百十八話 最後の審判①
清宮との戦闘後少ししてから、三人それぞれに守護天使から話があった。
(光葵、影慈。よく勝ち残ってくれた。礼を言う、ありがとう。続いてだが〝最後の審判〟にて誰の守護天使がバロンスとなるかを決めなくてはならない。君達を〝審判の間に転送〟することになる。代理戦争終結後すぐに最後の審判は行われる。心の準備がまだかもしれないが、数十秒後に転送が開始される)
メフィは淡々と説明する。
「そうなんだな……。分かった。とりあえず、生き残れてよかったよ」
光葵は軽く微笑む。
(分かりました。最後の審判ってどんなのだろうね……)
影慈は少し不安げだ。
(たしかに気になるな……。まあでも、俺達二人なら大丈夫だろ!)
光葵は本気でそう思う。
今まで生き抜けたのは影慈がいたおかげだ。何度も助けてもらった。
だが、助けられてばかりではない。光葵自身が行動したことで、変えてきたこともある。
影慈から流れ込む感情には、光葵がいたから生きてこられた、というものが大きくあった。
――そう。二人の想いを合わせれば、〝二人だったから〟こそ生き抜けたという結論になるのだ――。
(あはは。そうだね。みっちゃんとなら何でも大丈夫な気がするよ……!)
影慈は、自分の存在が必要とされていることを喜ぶように、嬉しげに声を出す。
直後、〝光葵と影慈〟は審判の間に転送される。
そこは、白い柱が立ち並ぶ、荘厳な雰囲気の神殿のような場所だった……。
ふわふわと白く光る〝何か〟に案内され、神殿内に入っていく。
そして、大きな円卓の椅子に光葵、綾島、比賀は座るように促された。
円卓越しの一回り大きな椅子には〝人間では見ることのできない何か〟がいる。
淡く輝いており、見ているだけでも人間とは次元の違う存在だと知覚できる。
「私は現バロンスのサキエルだ。まずは、第四次星の代理戦争、見事生き残ったことを褒め称えよう。さて、次期バロンスの選定だが、『今までの戦績』と君達の持つ『あるべき世界の思想』を聞き、それらを総合して決定したい。よいか?」
サキエルは威厳を感じさせる声で尋ねる。
その声色は強制ではなく、確認という色の方が濃かった。
「大丈夫です」
光葵達は、全員同じ返答をする。
「では、まず比賀。君のあるべき世界の思想を聞かせて欲しい」
サキエルが静かに尋ねる。
「……私は『犯罪のない世界』を創りたい。なので『人間の悪性の排除』がしたい」
比賀は意志の強い瞳でサキエルを見据える。
「うむ……。では次、綾島。君のあるべき世界の思想を聞かせてくれ」
「私は『復讐心を抱かないでよい平和な世界』を創りたい。それと……相反することかもしれないけど『大切な人を守る力を持ってほしい』とも思ってます」
綾島は芯のある声で返答する。
「わかった。では、最後日下部。『君達』は二人で一つの思想という扱いだがよいな?」
「大丈夫です。俺達は……。『人同士の相互理解ができて悲しい出来事を少しでも減らしたい』です。……『少しだけでいい。優しい世界の構築』を望みます」
光葵と影慈の思う、あるべき世界の思想は同じだった。
人格共存をしており、かつ今までずっと一緒にいたからこそ、色々な経験をしたからこそ辿り着いた考えだ……。
「君達のあるべき世界の思想は分かった。少し待っていてくれ。他の者とも協議したのち選定結果を伝えよう……」
そう言い、サキエルはゆっくりと消えた。
光葵達は厳粛な雰囲気もあり、一言も会話せず待ち続けた。




