十一話 守る覚悟
目を開けるとそこには金髪の男が立っていた。
「大事な仲間これ以上傷つけさせねぇぞ……」
雷魔法で貫通魔法を相殺している……代償に両手は血に染まっていた。
「キャハハ。本当に馬鹿ねあんた。そんな奴ら守るためにボロボロになって。もう動くのも難しいんじゃない?」
女は顎を上げ、明らかに侮辱している。
「仲間のために命張ることに馬鹿も何もねぇよ……。俺が守りたいと思ってるから守るだけだ」
その言葉には一点の曇りもないことが伝わってくる。
「あっそ、じゃあもうそろそろ死んで」
無慈悲に貫通魔法の〝溜め〟が始まった。
「みっちゃん! 回復終わった! このままじゃ金髪君死んじゃう! 主人格交代してそれで――」
(影慈、みなまで言うな。分かってる……!)
光葵の覚悟が声色から伝わってくる。
〝主人格交代〟瞳が琥珀色へ戻る――。
◇◇◇
「金髪、ちょっと退いててくれ!」
光葵はそう言いながら金髪の男の前に走り出る。
「《身体強化×プロテクトグローブ》……!」
身体強化魔法で両腕の筋力を大幅に引き上げる。
更に、プロテクト魔法をグローブのように纏う。
そして、連続で飛んでくる貫通魔法を殴り軌道を逸らす。
周りで爆音が聞こえ、土埃が舞う。
「はあ? あたしの貫通魔法を殴って躱したの……⁉」
女の驚いた顔が見える。
「金髪、お前の覚悟よく伝わった……後は俺に任せろ」
「お、おう……いや待て俺も戦う。手はお釈迦だがまだ動けるぜ」
金髪の男の目には戦う意志を感じる。
「はっ! それで勝ったつもり? まだマナもあるし……」
女が話している途中で、光葵は一気に距離を詰める。
「ぶっ飛べ、クソ女」
そのまま顔面に右ストレートを叩き込む。
突進する勢いも乗せた一撃は女を入口付近まで飛ばした。
「痛いわねぇ……!」
女は怒りで顔が真っ赤になっている。
少しの沈黙があった後。
「ちっ! 今回はこれでいいわ。でも最後に」と言い、貫通魔法を地面に向けて斜めに撃ち込んでくる。
光葵は、咄嗟にプロテクトを張り不良達を守る――。
守護センサーが、女が五十メートル以上離れたことを知覚させる。
「ふう……」
光葵の口から、思わず声が出る。
「おいあんた! 舎弟を守ってくれてありがとな!」
金髪の男に深々と頭を下げられる。
「いやいや、大丈夫だって! それより手を回復させよう!」
光葵は焦りながら回復を提案する。
回復魔法で手を治している間に自己紹介し合う。
その際に、頂川剛一という名前だと聞く。
洲台西高校の二年生で番長をしているそうだ。
「いや~、でもあんた強いな。なんか武術とかしてんのか?」
頂川は興味深げに質問する。
「小さい頃から空手をしてる」
光葵は頂川の目を見ながら返答する。
「おお! 空手か! かっけぇな!」
頂川は目を輝かせる。
「頂川は何かしてるのか?」
「いや、俺は昔から喧嘩ばっかしてただけで、武術とかは習ったことないんだ」
「それで、二年生で番長ってのもすごいな……」
光葵は素直に驚嘆を漏らす。
「いやいや、頂上目指してたらいつの間にかって感じだぜ」
頂川は屈託なく笑う。
手の治療も終わる。本題に入ろう。
ただ、その前に巻き込まれた不良達が気にかかるな。




