六十六話 メフィから伝えられる真実
(それと光葵。私は重要なことを説明していないままなんだ。聞いてくれるか?)
メフィが物憂げな口調で尋ねる。
「重要なこと……? 聞かせてくれ」
(バロンスは星の代理戦争を勝ち残った者の中から、『最後の審判』で『一名』選定されるんだ。審査内容は最後の審判時に現バロンスにより決められる。また、『バロンスとなるのは守護天使、悪魔』だ。『契約した人間』には地球のマナ管理の補佐や、地球のマナバランスを整える役割を担ってもらう)
「そうだったのか……。最後の審判ってので、最終的なバロンスを担う一名を決めるんだな。契約した人間って俺と影慈のことだよな? 地球のマナバランスを整える役割って……?」
光葵は予想もしていなかった壮大な話を聞き、驚嘆しつつも気になる点を確認する。
(地球のマナバランスを整えることは人間の身ではほぼできない。そのため、人間の一次元上の存在となってもらい、超常的な力が与えられるんだ。言わば、『世界を変えられる程の力を得る』ことになるだろう)
「世界を変えられるほどの力……。なんだそれ……」
光葵はあまりにスケールの大きな話に、言葉を繰り返すことしかできなかった。
(驚くのも無理はない……。本来ならば、最初の契約の時点で伝えるべき内容だった。しかし、時間がなかったことと、代理戦争での戦闘が始まってしまっていたため、戦闘に集中できるように、あえて私の判断で伝えていなかった。罵声を浴びせるなら、浴びせてくれ……)
メフィはどんな言葉でも受け入れるということが伝わってくるような、深い物腰で言葉を出す。
「…………そんな風に言われたら、逆に罵声なんて浴びせられないですよ……。それに、メフィさんの言う通り、今このタイミングよりも早く『生き残っても人間ではいられない』ことを知らされていたら、動揺して精神状態がおかしくなっていたかもしれない。今なら、影慈と人格共存ができていて、仲違いするような可能性も低いから……」
光葵は自分でも驚くほど冷静に自分の置かれた状況を客観視していた。
メフィという上位存在と話しているからだろうか……。
(理解してくれたなら助かる。光葵、影慈、君達の絆の深さは素晴らしいものだ。私が契約者として選んだ大半の理由がそこにある。これからも協力し、代理戦争を生き抜いてくれ……)
そう言うと、メフィの存在の知覚がゆっくりと消えていった……。
正直、生き抜いても人間のままでいられないことはショックだ。
人間であること――それが今までは普通だった。
人間ではない一次元上の存在になる……。それの意味することは、〝神〟に一歩近づくということだろう。望んだ訳でもなく……だ。
しかし、今の状況を嘆いている場合ではない。
勝ち抜かなければ、待っているのは〝死〟である可能性が高い。
影慈ともう一度生き直す。それが光葵の一番の望みだ。
そのためなら、星の代理戦争だろうと何だろうと、生き抜いてやる……!
それに、朱音も協力してくれるつもりだ。
ここで、迷っている暇はない……。
進んだ先に待っているのが、人間ではなくなることであっても、立ち止まる訳にはいかない……!
◇◇◇
その後、朱音にさっきメフィと話した、代理戦争の参加者以外の介入について〝危険性を強調〟して伝え直した。
朱音はそれでも一緒に戦いたいと何度も言ってくれた。
最終的に光葵が折れる形で、了承した。
改めて、一週間の修行で一緒に戦うのが危険と判断したら、潔く諦めて欲しいとも伝えた。




