五話 二人で過ごす学校
翌日。
学校に登校することとする。代理戦争があるとはいえ、親への説得が難しく、簡単には休むことはできない。
それに、大人数がいるところで、魔法を使うような派手な戦いは行わないだろうという推測もあった。
なぜなら、派手な戦いが起これば警察が動くことになり、代理戦争の参加者にとっても、普通の生活すら送りづらくなると考えたからだ。
「お兄ちゃん! 途中まで学校一緒に行こう!」
妹の若菜が話しかけてくる。
若菜の見た目は小柄で、光葵と同じ黒髪。髪はツインテールにしており、琥珀色の大きな目をしている。ちなみに、目の色も光葵と同じ色だ。
「おう! いつも通り一緒に行くか!」
光葵は可愛い妹の声掛けに微笑みを浮かべる。
「いってきます!」
二人の声が玄関に響く――。
「お兄ちゃん、そういえば髪の毛くるくるのパーマになってるよね? いつパーマにしたの?」
若菜が羨ましさ半分、単純な疑問半分といった調子で尋ねてくる。
「ん? あぁ……そういやパーマになってるな……」
影慈のことが心配過ぎて、自分の容姿を気にも留めていなかった……。
だが、この懐かしいくるくるしたパーマは影慈の癖毛だ。
二心同体になった際に、髪の毛は影響を受けたのだと思われる。
「え~? 何その反応! いつの間にかなってたの?」
若菜は目を丸くしながら、驚きを口にしている。
「いやぁ、母さんが癖毛だろ? その影響かな……?」
その場で思いついた言い訳を述べておく。
実際に母は癖毛だ。影慈ほどの天然パーマではないが……。
「そっかぁ。私もそのうちパーマになるのかなぁ……。パーマおしゃれだし、いいなぁ」
若菜は光葵の髪を数度触り、ふわりと微笑む――。
◇◇◇
学校に到着する。
光葵は洲台高校の二年生だ。
自分の席に着くと、赤い髪が非常に目立つ女子が近づいてきた。
幼馴染の南城朱音だ。
赤い髪というだけでも派手だが、目鼻立ちが整っており髪に負けないくらい華やかな印象だ。
「おはよう! 光葵!」
朱音は太陽のように明るく挨拶してくる。
「ああ、おはよう、朱音。相変わらず、目立つ髪だな~」
光葵は自然な笑みがこぼれる。
「あぁ~! また髪のこと言ってる! 前にも言ったじゃん! 高校入学する前くらいに自然となってたんだって!」
朱音は真剣そのものといった口調だ。怒っているというより、冗談を言っているような印象ではあるが。
「嘘つけ! 高校デビューだろ!」
光葵はすぐさまツッコミを入れる。
「高校デビューじゃありませ~ん。てか、光葵パーマかけたんだね。一昨日まではストレートじゃなかった……?」
朱音は光葵の髪を見て疑問符を浮かべている。
「あ~。俺も自然となってたんだよ」
光葵は笑いながら返す。
「何それ!」
ケラケラと朱音は笑う――。
時間が経ったからなのか、影慈との意識の共有がしやすくなってきていた。
そのため、授業を光葵と影慈の〝二人〟で受けていた。
光葵は勉強が苦手だが、影慈は得意だ。
光葵のわからないことを、影慈が教えてくれることもあり、二人で協力しながら過ごした。
普段なら別々の高校に行っているから、なおのことだろう。学校での生活を影慈と二人で過ごすのも楽しい――。