三十五話 新たな仲間
「お前……強いな。強ぇ奴は好きだぜ……」
男はゆらゆらとこちらに近づいてくる。
「まだやるのか?」
真っ直ぐとした声で伝える。
「いや、十分お前の強さは分かった。チームを組もうぜ……」
相変わらず獲物を見る獣のような目だ。だが、少し友好的になっている様子が窺える。
「おう! 俺もあんたと組めれば心強い」
――ふと思い出す。
「今、別で二人の参加者と組んでるんだ。そこに加わる形になるけどよかったか?」
「あ? 聞いてねぇぞ! ……まあいい。そいつらはどんな奴らなんだ?」
「説明してもいいんだけど、近くにいると思うから今から紹介してもいいか?」
「……分かった。直に見た方が早いだろうしな」
男は一応納得したようで、素直についてきてくれた。
――そして、いつもの修行場所に向かう。
既に頂川と環は修行をしていた。
「ごめん、今日は色々あって、修行来るの遅くなった。実は仲間が一人増えそうなんだ」
「おう! 日下部。その人か?」
頂川が見上げながら話す。
「こんにちは! 日下部さんともう一人の方!」
環は今日も明るい挨拶をする。
「コイツらだな。お前が言ってた仲間ってのは」
男は相変わらず、獣のような威圧感だ。
不意に頂川が大きな声を出す。
「あれ? あんたテニス日本代表だった貫崎狼牙さんじゃない?」
「…………そうだ」
貫崎はどこか面倒くさそうな返答をする。
「え~! すげぇな! 本物だぜ!」
頂川はテンションが上がっている。
「貫崎さんっていう名前だったんだな。俺は日下部光葵です」
正直、テニス日本代表だった人とは思ってなかったので驚いている。ただ、貫崎の反応からして〝有名人〟のような接し方をされるのは嫌なんだろうと思い淡々と済ませた。
「私は環繁葉です!」
環も同様の考えから、短く挨拶をしたようだ。
「俺は頂川剛一だ! 貫崎さん、よろしくお願いします!」
頂川は興奮を抑えきれていない。
「……日下部、コイツらは強いのか?」
獣のような目が俺を捉える。
「強いですよ。それぞれに得意分野があるので、全員戦闘が強いという訳じゃないけど」
「そうか……」
貫崎は頂川と環を値踏みするように見る……。
「まあいい。俺も組もう」
「そっか! よかった! これからよろしくお願いします」
光葵は胸をなで下ろす。
「だが、俺が組むに値しないと思った時点で抜けるからな」
脅しではなく、実際に行動に移すということが、貫崎の目から伝わってくる。
「分かった。そうならないことを信じます」
光葵は貫崎に笑顔を向ける。
「あと、今から修行しようと思ってるんだけど、貫崎さんもどう?」
「俺がそういうのに参加する柄と思うか……?」
貫崎から、やや苛立った口調で返答がある。
「柄とかじゃなくて、お互いの戦い方を知るためにも必要と思う」
光葵は真っ直ぐ目を見つめる。
「フンッ! まあいい。戦い方が分かってなくて足引っ張られるのも御免だしな」
「はは。理由はともかく一緒に修行できるのは助かる!」
その日から三日間貫崎も交えて修行を行った――。




