五十一話 人格の共存
夜になり、影慈から話がある。
(今回の戦いでは連携もうまくいかず、僕達の力不足もあり負けてしまった。かなり精神的に参ってるよ。でも、いつまでも落ち込んでもいられない。コレが〝戦争〟なんだろうね……)
「そうだな……。クソッ! 俺の判断が……いや、俺達が弱かっただけか……。……ごめん、ごめんな。環さん……」
不意に光葵の頭に貫崎の顔がよぎる。違う……強さだけが全てじゃ……!
(…………こんな方法で強くなれたりはしないかな? 〝魔法戦士〟ってあるよね。そんな感じで、僕の魔法とみっちゃんの近接戦闘を合わせたような形で戦えないかな?)
「……たしかに、その戦い方ができれば幅を持たせれそうだな。そうなると〝人格の共存〟が必要なのかな……?」
影慈と話していると、メフィから声がかかる。
(光葵、影慈。久しいな。話を聞かせてもらっていた。先程の件について話してよいか?)
「メフィさん⁉ お久しぶりです。先程のって、魔法戦士のこと?」
光葵は不意の声掛けに驚きつつも尋ねる。
(そうだ。それを実現するには〝人格の共存〟が必要だと思われる。ただし、かなり難しいと思う。今は一つの肉体に〝心、魂〟が半分ずつ入っており、〝主人格を固定〟して安定している状態だ。人格をも半分ずつ共存させるとなると、〝心、魂のシンクロ率〟が相当なレベルに達しないと難しい。二人も常に全く同じことを考えている訳ではないだろう?)
メフィが淡々と尋ねる。
(そうですね。考えや物の見方なども違いますし)
影慈が考えつつも答える。
「考え方や感情が同じになれば〝人格の共存〟ができるのか?」
光葵が尋ねる。
(全く同じにならなくてもよいが、〝限りなく近い感情、思考〟を二人が持つことが必要だ)
(分かりました。難しそうですね。教えて頂きありがとうございました)
影慈が礼を述べる。
(ああ。たまにしか話せなくてすまないな……)
そう言い、メフィの存在の知覚は消えていった――。
入院中にもマナが回復していくため、《回復魔法》を使いながら光葵と頂川の傷を治していった。
結果、医師は驚いていたが、三日で退院することとなった。
「日下部のおかげで早く回復できたぜ。いつもありがとな」
頂川の笑顔を久々に見た気がする。だが、いつもの明るい笑顔ではない……。
「こちらこそありがとな。家に顔出して退院したってことは言っておかないとだよな」
光葵が確認する。
「俺は家帰らないのも日常茶飯事だし、親もあんま気にしてないけどな」
頂川は気にしていない様子だ。
「そうか……。とりあえず一旦家に顔出すわ。合流は明日でもいいか?」
「大丈夫だぜ。また、連絡するな」
頂川がそう言い別れる。
◇◇◇
家に帰ると平日の昼間のためか、誰もいなかった。
今なら集中してできそうだ。
「影慈、〝人格の共存〟のための〝心、魂のシンクロ率〟を上げるっていうのやってみないか? 〝限りなく近い感情、思考〟になれればいいみたいだけど……」
(うん。でも難しそうだね。曖昧な感じだし)
「そうだよな。共有しやすい感情は……〝仲間を守りたい〟〝強くなりたい〟とかかな?」
(たしかに! それは僕も強く思ってる。早速やってみよう)
影慈が気合の入った声を出す。
その後、二時間程〝人格の共存〟に挑戦してみるもできなかった。
「コレ、相当難しいな」
光葵が呟く。
(心の底から同調する必要があるのかも。それぞれの価値観もあるしすぐには難しいかもね)
影慈が推測を述べる。
「少しずつでも感覚を掴んでいくか……」
――仲間を二度と失わないように早く強くなりたい。二人の気持ちは同じだった――。




