九十七話 修行の成果と因縁の対決
その日以降、一週間は修行の時間が主となった。
ここ一週間、カイザーと比賀は二人で集中して修行したい技があるとのことで、別行動をしていた。
◇◇◇
――七日目。
今日も光葵、頂川、綾島、朱音でアジトから少し離れた山で修行していた。
「全員かなり強くなったんじゃないか? 動きのキレも上がってるし、魔法の出力も数週間前とは大違いだ」
光葵はみんなに声をかける。
「おう! 綾島さんと修行してから『知覚力、感覚』が上がって今までとは見える世界が変わったみてぇだぜ。魔法の扱いも上手くなった気がするしな」
頂川が快活な笑顔を見せる。
「だね。頂川君と修行できたのは本当によかった。私も見える世界が変わったし、魔法の出力調整、魔法の技の種類も一気に増えたよ」
綾島は穏やかに微笑み返す。
「いいね! みんな強くなってる! 私も前よりマナ出力の調整が上手くなったし、魔法の技の種類も増えた。戦力になれるように頑張るね! そういえば、光葵も新しい魔法の練習してるんだよね! どんな感じなの?」
朱音が明るい表情で尋ねる。
「《想像的生成》の方は実戦で使えるくらいになったんだ! 『攻守』と強い魔法が使えるようになったからよかったよ。あとは《理の反転》だな……。この魔法は扱いがかなり難しくてな……。実践で使えるほどではないんだ……」
光葵は後頭部に手を回す。
「《理の反転》は前に光葵に教えてもらったけど、理解するのも難しかったよ……。少しずつ感覚を掴んでいければいいと思う!」
朱音が笑顔で言葉を返す。
「そうだな……。早く強くなりたいけど、焦りは禁物だよな。今日のところは、修行はこれくらいにして、休んだらアジトに戻ろうか」
光葵の言葉に、全員賛成とのことで、持ってきていたお弁当を食べてアジトに向かい戻っていく。
みんなで話をしながら帰っている途中で守護センサーが反応する。
全員の顔に緊張が走る。
「商店街の方だな。あそこはもう寂れてるから人はいないだろうな」
頂川がゆっくりと声を出す。
「……行くってことでいいか?」
光葵は短く全員に問いかける。
「そうだね……。今私達は四人いる。勝率は高いと思う」
綾島が賛成し、他の者も同意する。
(影慈いこうか)
光葵は念じることで影慈と会話する。
(うん、みっちゃん。新しい技もある。一緒にみんなを守ろう……)
影慈は落ち着いた口調で応えてくれる。
――〝人格共存〟左右の瞳は琥珀色、陰のある黒へと変わる――。
広いが寂れている商店街に着くと、そこには三人の敵がいた。
美鈴、志之崎、至王だ。
「会いたかったよ、お兄ちゃん達。すぐ殺してあげる……」
美鈴が狂気じみた瞳を向ける。
「美鈴、無茶だけはするなよ。俺もいる……。一緒に仇を取るぞ」
志之崎は静かに話す。
「フハハ。どうやら、因縁があるようだな。どうする? 分断するか?」
至王が問う。
「あの天パは確実に殺したい。俺の魔法で分断する」
志之崎の声が殺意を帯びる。
「分かった。そこは任せる」
至王は短く答える。
「《風魔刀――駆天風魔》……!」
志之崎の詠唱と共に、縦五メートル程の巨大な風の斬撃が飛んでくる。
凄まじい速さの斬撃で光葵達は二組に分断される。
光葵、頂川組と朱音、綾島組だ。
「まずはお兄ちゃん達からだね……」
美鈴の《インビジブルゴーレム》が光葵と頂川を、商店街の別の区画へと一気に押し出す。
志之崎もそこに続く。
「ぐっ……。前よりも出力が上がってる。頂川! 複合魔法で弾くぞ!」
光葵が雄叫びを上げるように声を出す。
「おう! いくぜ! 《複合魔法》《闇魔法×雷魔法――黒雷の鉄拳》!」
光葵の闇魔法を頂川の拳に纏わせて、強烈な一撃を放つ。
結果、インビジブルゴーレムを弾き飛ばすことができ、地面に着地する。
「あの見えない攻撃は本当に厄介だな。しかもパワーが上がってる」
光葵は思う。末恐ろしい少女だ……。




