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【Another】星の代理戦争~Twin Survive~  作者: 一 弓爾
一章 星の代理戦争 前編
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六話 二つの心

 今日は敵に襲われることもなく、無事に家に辿り着いた。

 本来であれば空手に行く日だが、念のため休むこととした。


「影慈、今日は問題なく過ごせたな……」


 光葵は不安を押し殺しながら、影慈に話しかける。


(そうだね。このまま平和に過ごせたらいいんだけど……)


「そうだな……。……不安になってばかりでもよくないし、とりあえず夕飯でも食べよう」


 みっちゃん家でご飯か、不思議な気分だ……と思う影慈の気持ちが光葵に流れ込んできた。


 ちょうど夕飯時のため、リビングに向かう。カレースパイスのいい匂いがしてくる。


「あ、ちょうどご飯できたわよ」


 母が笑いかける。


 既に父と若菜も来ていた。今日は父の仕事が早く終わったらしい。


「じゃあ、みんな揃ったしご飯食べよう!」若菜が元気よく号令を掛ける。


「いただきます!」という声がリビングに響く。


 あ~、やっぱ母さんの作るカレーは美味いな、パクパクと頬張っていく。


 若菜は「学校の友達と今度カフェに行くことになった」という話を笑いながらしている。


 それを父も母も嬉しそうに聞いている。穏やかな時間だ……。


 すると、だんだんと目頭が熱くなってくるのを感じた。


「え? お兄ちゃん泣いてるの? 大丈夫?」


 心配そうに若菜が顔を覗き込んでくる。


「な、なんでもないよ。カレーが美味しくて、あったかくて……」〝自分の言葉ではない言葉〟が口から溢れてくる。


「なんだなんだ。母さんのカレーが美味しすぎて泣いてるのか光葵?」


 父がからかい半分心配半分といった口調で尋ねてくる。


「お腹減ってたからかな……。母さんおかわりもらっていい?」


 少し急いで聞く。


「泣くほど喜んでくれるならもっとカレー作るよ!」


 ニコニコとカレーをついでくれる。


 温かい幸福感がどんどんと胸に広がっていく。光葵はいつも食べているご飯のありがたみを噛みしめ、涙を流しながら二杯目のカレーを黙々と食べた。




 光葵は部屋に帰り影慈に話しかける。


「影慈……さっきのって……」


(ごめん、みっちゃん。肉体一つに僕の心も入ってるから、僕の感情も影響を与えちゃうみたいだね)


「うん、それもそうなんだけど……」


(ああ、さっきの感情についてだよね。昔の仲が良かった僕の家族のこと思い出しちゃってさ。それにみっちゃんの家族はみんな温かいね。若菜ちゃんも大きくなって綺麗になってた)


「そうか……ありがとな影慈。影慈のおかげで家族のありがたみが身に染みて分かった気がする」


 ――少し間を空けて。


「あと、若菜可愛いだろ! 自慢の妹なんだ。可愛いだけじゃなくて気も利くし空手もしてて頑張ってる。ほんとにいい子なんだ!」


 光葵は興奮気味に鼻息荒く伝える。


(あはは……みっちゃん昔から若菜ちゃん大好きだったもんね。仲が良いいのはいいことだよ)


 影慈はどこか気を遣ったような言い方をする。


「影慈……お前今〝シスコン〟って思わなかったか? 俺はシスコンじゃないぞ……?」


(そうだね。みっちゃんはシスコンじゃないよ)


 抑揚の無い返答がある。


「影慈……。俺はシスコンじゃないぞ……」


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― 新着の感想 ―
やっぱり何度読んでも設定が最高に良い
シスコン。笑 抑揚のない返事が物語っているの、くすっとしちゃいました^^
カレーは正義!(美味 ですね♪
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