百四話 比賀とカイザー
同日。カイザーと比賀は岩山で修行をしていた。
「比賀、いい線までいっているぞ。実戦でも使えるのではないか?」
カイザーが声を出す。
「そうか? それは嬉しい話だな。でも、すまない。私の魔法の修行に一週間も付き合わせてしまって。魔眼で確認し、アドバイスをもらいながらの修行が必要だったとはいえ、私とばかりの修行で不都合はなかったか?」
比賀は気にした様子で尋ねる。
「一向に構わんぞ。我も高めたかった魔法を修得できたしな。それに、比賀の考えた魔法はかなり強力だと思う。仲間が強くなることに力を貸すのは当然だ」
カイザーは意に介していない様子だ。
「フッ。そう言ってくれると助かる。しかし、あんたを見てると昔を思い出すな……」
比賀は物思いにふける。
「昔……? 我に似た良き知人でもいたのか?」
カイザーは真顔で質問する。
「フフッ。そういう軽口を叩くところも似てるかもな……。私には弟がいたんだ。あんたと同じでクソ生意気なガキだったよ……」
比賀はどこか茶化したような口調で話す。
「汝……我を馬鹿にしてないか? 全く……。それより『いた』というのは……?」
カイザーが疑問符を浮かべながら尋ねる。
「……私が元刑事だって話は前にしたよな。私は『犯罪者が人一倍許せない』んだ。弟はちょうど、あんたと同じ中学二年の時、武装したテロリストに目の前で殺された……」
比賀は冷静に言葉にしたつもりだ。だが、声はワントーン下がっている。
「なっ……」
カイザーは言葉を失う。
「私は当時高校生。自分の無力を恨んだよ……。同時に、テロリストや犯罪者に対する憎しみが『心、魂』から溢れ出し続けた……」
比賀の目に強い怒りと悲しみが宿っていく。
「……では、その一件があり刑事を志したということか?」
カイザーも悲しい表情で尋ねる。
「そうだ……。私は『この世界から犯罪をなくしたい』。だから、刑事になった。でも、そんなことは不可能だと分かったよ。犯罪者はいくら逮捕しても現れる。私にしたら、地獄のいたちごっこだった……。それでも、少しでも救われる人がいると信じ、仕事を続けてきた……。最終的には、行き過ぎた捜査で上層部と揉めて辞めちまったけどね……」
比賀は諦念を感じさせる物言いをする。
「そうだったのか……。比賀、もしやこの代理戦争に参加したのも……」
カイザーは言葉を途中で切る。
「ああ……。私は代理戦争を勝ち抜いて『犯罪のない世界』を創りたい」
比賀の表情は真剣だ。そうすることが弟の生きた証を証明すると思うからだ……。
「比賀……。汝の覚悟しかと受け取ったぞ。我が汝の盾となり矛となろう……」
カイザーは瞳を鋭くする。
「ガキ……。ありがとな。あと、重い話をしてしまってすまない。……それと、前から気になってたんだが、その話し方はキャラ設定か何かなのか?」
比賀は急に違う話題を振る。




