百十四話 最終決戦②
「私も戦うわ《付与魔法×水魔法――強化水龍》」
清宮は《強化水龍》を六頭創出し、それぞれの龍が光葵と綾島に襲い掛かる。
水龍の攻撃を躱すも、ピンポイントで《高圧穿孔》が清宮の両手それぞれから放たれる。
光葵と綾島は急所を何とか避けるも、高圧穿孔で身体に複数穴が開く……。
「グッ……! 何だ? 予測しての攻撃なんてレベルじゃない。まるで、そこに行くことが分かっているかのような攻撃だ……」
光葵は思わず、言葉に出す。
今のままじゃ全力を出し切る前にヤラれる……。
「《闇魔法――闇霧》! 《身体強化、極み》……!」
光葵は《闇霧》を広範囲に展開する。その上で一気に身体能力を引き上げ、不規則な動きでフェイントを入れ《擬似神槍グングニル》を清宮目掛けて投擲する。
神速の槍がぶつかる衝撃音が響く……。
しかし、虎西が防御に回っており、グングニルを甲冑と腕で受け止められる。
「クソッ! 俺の動きが予見されてるのか?」
虎西の甲冑はよく見ると多少傷が入っている。
ただ、即座に《金帝魔法》で修復されているのが分かる。
数秒で元通りだ……。
綾島はその間に清宮に攻撃するべく、光速で水龍二頭を破壊し《破邪の矢》を放つ。
「速いね……。《強化水圧移動》……」
清宮は静かに呟き、綾島の攻撃を躱す。
「まだ…………!」
綾島は更に攻撃を繰り出そうとする。
「残念だけど、あなたの動きは私に『視えている』の……。《強化水刃》……」
清宮の詠唱の直後、綾島は強化水刃によるカウンター攻撃を入れられる。
綾島の右肩から左上腹部が、鋭い水の刃で切り裂かれる。
「ぐっ……こんなところで……」
綾島は戦闘を継続しようとする。
「綾島さん! 《風魔法――高速移動》!」
光葵は超速で綾島を抱きかかえ洋館の窓硝子を突き破る。
振り向きざまに《灰燼砲》を高出力で放つ。
「一旦退避する。このままだと傷を負う一方だ……!」
光葵は綾島に声をかけつつ、逃走する。
◇◇◇
洋館の敷地内の大木の陰にて。
光葵は《生成魔法×回復魔法――自動人体生成》を自分に使いつつ、綾島にも回復魔法を使い回復させる。
綾島も回復魔法で自身を回復している。
「ごめん、日下部君……」
綾島は、目に戦意は宿ったままだが、少し穏やかな声だ。
「いいよ。でも、清宮は何で俺達の行動が分かるんだ……?」
次の瞬間〝意識が影慈に偏る〟――。
「あまり時間もないと思うから、手短に話すね。清宮は明らかに以前とは違う。魔眼と額に第三の目があった。ここからは推測だけど『未来視』と『思考伝達』が使えるんじゃないかな? 清宮の未来視で知れる未来を虎西にも共有している。二人共僕らが行動する前に回避、ピンポイントでの攻撃準備をしてる感じだった。まだ攻略方法は浮かんでないけど、少なくとも『虎西』を何とかしないと清宮に致命傷は負わせられない……」
影慈は今までの状況から推測した情報を綾島、〝光葵〟に共有する。
「その推測だとあいつらの動きにも納得がいくね。じゃあまず虎西を殺さないと……」
綾島が無感情に呟く。
「……そうだね……。あの防御を超えるには僕と綾島さんの一番攻撃力のある複合魔法を当てるしかない。多分防御力を超える出力だと『防御じゃなくて躱す』と思う。だから躱せないように隙を作る必要もある」
影慈は淡々と作戦を伝えていく。
「オーケー……。私の魔法で隙を作るよ……」
綾島は戦闘モードに戻っていく……。
そこに清宮と虎西の二人が水龍に乗りながら話しかける。
「ここにいたのね。さあ、再開しましょう?」
清宮が穏やかに話しかける。
「見下ろすな……。《光速移動×反射魔法――光彩陸離》……!」
綾島は〝地面と空中〟を反射し駆けるように超光速移動する。
「まだ速くなるのね……」
清宮は四頭の水龍で綾島を攻撃する。そして〝予見〟したと思われる位置に《高圧穿孔》《強化水刃》を放つ。
「カウンターが分かってるなら……。《反射魔法×光魔法――反照》!」
綾島は〝光る反射フィールド〟を右手の前に展開し反射して清宮に返す。
「《金帝魔法――構築、魔金属の盾》!」
虎西が前に出て綾島の攻撃は防がれる。
綾島が隙を作ってくれている間に、光葵は清宮の〝死角〟に回り込む。
「《闇魔法×風魔法×火炎魔法――黒風炎刃》……!」
しかし、清宮はそれすら予見していたようだ。
いや、もしかしたら、魔眼の視野が非常に広く〝死角になり得ていない〟のかもしれない。
「《水魔法×付与魔法――強化水盾》……」
清宮は即座に黒風炎刃を相殺する……。
「十分だよ……。《光速移動×反射魔法――光彩陸離》……」
綾島は静かに呟く。そして、《光彩陸離》で水龍に乗る二人に接近する。
「《光魔法――遍く浄化の光》……!」
綾島の両手から、全てを浄化し無に帰す聖なる光が放たれる。
光は清宮と虎西を包み込む――。
数秒後、水龍は完全に浄化され消え失せる。




