工房に見学に行こう!前編
昼過ぎ頃までやることもないせいか、暇つぶしで普段の日課をしていた。
体幹と体力低下を防ぐためにもやっておかねえと落ち着かんし、本来なら組手や剣道もしておきたいが自由に動ける立場じゃないせいか身体がなまるってもんだ。
「それにしてもはや2時間は柔道の型はしていたが、なーんか鈍ってるような気がする。」
拳を前に出すスピードに俊敏に動く突き出しが甘い。
何度か足蹴りもするも遅く感じていた。
「1日サボるとこうも鈍るんか? うーむ?」
ここの世界に関係してるのか、それともただサボったせいか?
うーーむと唸って悩んでるとコンコンと扉を叩く音がした方向を向けば、ギルバートとシオンが部屋に入って来てたのか訝しげにみていた。
「お、2人とも仕事終わったんか?」
「まあー、一応ひと段落したので来てみたんですが、何してたんですか?」
「俺も仕事は終わったのもあるが白夜に用があって訪ねたんだが、何して汗かいてんだよ。」
軽くタオルで拭いていたが、確かに汗かいてたのを忘れていた。俺はガシガシと礼儀として汗をタオルで拭い取り近くにおいてた水をぐいっと飲んだ後に何をしてたか説明しておくことにした。
毎回聞かれるたびに説明するのはかったるいからな。
「俺んとこでやってる柔道の型と空手の型を交えて呼吸法をしてたんだ。日課でついな。」
「ほほうーどんな効果があるんだ?」
「ジュウドウとカラテですか? 僕は見たことなかったかもしれない。」
「ギルバートはあっちでは俺の職と絡まんとこで生活してたんなら知らないかもな。あー効果だっけ、この二つしておくと俊敏さと体幹に攻撃範囲の鋭さが上昇する感じかね。本当なら組手とか剣道での日課もあるが....ってなんだよ、その妙な視線は。」
「いやーーーつくづく白夜が謎すぎてなあー。」
「白夜さんは警察官長いって言ってましたもんね。交番勤務に移動する前は色々あったと愚痴ってましたし。」
「あはは、まあー人それぞれ歴史ありさ! それよりシオンはなんの用だったんだ?」
昔のことを掘り返したくなくて話しの路線変更をすると、シオンはハッと思い出したらしく来た用事を説明してきた。
どうにも要件は俺の処遇が曖昧なままであることらしく、ここでの生活は今のところは城圏内であること。
城外で街に出る場合は、異端人扱いもあり同行者をつけること。いま時期的に忙しい行事が多く、近々大きなイベントがあるようで王との謁見は無理らしい。
本来ならそうそうに俺への挨拶と詫びを入れたかったとのことだったが、タイミングが悪かったと。
「とまあーそういうわけで、今後はこんな流れで動いてくれていればいいそうだ。」
「なるほど、行動範囲が広くなるのはありがたいかも。この部屋と厨房で過ごすだけだったら暇すぎるし、身体が鈍ってしまうとこだった。」
「まあー外行きたい時はぜひ! 僕が! 付き添いますから声かけてくださいよ!!」
「へ? 誰でもよくないか?」
「絶対僕に声かけてください!!いけないときは諦めますけど。」
ムキーと張り切っての発言がやけに焦っているような感じに起伏が激しいなと思う。構って欲しい弟か、お前は。
「まあタイミングあったら声かけてやるよ。」
「いま不穏いなこと思われた気配を感じたんですが。」
「気のせい気のせい、それよりもさ俺の私服って今持ってるやつしかないし異界人の服だと目立つからシンプルなふくねーかね。」
今のところ動けるがここなら、なおのことこれは重要案件なのだ。歩く度にじろじろみられ、あーあいつが異界人だああーーって宣伝看板かかえて歩いてるもんだし、運動して汗かいた時の着替えも欲しいと思っていたのだ。
「服か....私服は白夜的にはシンプルがいいのか?」
「そうだな、動きやすくて機能性もあるとなおいいかもしれん。あ、できることならショルダーで腰に刺すやつが欲しいかも。」
「機能性ねえーー何に使うんだ?」
「警棒と護身用にナイフか剣を常備しておこうかと思ってよ。」
「武器関連は理解できるが、警棒ってなんだ?」
ギルバートは知っているか? と質問していたが首を振りシオンが疑問を浮かべて俺に聞いてくる。
「こうー棒状なのに伸縮性があるんだよ、短い感じではあるが伸びて使う感じだな。どうにもないと落ち着かないんだよ。」
「ふーん、使い方はさっぱりわからんが、実用性はあるわけか。なら武器職人のドルチェのとこでつくってもらうといいかもな。」
「確かにあの人なら難しい注文聞いてくれそうですね。」
「そうなのか? うーむ、今度その場所に連れてってくれないか?」
実際行ってどんなモノを作ってるのか気になるし、実際に話しだけじゃ伝わらないだろうしな。
結構精密なところあるんだよなーーバネとか伸縮性も。
長さだって基準はあれど、伸びる部分は大事だったりする。それにオーダーメイドならばなおのことこだわりを入れておきたいのだ。
シオンとギルバートは行く発言に驚いた様子だったが、思ったままを説明すると納得したようだった。
服飾はまあー俺が来れるような服が大概は揃えられるらしく今から持たせてくれるらしい。
そんなすぐに用意できるもんかと訝しむも、数分たった頃合うにずらっと着替えが運びこまれた。
さてー最初の一歩は服選びへと専念しますか。
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服選びをすること数分、やっとシンプルなのが見つかった。もっと来てくれた服はどれも男性服なのに何処かフリルあったりデザインがこうーー昔のやつで古風な感じだったのだ。
その中でワイシャツにパンツのツートップにカーディガンもあったしシンプルでファンタジーあるものもキープを何着かキープしておいた。
「今回はこれでいいや、さて警棒作りたいから今から城下町いけねー?」
「「は?!」」
服決まったらどうにも横にあるはずのモノがないと落ち着かない訳で。
ギルバートとシオンはお互いにどうするかとコソコソ話して聞こえずにいたが、決心したのか俺の方に向くとニマリと悪い表情を浮かべていた。