第10話 Cruel(氷のような氷)
!超危険任務発生中!
『レベルアップを解決せよ』
大森林 “フォレステスト” ……
ここは大森林の中でも密林として分類される区域。
【 ザクス VS 迫虎 】
グルルルルルル………………
————ヒヤ
「うーーーん。やっぱり避けるか……。ま、もう一回」
〈冰凝〉————ヒヤ
カランコロンと、凍らせる対象を失った氷の粒が落ち散らばる。
(…………俺の氷結技、〈冰凝〉はスピードとしては結構早いんだが、微かな冷気を察知して避けてるのか?)
「なら…」
〈冰凝・環漣〉
(…………俺の周りを円形に広がる漣のように氷結させる技〈環漣〉にも引っ掛からない……)
「辺り一帯を冷気で包めば少しは動揺するかと思ったが、虎の割には頭が切れるのか?」
(あるいは……一瞬の逡巡よりも速く……動けるのか……?)
-----以下、迫虎の心の声を翻訳可能-----
アノ人間………… “コオリ” ガ、厄介…………。
捕マッテハイケナイ…………ダガ、関係ナイ…………。
オレサマノ領域二入ッタ獲物ハ………………
フッ——————ビュンッ…………
「こいつ…………ッ!!!!」
(音より疾く…………
喰 ラ ウ
ガキン!!!!……………………???
(ドテッ腹に……爪が……!!)
「刺さるとこだったじゃねえかあ!!
——!!……ウ……ッ…………ウゥ…………!!」
(ま、まずい……!! “腹” を “氷” で守ったから……)
「腹が……痛え…………っ!!」
ビュンッ!!!!
「またか……!!」
(密林の王相手に!しかもあの疾さ相手に!この腹で!!不利だ……不利すぎる!!)
「最低限戦場をこっちに、あわよくば当たれっ……!!」
〈冰凝・大柱〉!!
あちらこちらに乱立する巨大な氷柱は、今までの対象のみを狙った氷結ではなくできるだけ多くを巻き込めるように凍結する。
キュッ!!
まあ、迫虎に意味は無いが。
「ウゥ…………ッ」
(駄目だ……もう動けない……)
ナニモシテイナイノニ、何故カ弱ッテイル……?
それは、狩る側としての本能。
弱った獲物ほど、全力で。
絶好ノ、狩リ時!!!!
至る。迫虎最高速度
その名に恥じず、死へと迫る!!
「お前がだ!」
〈冰凝・一角〉!!
鋭イ……コノママ進メバ……貫カレル!!?
ザクスの能『絶対零点下』は、あくまで氷結の能である。基本的に『氷を操る』といったことはできない。
本来であれば、 “冷たい” はそれだけで死を覚悟する最強の武器だが、それを避けられる迫虎を前に取れる戦術は限られる。
『創り上げた最硬の氷で討つ』
高速で突っ込んでくる迫虎に対し、槍が如き氷の反撃!!
……貫カレタ……………………貫カレテイタ……本当ナラ。
微カニ……躰ガ震エテイル……
恐怖、シテイタノカ……オレサマハ……コノ男ヲ……!!
モウ動カナイ……力尽キタカ……
獣は、何故か全力で走れなかった理由を、目の前の敵への畏怖だと悟った。
今、最高の敬意を持ってして、暗殺者は獲物を狩る。
「まだだ……!!」
——!!??!?
迫虎が驚いたのは、死にかけの人間一匹が未だ声を絞り出せたことなどは関係なく、あり得ないことなのだが、突如として夜が訪れたからである。
ナ!?ナニゴト……夜……!?チ、チガウ!!アレハ……氷塊!!
