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【Another】星の代理戦争~Twin Survive~  作者: 一 弓爾
一章 星の代理戦争 前編
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九話 死闘の結末

「朱音……。朱音……! お前なんで……!」


 目の前には裂撃をかばい、上半身に大きな傷を負った朱音が、力なくぐったりとしていた。


「俺は、また……。友達一人守れない……。なんなんだよぉ!」


 光葵は思わず、雄叫びを上げる。


「…………光葵……。無事でよかった。光葵は……生きて…………」


 朱音の目がゆっくりと閉じられる。


「……お前らはもう許さねぇ……! 確実にぶちのめしてやる……!」


 光葵のはらわたは煮えくり返っていた。

 身体中が熱い。アイツらを許すな。ぶち壊せと魂が叫んでいる…………。


「君ぃかなりのポテンシャルだね。ビリビリと強力な『マナ』を感じるよぉ。ますますエサとしてほしい。だが、これ以上はまずそうだ。人が集まってきた。面倒は避けたいんでね……」


 そう言い、倉知はガルムに乗り、走り去る。


「待てっ……! クソッ……。今は朱音が先だ……!」


 光葵は急いで救急車を呼ぶように、周りの野次馬に声をかける。


「朱音! 朱音!」


 何度呼んでも返事はない。


(みっちゃん。〝主人格交代〟して! 僕なら《回復魔法》が使える!)


「そうか……! 頼む影慈……! 主人格交代……!」


 意識が遠のく――瞳が〝光葵の琥珀色から影慈の陰のある黒〟に変わる。


「朱音ちゃん。死なないで……。《回復魔法》……!」


 影慈は全力で朱音を回復し続けた。


 ◇◇◇


 病室にて。


「朱音……。ごめんな、俺達の戦いに巻き込んじまって……」


 光葵は朱音の両手をギュッと握りしめる。


「影慈、ありがとうな。影慈が回復魔法を使ってくれたおかげで、朱音が一命をとりとめた」


(むしろ、ありがとうを言うのは僕の方だ。僕はまだ《回復魔法》と《プロテクト魔法》しか使えない。戦えないんだ……。メフィさんの話だと、他の魔法に覚醒する可能性は十分あるらしいけど……。……それになにより、この代理戦争は僕が自殺しようとしたことから始まった……)


 影慈の声に陰が差す。

 おそらく、自分の行動の中に責任を感じてしまっているのだろう……。


「影慈……! そのことは前にも言ったろ。俺が選択した未来だって。朱音を巻き込んじまったのは、『俺達』の責任だ。だから、一人で抱え込もうとするな……」


 光葵は悔し涙を流し、歯を食いしばりながら、静かに声にする。


(……わかった……。ありがとう、みっちゃん…………)


 影慈の声は今にも泣き出しそうなのを、こらえているように感じる――。


 ◇◇◇


 翌日からは若菜と一緒に登校することはやめた。

 少しでも代理戦争に巻き込まれる可能性を減らしたいからだ……。




 放課後になる。


 いつもより、静かな教室にて…………。


「影慈……俺は倉知を許せない。探し出してぶっ倒したい。危険性は上がるけど、構わないか……?」


 光葵は静かに、ただ、覚悟のこもった声で尋ねる。


(僕も同じ気持ちだから、大丈夫だよ……。それに、倉知を放っておくと、他にも犠牲者が出てしまう可能性がある。止めないと……)


 影慈は怒りを必死に抑えたような、声で応えてくれる。


「行こう……」




 影慈と話し合った結果、倉知はあまり人がいない所で〝獲物〟を探している可能性が高いという結論になった。


 そのため、廃墟や寂れた商店街などの人の少ない所を探して回ることとした。




 ――しかし、今日は奴に会うことはできなかった。


 家に帰り、背中の傷を《回復魔法》でより万全に治療する。


「絶対に見つけ出してやる…………!」


 光葵と影慈の気持ちは同じだった。


 大切な友を傷つけた敵を倒したい。それだけだ――。


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― 新着の感想 ―
朱音さんが一命を取り留めて良かったです。 しかしガルムはいけないワンちゃんですね(怒 ご主人様の命令とは言えこれは「躾け」をしないといけませんね(怒 一 弓爾さん、ありがとうございます。 面白いです〜…
傷を受けたのは、朱音だったのですね。回復魔法が使えたものの、倉知がのさばっているかぎり、不安が残る。主人格交代ができるのも、すごいですね。
ここまで読み進めてみた感じ、代理戦争というのはこの世界の日本では暗黙で周知されている事なのでしょうか。 というのも、火撃咆哮は爆撃レベルとのことなので、戦闘の傷跡はそこらかしこに残っていそうで… 派手…
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