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気になるアイツ
家にいても、葉はうるさかった。
食卓で、宿題もそこそこに、声を弾ませて言う。
「なぁ花、クラスにすげぇやつがいるんだよ。琥珀って言うんだけどさ、まさか同じクラスに生徒会長がいるなんてびっくりだろ? テストも首席から落ちたことないんだって。マジですげぇよな」
僕はスプーンを置いて、少しだけ笑った。
「ボク、知ってるよ。入学の時から先生たちの間で“神童がいる”って噂になってたから」
「やっぱり花も知ってたんだな」
葉はうなずきながら、少し真面目な顔になった。
「琥珀ってさ、運動もできるらしい。でも……なんか話しかけづらい雰囲気あるんだよなぁ」
そんなことを口にする葉は珍しかった。
人を気にかけるなんて、もっと珍しかった。
――だからこそ、僕の心はざわざわした。
葉の知らないところで、新しい友達をつくるなんて。
その想像だけで胸の奥が熱くなる。
「……葉は琥珀君と友達になりたいの?」
問いかける声が、少し震えた。
葉は顎に手を当てて、曖昧に笑う。
「友達……かぁ。そうかなぁ。なんか気になる存在なんだよな。話しかけてみようかな」
――ダメだ。
僕の胸の中で、声にならない言葉が渦を巻いた。
葉の世界に、ボクが映らなくなるなんて、許せない。
兄さんは、ボクのものだ。




