夢現な思い出
思い出すは俺が仕事で失敗したことだった、まさかの判断ミスが起こるとは思っていなかったからだ。
両手で顔を塞ぎ凹んでると肩にポンと置かれて、そちらを向けば上司の速瀬が立っていた。
「速瀬かよ、なんだ...笑いにきたのかー?」
上司でありエリートの部類に入っているぶん部下には気を利かせるんだろうと他の同僚たちは言っていたが、こいつはエリートのくせに変わっているところが多かった。
ビシッとしたスーツに髪などセットしてザ・秀才って感じなのに喋ると気に入った奴にだけには緩くてニカっと人の良い笑みを浮かべ人に好かれる雰囲気を醸し出し、勘も鋭さもある尊敬できる性格なのだ。
「ははは、お前なりにの判断でここまで大事になるのは面白かったぞ!」
「.......マジで笑いに来やがったんなら帰れ!!」
「そこまで落ち込むとはらしくないな、ほれー俺に似てる性格の癖に立ち直る気概みせねえと部下はついて行かねえぞ!」
「殴るぞ!」
「いやん、白夜がごらいしんやー。」
「......ほんとほっとけよ、まじで。」
冗談でからかってきてるぶんは理解しているが、付き合うほど疲労感は半端ない状態の俺の凹み具合に速瀬はやれやれって感じで頭を掻くと俺の首根っこを摘むなり引っ張ってきやがった。
なにしやがる! と呻くも無視し引きずること数秒、わるーい笑みを浮かべるようにニタリと口角をあげて飲むぞ白夜!! と叫ばれる!
はい? と呆れる俺を他所に掴む力を緩めたあと互いに向き合えば、速瀬は行くよなって上司命令のようにつげる。
拒否権なしのポーズに強引さと速瀬なりの優しさであることは理解しているぶん頷いておいた。
場所はゴブロクの一吾の居酒屋、気の良いおやっさんがいる場所。焼き鳥や料理も抜群で酒の種類も豊富なのだ。
ここは速瀬のおかげで行きつけになったんだよな。
だから今回も同じ店で個室に連れってもらうなり愚痴を聞いてもらい、何故に失敗したのかのアドバイスをもらったりしていた。
なぜにここにという疑問があって聞いたときは速瀬もほろ酔いになっていて、俺が失敗したと聞いたとき裏では己れの判断も同じだったらしく、承諾した自分自身が許せなかったことや、ヘタすると俺にも危害があったこともあって様子を見に来たら凹み落ち込んでいたことが変にグサっときたらしく。
詫び込みと俺を励ましておきたいと告げられた。
酒の力で言うのは反則だが、この人らしさに苦笑したものの嬉しかったことは覚えていた。
そこ時に思いっきり唐揚げ出たっけなあ。
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楽しい時間はあっという間と誰しもが言うが目が覚めて背筋を伸ばすとテーブルに突っ伏しているシオンとアオイがいて、ギルバートは新しい酒でもあけていたのかコクコクと美味しそうに飲んでいる。
周囲には飲んだ空のコップがあり、空になっている酒のワインが3本に何処にあったのか焼酎やビールかが数本あった。
外は結構明るくなっているし朝か昼かとぼんやりしいてるとギルバートが俺に気づきコップをくるっと回している姿が日の光にあたると美丈夫が映える。
「相変わらず酒強いなーお前。」
くそモテるなーコイツとか思って嫌味ったらしく言ったのだが、クククと艶やかに笑いつつコクンと酒を飲むなり。
「そうーですか? これでも酔ってんですよーー僕は。」
ふふふと笑うがどこまで酔ってんだがと思ってしまう。
こいつと飲み比べで勝負したが勝った覚えがないのだ。
大概は俺が潰れて寝かしつけられてたっけ、ほんと良いやつと思ったがいつか勝ちたいもんだな。
「そかそか、目覚めにお前が楽しげでなんか和むよー俺は。」
「は? なんですかーそれーー。」
「ははーちょい昔の夢みててな。それよりもこの2人大丈夫か?」
「あーーそうですね。このままじゃ辺りの周囲にこんな姿見せられない立場ですし、俺が運んで起きますよ。」
「2人を運ぶのか? きつくないか、寝てる人間ほど思うぞ!」
「大丈夫ですよ、身体強化あるんで。それよりも白夜さん。」
「ん? なんだ?」
「お酒飲むときは基本我々と飲んでくださいって約束してくれませんか?」
は? なんでと聞くと妙に言いにくい感じで照れてるし、何処か困ってるような複雑な表情を浮かべられる。
俺ってそんなに酒癖悪かったのか?
「うーむ、俺的にはみんなでワチャワチャ好きなのだが、まあーそこまで今んとこ知り合いいねーし、お前らと飲むの楽しいからな。」
「いや、そうじゃなくて...ですね。」
「ん? 言葉濁すほど酒癖悪のかー俺?!」
「......いや、そうではなくて。」
ゴニョゴニョはっきりしないギルバートにクエッションマークしか浮かばない俺に時間差かタイミングかコンコンとドアを叩く音がして向けば、熊が気まずいのか苦笑している姿があった。
ギルバートは熊の出現にどこか安堵しつつも、急になんのようだと言わんばかりに睨んでいる。熊はやれやれって感じで髪を掻きつつも俺らの近くにくる。
「ギルバート、オレなりには気を利かせてたんだからな。」
「ふん、どうだが。」
「なんでギルバートは不機嫌なんだ?」
「...おまえが原因だからじゃねえか。」
「意味わからん。あ、そういえば料理はどうなったんだ?」
意味わからんなら聞く必要もないし、熊みて思い出したことを質問したらギルバートが思いっきりため息をつかれる。うーむ、シオンとアオイにも後で酒癖悪かったのか聞いておくか。
改善しておかないと他のやつと飲むことあったときに困るもんな。うんうん。
「......気の毒なやつ。」
「グランさん後で話しましょうね。」
「いやー遠慮しておく。」
俺が1人納得している間に思いっきり静かな牽制があったのは気づかず、料理での今後が決まったと教えてくれた。
レシピでの開示は今のところ城の中での料理研究にて決まったこと。
俺がつくっておきたい料理があれば熊に必ず提案し、一緒に作ること。
欲しい材料などや調味料などの詳しい情報も相談にのってくれるらしい。
よっしゃーーとガッツポーズが出て熊に喜んで笑いかけると何故かデコピンされる。
「なんだよ、痛えな!」
「おまえさあーー本気で笑うとやばいから笑うな。」
「はあーーなんだよーーそれ! 普段の笑顔が悪いみてえじゃんか!」
「......白夜って鈍い通りこして天然か?」
熊自身の髪を掻きながら言われたときに速瀬や同僚にも同じふうに言われたなあーと思い出した。
「普段の白夜さんの笑顔悪巧み気味なんですよ。」
「えーーそれ失礼じゃね! まあー仕事の癖だからなあーーー。」
「だから本気で笑うと可愛いんですけど。(小声)」
「ん? なんか言ったか?」
「言ってませんよ、さあー僕はシオンとアオイ連れて行きますんでグランさんは白夜さんをよろしくお願いします。」
そそくさとアオイとシオンを担ぎ上げて部屋を厨房を出るギルバートになーんか誤魔化してる気がするも、熊をみれば苦笑していた。