百十話 説得
一方、光葵と志之崎は刻印結界の中で戦い続けていた。
だが、結界内という〝限られた空間〟であり、志之崎の《風魔刀》《反射魔法》と非常に相性が良い。
光葵は追い込まれていた……。
「その程度か! お前はいつも優位に立てるように戦っていただけか? このままだとすぐ死ぬことになるぞ……」
志之崎は鋭く叫ぶ。
「……お前は強いよ。……唐突かもしれないが、今なら話せそうだから話すぞ。親友との約束なんだ。降伏する気はないか? お前の仲間の少女は親友が降伏させた。少女にこれからも生き続けてもらうためだ」
光葵は真剣な表情で伝える。
「お前……ふざけてるのか? 俺の仲間はお前らに殺された。美鈴も人質として生かしていただけなんじゃないか? それに俺に殺されそうなお前の指図をなぜ受けないといけない?」
志之崎は刀を光葵に向ける。
「そんなことする奴じゃない! あいつは優しい奴だ……!」
光葵は怒りで声を荒げる。
「……戦争では優しい奴なんてのは関係ない。生きるか死ぬかだけだ」
志之崎は冷淡に話す。
「……話し合いじゃ無理みたいだな。力ずくでもお前には生きてもらう……!」
光葵は志之崎を言葉で説得することはできないと判断し、武力行使をしてでも降伏させることを決める。
「意味不明だ。もういい。俺はお前を殺すだけだ……」
志之崎の瞳に刃のような光が奔る。
「《風魔刀――乱射斬》、《風魔刀×反射魔法――反射斬嵐》……!」
志之崎は結界を使い《乱射斬》で斬撃を乱反射させる。
そして、自身が反射魔法にて加速し、荒ぶる嵐の如く、縦横無尽に剣戟を振るう。
「《風魔法×火炎魔法、氷魔法――炎刃、氷刃》《身体強化×アイスグローブ》!」
光葵は炎刃と氷刃での斬撃の相殺、アイスグローブでの防御で何とかしのぐ。
しかし、だんだんと光葵の身体中に切創ができていく……。
四肢が切り落ちてしまいそうだ……。
「《生成魔法×回復魔法――自動人体生成》……!」
光葵は局所的に損傷部位を〝生成〟して治すことで回復速度を上げる。
「本当に色んな魔法を使うな……。このまま攻め切らせてもらう」
志之崎は驚嘆を漏らしつつも、その目に油断は一切ない。
「俺もやられっぱなしじゃない!」
光葵は《身体強化》を極限まで高める。《自動人体生成》で身体の傷が治っていくのと同時に一気に全身体能力が上がったため、動きのギアが二段上がる。
反射神経で志之崎の剣戟を躱し、カウンターで中腹部へ渾身の一撃を入れる。
「ガッ……!」
志之崎は三メートルほど下がる。
しかし即座に「《風魔法――駆天乱斬》……!」と詠唱する。
暴風の刃の塊が飛んでくる。
ヤルなら今だ……光葵は静かに覚悟を決める。
「《理の反転》……」
黄金色に光る右手を《駆天乱斬》に突っ込む。
瞬間、《駆天乱斬》は〝回復魔法のような効果〟へと変わる。
身体の傷、マナが回復するのを感じる。
そのまま志之崎へ迫る。
一気に決める……!
「お前何をした……!」
志之崎は事態が理解できず、動揺しているようにも感じる。
「隠し技だよ……! コイツも受け取れ! 《合成魔法》《生成魔法×氷魔法――想像的生成、擬似神槍グングニル》……!」
光葵は走り込む勢いに、投擲力を乗せて、グングニルを放つ。
「《風魔刀――鎌鼬》!」
志之崎はグングニルを弾こうと魔法を発動する。
しかし、志之崎はじりじりと押されていく……。
「悪いがダメ押しだ……」
光葵は新たに高速生成したグングニルを再投擲する。
志之崎は弾き返し切れなくなり、そのまま結界に衝突し、結界を崩壊させながら奥にある大岩にぶつかる。
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