九十八話 互角の戦い
「日下部……。修行した俺の技ならもしかしたら知覚できるかもしれないぜ。《覚醒の霆》!」
頂川の身体中から荒々しく霆が迸る。
「神経レベルで雷を使い感覚を研ぎ澄ました……。見えるぜ、少女の使うデカいゴーレムがよ……」
頂川は静かに呟く。
「金髪のお兄ちゃん、インビジさんが見えるの? すごいね」
美鈴は驚いてはいるが冷静な声だ。
「綾島さんとの修行の成果だな。日下部、嬢ちゃんは俺が相手する。侍を頼む」
頂川がギラついた目で光葵を一瞬見る。
「オーケー。任せろ。《闇魔法――闇霧砲》……!」
光葵は闇霧を圧縮し巨大な砲弾にして志之崎に放つ。
志之崎は《反射魔法》を足と地面に使い、素早く躱したようだ。
「美鈴の魔法が見えるなら、二対二のまま戦う……」
志之崎は鋭い視線を送ってくる。
「それでも構わない……。どちらにせよ、お前は俺が相手する。《合成魔法》《氷刃、炎刃》……!」
光葵は氷刃、炎刃を織り交ぜながら攻撃を続ける。
「《風魔刀――鎌鼬》!」
志之崎は大鎌の如き風の斬撃にて相殺する。
光葵と志之崎、互いに魔法の応酬が続く……。
◇◇◇
一方、頂川と美鈴も互角の戦いをしていた。
頂川はインビジブルゴーレムが六メートル程あり、腕が六本、足は二本あることまではっきり知覚できていた。
「嬢ちゃん。やっぱすげぇな。速いしパワーが強ぇぜ……」
頂川は軽く口角を上げる。
「そう? お兄ちゃん達のおかげだよ……?」
美鈴は頂川の話を、意に介さず攻撃を続ける。
「《雷魔法――疾風迅雷、雷牙》……!」
頂川は速度上昇を行い、ゴーレムの攻撃を躱し、かつ雷牙でダメージを与える。
「……色々あったのは分かってる。だが、俺も負けられねぇ! 《合成魔法》《雷魔法×貫通魔法――拳打雷貫》……!」
雷貫を纏った拳がゴーレムの腕に激突し、一本の腕を吹き飛ばす。
「インビジさん……! すぐ治してあげるからね……」
美鈴は集中してマナを練っているようだ。吹き飛んだゴーレムの腕が破片も含め、元の腕に戻っていく……。
「おいおい……。治すこともできるのかよ……」
頂川の口から驚嘆が漏れる。
「金髪のお兄ちゃん。強いね。美鈴も本気でいくよ……」
強いマナの動きに合わせて、美鈴の薄茶色のロングの髪が風に吹かれるように激しく揺れる。
そして、ゴーレムは今までと比べ物にならないほどに強化される。
「ハッハッハ! 離れてても分かるぜ。今までのゴーレムとは別物みてぇだな。身体の芯からゾクゾクするぜ……!」
頂川は正直に感じたことを言葉にする。
「インビジさん、殺して……!」
美鈴が叫ぶ。
直後、先程の倍以上の速さでゴーレムが頂川に迫り、六本の腕でガトリングのように連続で拳を振るう。
「速ぇな……」
頂川は間一髪で拳を躱し続ける。
しかし、ゴーレムが地面ごと蹴り上げた〝大地〟が頂川を覆う。
「生き埋めにでもする気か……!」
頂川は《疾風迅雷》を強化し、何とか避ける。
刹那、思わぬ攻撃が襲い掛かる。
地面からゴーレムの腕が出てきたのだ。
「腕の長さを変えることもできるのか……?」
躱しきれず頂川は足を掴まれそのまま何度も地面に叩きつけられる……。
「ゴハッ……!」
頂川の身体中から血が撒き散らされる。
「このままくたばれるか……! 《合成魔法》《雷魔法×貫通魔法――雷神鎚》……!」
貫通魔法の威力を込め、雷で作った一メートル程のハンマーでゴーレムの腕を打ち砕く。
雷鳴のような轟音が辺りに響き渡る……。
「やってくれんじゃねえか……!」
頂川はギラついた目で美鈴とゴーレムを見据える。
「あれだけ叩きつけたのに動けるんだね」
美鈴が話している間にもゴーレムの腕は修復されていく。
「ハッハッハ! 俺は頑丈だからな……。それに、ずっと修復することはできないだろ?」
とはいえ、あまり長く戦うのは厳しいな。覚醒の霆もあまり長い時間は維持できない……。
「美鈴のマナがなくならない限りね……」
美鈴の狂気に駆られた瞳は妖しく光る。
最終回に向かい進んでいます。
予定では、「8/29~8/31」で複数回更新して完結します。
頻度が多いですが、みなさんのペースで読んでくださればと思います。
「最終話」は特に「伝えたいテーマが凝縮」されていますので、ぜひ、読んでください~!




