。緑王の弱点はその巨きな樹冠であった。
「じゃ、樹冠に触ったら俺の勝ちってことで、オーケー?」
返答はない。代わりにこれまでで最も大きい木槌が振り上げられた。
瞬間、カロは駆け出していた。それとほぼ同時に振り下ろされた槌をすんでのところで避ける。
この刹那互いに気付いていた。振り下ろされた槌から樹冠にかけて真っ直ぐ続く、樹道に。
それと同時にカロは何かを投げ捨てる。だが、一瞬の判断が勝敗に影響しかねないこの状況下、野生の勘—植物にもあるとは驚きだが—とでも言うべきだろうか、緑王は即刻この投げ捨てられた何かを意識の外へと切り捨てた。
既に腕を駆け登っていたカロが忘れてはいけなかったのは、木の巨人が『緑王』なのではなく、そう呼ばれる無数の木が集まって巨木人なのであるということ。
「ま、そう来るよな」
〈木軍〉!!!!
巨人の腕の上に現れる木の兵隊。弱点への道は完全に塞がれる。完全に有利を取った緑王が忘れてはいけなかったのは、目の前の男は “触れるだけで燃える男” であるということ。
ボッ————!!!!
頭を鷲掴みにされた木の兵士は次々に燃え上がる。緑王が自分の失敗に気付くや否や、右手に大きな棍、そのまま自分の左腕の表面を削りながら薙ぎ払う。
(これは…………避けられないな)
…………………………………………………
「ウ…………ッ…………」
勝った。火の男はもはや虫の息。次のどの攻撃も耐えられず、次のどの攻撃も自分に致命的なダメージは与えられない。
緑王は再度確信する。勝った。
それと同時、なぜか再度左の腕が発火する。
——!?
「へへ……ちゃんと……踏みしめたからなぁ…………」
「先ほど投げ捨てたのは靴か!!素足の熱で燻らせて再度燃えるように……!!」
緑王に言葉があったならこんなことを叫ぶぐらいには焦っていた。運が味方したか、再燃した炎はみるみるうちに燃え広がる。
ついに、樹冠に届く。
「灼けちまえ…………!」
———グシャ———
緑王の覚悟と呼ぶべきだろう。まさか自分の樹冠を、半分抉って生き永らえるとは。
半分だけ残った木の葉がまた騒めく。
森ハ……負ケン……
「はは…ハハハハ!!いいぜ……第二ラウンドと行こうか!!!!」
それは覚悟への応答。必敗でも精一杯の強がり。
「あ」
そんなアツい展開を打ち砕くから、不正なのだろう。
「悪い、もう能が使えるわ」
……??
〈焼燬野原〉
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焼き尽くされた一面に、焦げついた木の巨人有り。
葉は一片たりとも残っていない。
「強かったから、敬意を持って一番範囲が広くて火力が高い技を使った……いや、使わされた……かな」
不思議と巨人は、少し笑っているように見えた。
カロ VS 緑王 ——勝者、カロ
……強キ者ヨ、マタ戦ろう……
(……気のせいか?……いや……)
「二度と、ごめんだね」
少し笑ってそう言ったのは気のせいで、
満身創痍は木のせいだった。
長ぇ。要は茶番でしたとかいう三流のオチ。卑屈になるなよ!!!!




