第1話 We are Cheatahs!!(残念な人たち)
【チーター】
⋯⋯英語の “cheat”(いかさま,ごまかし)から派生した言葉であり、主にゲーム用語として、不正な手段によって有利や優位を得る行為を「チート」と言い、それを行った人を指す。また、転用として、不正を行ったとしか思えないほど強い人間のことも、指す。
突然だが!!
“チーター” という動物を知っているだろうか。
地上において最速、その最高速度は時速約110km!正しく右に出る物のいない韋駄天だ。
…………が、そのスピードが維持されるのは僅か200m程度……!ピーキーの極みのような、残念な性能をしている動物でもある……。
これは、そんなチーターと、関係があるようでないようでまああると言ってもバチは当たらないかな?まあでもやっぱりないか。そんなお話である…………
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「このパーティーから出ていってもらう……!!」
————————……!!
「……誰にだ……?」
「フッ言わずとも決まっているだろう。もちろん……
役立たずのお荷物にだ……!!」
————————……!!
「……誰にだ……?」
「いや、ちょっと分かんない……」
「心当たりのあるやつから手ぇあげろです……」
「そんな悲しいことできないですよ……」
「お前ら全員だよ!!も〜〜うんざりだ!お前らみたいのの面倒はいつまでも見きれん!!今日でこのチームは解散する!!」
「待てよです」
「なんだよ今さら。止めたって遅いぜ!?いくらお前のその美女 × 女児 =美女児の見た目を持ってしても、オレの決意は鋼より固いぜ!」
「お荷物具合ならどっこいどっこい……いやむしろ、戦えない分お前が一番お荷物だろです」
「お姉ちゃん……!! あんまり本当のこと言っちゃ……!!
あ………………!」
「言いづらいことを言ってくれてどうもありがとう!!じゃあ全会一致だね!!今までどうもありがとうございました!!!」
「月常さ〜ん」
——ビクゥッ!!
「ア……アハハハ、カーラさんじゃありませんか〜〜。我らがギルドの華にして母にして太陽!カーラさんじゃぁありませんか〜〜〜。いやぁ今日も見目麗しい!ご機嫌いかがです?」
「ご機嫌ねえ。どこかの誰かさんのチームがもう少し仕事ができると、こっちも気分良く働けるんですけどねえ」
「ア……アハ……アハハハ、いやこれは手厳しい!痛いところを突かれましたな〜…………」
「ところで、何を楽しくお話しされていたの?」
「え……いや!今日も頼りがいのある仲間たちと、獅子奮迅の勢いで仕事に取り組もう!という話を……」
「あらそう? “解散” だなんだという言葉が聞こえた気がしたのだけれど、気のせいだったみたいねぇ」
「そりゃモチロンですヨォーー…………」
「まさか解散なんてできるわけないものねぇ。ギルドに借金もた〜くさんあるのに」
「しゃ……借金だなんて聞こえが悪いなあカーラさん!そりゃ、多少ギルドに迷惑はかけてるかもしれないけど、恥じるようなことも疚しいことも何も無いですよ!」
「そうよね!『多少の』!迷惑をかけてるだけなのよね!
この前のどこかのチームの熱血さんの『爆破被害』も、どこかのチームの冷静さんの『氷山の処理』も、どこかのチームの妖精さんたちの『吹き飛ばしちゃった山の補填』も、多少の迷惑のうちよね」
「……………………」ダラダラダラダラ…
「ギルドとしても、仲介とはいえお願いしてる立場だから、失敗や損害を “善意” で補うことを苦には思わないわ。けれど、それには受注した側の “誠意” が必要なんじゃ無いのかと……そうは思わない……?」
(圧……圧が…………あれ?震えてんのこれ、地面?それともオレ?……早く逃げよ)
「まっっっこと其の通りで御座います!!!!
不肖月常シリト!つきましては誠心誠意働いてまいりたいと思いまーーー…ーー……ー………すぅ…………」スタタタターーッ
「はぁ、相変わらず逃げ足だけは速いわね……」
「カーラさん!今話してたのあれだろ?例の厄介者達!任務で毎回懲りずに問題を起こし続けて、遂に損害率100%ってんで有名だぜ!」
「なんてったっけな……ああそうだ。 “能” はどれもこれも優秀なのに、肝心の使い手がヘボばっかだから、ついたあだ名が『イカサマ師団』!シリトは貧乏くじ引かされたよなぁ!」
あっはっはっはっ!!
「……確かにねぇ」…………チラッ
「おらお前ら!とっとと仕事行くぞォ!」
「なんだ急に」
「どこ行くんだよ」
「緊急のが入ったんだよ」
「どーせカーラさんにビビっただけだろです」
「ばーか、仕事の方もだよ」
(確かに彼らは、申し分ない “能” を持ちながら、それを活かしきれない『残念な人たち』かもしれない)
「いつ着くんだー」
「ひっそりとした場所まで来ちゃったぞ」
「村の外れに住んでる人が依頼人らしいんだけど…………あ!あれじゃないか!?すみませーん……!」
「ああ、もう来てくださったんですね!実は “マモノ” が家の近くに出てしまいまして……」
(任務において、建物や人身、個人あるいは公共の財産に被害が及んだ場合、ギルドが代わりに対応・補償を行うのがルールになっている)
「それは一体どんなマモノなんですか?」
「いやぁ……なんと表現したらいいのか……。とにかく巨大で、恐ろしい凶暴な獣……でしょうか」
「獣……どこで見かけましたかね?」
「ああ!それならちょうど、皆さんの後ろにいますよ」
……グルルルルル……ブフーー…………!!!
(任務で得られる利益に対し、どれだけ補償等の損害を出したかの比率を、文字通り損害率と呼ぶわけだけど……彼らは今までの平均を取ると、100%の損害率となっている)
「ドデカい…………牛?」
「猪じゃないか?」
「馬寄りでもある」
「犬!」
「猫!」
「ホントに同じの見えてる?」
(だけどあの人たちは………………)
「てか……え……?どうすんのこれ」
「俺がいこうか」
「任せてもらってもいいぜ」
「やったるよです!」
「お、お姉ちゃんがやるなら私も!」
「おいおいちょっと待て!そのまま全員で行ったら……!」
(だけどあの人たちは、全国のギルドでも類を見ない唯一無二の——
ドッッッッッカーーーーーーーン!!!!!
——任務達成率100%を誇るチーム——
ガララッ——
「——!いらっしゃ……あら、お帰りなさい。今日は何をやらかしたの?」
「オレは関係ないんです……!こいつらのせいで大爆発に巻き込まれ…………」ガクッ……
「今どき爆発オチはないよなー」
「古いよなー」
「おぉぉ前らのせいだろうがぁぁ!!やっぱりお前らとは解散だぁぁぁ!!!」
ワーギャーワーギャー
(普段はこんなにおちゃらけてるのに、未だ失敗知らずの強豪だなんて……)
「ほんと……とんだずるい人たちね」
月常君か〜……。普通を意味する月並みをね?もじってるわけだ〜。月……常……なみ!?
と思ったそこのあなたへ向けて、常歩という言葉があるらしいです。知らんけど。




