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それは強く、願う思い
小学生に上がる前のある日、兄の葉と一緒に街を歩いていた。
ショーウィンドウを覗き込みながら笑い合っていた僕らに、不意に声がかかった。
「君、モデルに興味ない?」
――それが、僕が芸能界に足を踏み入れるきっかけだった。
そのときの僕は、正直言って大して気に留めていなかった。
けれど隣にいた兄の葉が、目を輝かせて僕を見てくれた。
「花、すげぇよ! 本当にスカウトされるなんて!」
自分のことのように喜んでくれる兄の姿が、何より嬉しかった。
だから僕は、目の前の大人――今のマネージャーに、こう言ったんだ。
「兄さんも一緒にどうですか?」
だけど、その願いは簡単に笑って流されてしまった。
「モデルに必要なのは君だよ」と。
――その瞬間、僕は悟った。
この人は、兄の価値に気づけない。兄を見抜けない。
今の仕事を取ってきてくれることには感謝している。
けれど、兄の良さが分からないマネージャーは、きっと大成しないだろう。
だったら、僕がやるしかない。
僕が自分で人脈を築き、僕の力で兄を同じ舞台に立たせてみせる。
たとえ今の事務所じゃなくても構わない。
今はただ、この事務所を“踏み台”として利用すればいい。
力をつければいい。
兄と一緒に立てる――その日まで。