話は変わるが、先の戦いでカロが放った〈焼燬野原〉は、一応本人もある程度威力は抑え、範囲にして半径約366mを焼き尽くした。
最も分かりにくく分かりやすい例えを用いると、東京ドーム約9個分である。
今、それと同じだけの広さの『氷山』が、上空を覆っている。つまり、チーターズのうち二人のみで、大森林フォレステストの東京ドーム約18個分を壊滅させることとなる。
「天に蓋をするほどの巨大な氷山だ……!!圧し潰されろぉっ!!」
〈冰凝・山全貌〉!!!!
この時、迫虎の選択肢としては(避けるのは当たり前として)二つの選択肢があった。
①刺す
トドメめを<
②刺さない
選ぶまでもなく選択肢としては “刺してる暇などない” だった。
「これでダメならもう無理だ……」
ハァッ……!ハァッ……!ハァッ……!ハァッ……!
アレハマズイ!!
逃ゲナケレバ!!
マダ空ガ暗イ!!
モット遠クニ!!
遠クニ!!遠クニ!!遠クニ!!遠クニ!!
脚力、そこから繰り出される速度には絶対の自信があった。狙った相手は、いや狙われた相手すら全て置き去りにしてきた。
ある日急に絶望は、山の形をして降ってきた。
ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーシン!!!!!
山が落ちた。
大地が揺れて空気が震えて自分の立ってる位置が曖昧になる程の衝撃を伴って。
「う……っく……っは……ぁあ…………!お腹痛え……」
散らばった氷の中心に独り蹲る者あり。もしこの場に居るのが彼一人なら、勝負は決したということになる。
————パキ
「は……は、はは。ははははは…………」
パキ,パキ,パキ,パキ
その音は氷を踏みしめる音だった。
「よう。また会ったな。会えると思ってなかったよ」
出シ尽クシタ……トイッタ所カ……。
何度モ、何度モ、何度モ何度モ何度モ何度モ何度モ
…………ヨクゾ、抗ッテクレタ。
文字通りの瞬殺しか知らぬ迫虎において、今回は正しく初めて経験する、戦闘であった。
楽シカッタゾ。強キ者ヨ。
「………………ごめんな」
バッ——————!?
ナンダ今ノハ……!?「痛い」……?コノオレサマガ!?
ハハハ!!マダ楽シマセルカ、人間!!
「俺だってこんな勝ち方したくなかったさ」
バッ——!!!!
痛イ……マタ攻撃…………イヤ、アイツは相モ変ワラズ腹ヲ抱エテ丸マッテイル……。
ナラ一体何ガ……??
「〈環漣〉、〈大柱〉、〈一角〉、〈山全貌〉…………いっぱい技を繰り出したよな……。
でもな、お前なら……お前の疾さならもしかしたら、全部避けるんじゃないかと薄々気付いてた。
だから…………保険を掛けた」
-----回想-----
【“冷たい” はそれだけで死を覚悟する】
【微カニ……躰ガ震エテイル……】
【貫カレテイタ……本当ナラ……】
-----回想終わり-----
「お前のその厚い毛皮……やっとだ……」
——貫カレテイタノカ!!
「あんまりにもさ……冷酷だろ?
『全身壊死』なんてさ………………」
ザクスの能『絶対零点下』の恐ろしい点は、溢れ出る『冷気』である。
普段のザクスであれば、天才的な精密性により冷気ごと氷結する。それは自分のお腹を守るためという理由だが。だが今回はそれをしなかった。しないまま様々な大技を繰り出した。漏れ出る冷気は空気を冷やし続け、既に辺り一帯の温度は氷点下を大きく下回っている。
故に起こる『凍傷』。速さも早さも疾さも関係ない。自分が居るその場所、空間の全てが自分に刺さるような傷みを与える。
〈棘寒〉
ザクス VS 迫虎 ——勝者、ザクス
負ケタ…………ノカ…………
「寒さの棘……悪いね。自分でも、冷たい技だと思うよ」
自分がヨルシカだったら今回のタイトルに「…?」と発音していた。ザクスは強すぎて苦戦させるのが難しい。あと、「絶対」なのに「マイナス」とはこれいかにとかは言わないでください。




