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聖女という名の魔女達  作者: 星降る夜
第3章 真実のかけら

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31 静かな違和感


 なんだか最近、少しだけ様子がおかしい。

 気のせいだと思いたいけれど、そうでもなさそうで。


 アルゴ神殿の治療棟に勤める神官。その名をサイラスといった。


 辺境の地で育った彼は7歳の時に受けた魔力鑑定で治療魔法の才能がありと認められ、この神殿に入り、すでに30年になろうとしていた。


 最初の異変は3年ほど前だったと記憶している。


 特に名の知れた神殿でもなかったのが急に注目され始めたのだ。それは聖水の威力だった。最初はたまたま、他で治療できない患者が運び込まれてからだったと思う。その患者が高名な貴族の子息だったこともあり、多額の寄付を受けた。


 そのころから神殿長の様子がおかしくなってきた。今までとは違い、身分のありそうな者が運び込まれると率先してみるように言われた。


 それでも聖水のおかげで、治療に支障は起こさなかった。みるみる回復していくから治療自体がとても楽だったのだ。


 ここ最近の水がおかしい。どこか濁ったようになっているのだ。聖女のアマリ様もこれでは聖水を作れないと嘆いていらっしゃった。


 神殿長は、まるで最初からそれを知っていたかのように、聞く耳を持たなかった。


 もう、神殿長には何度も伝えた。今までのように治療することは出来ないと……。


 窓の外に目をやった。輝きを失ってから、もう数ヵ月はたつだろうか……。


 中庭から輝きが失われた。

 いや――3年前の、何もなかった頃に戻っただけだ。

 

 我々は何か大切なものを失ったのだろう。知らないうちに……。



    ♢      ♢      ♢    



 ふぅ~~っ。大きくため息をついた。


 「ココ?どうした?」

 「う~ん。なんだか夢見が悪くて。でも覚えていないんだ」


 ただ、喉の奥が焦げ臭いような、真っ赤な夕焼けに追いかけられるような、ひどく悲しい残像だけがこびりついている。


 「それは、運動不足だな。ふらふらになるまで動けば、バタン、キューだ」


 フェルに言われてみればそうかも。お屋敷に来てからは贅沢三昧だ。


 そっかぁ、運動不足なんだ。


 そう考えると神殿が懐かしくなる。クロエ元気かな?


 フェルの家は神殿の近くにあるんだろうか?


 「ねぇ、フェル。お家はどこにあるの?」


 私が聞くといつもお日様が昇る方を指さした。


 「あっちかな」


 向こうはアルゴ神殿のある方じゃないかしら……。


 「アルゴ神殿って知ってる?」

 「ああ、有名だな」

 「私ね、前にそこにいたんだけど、お友達がいるの、ちょっと見に行くぐらい平気よね?」


 そうよ急にバタバタと出てきてしまったから、きっと心配しているかも。

 そうと思えばますます気になってきた。


 「あそこは……、あまり雰囲気が良くなかった。行くのは勧められないな」


 そうフェルは言うと考え込むように東の空を眺める。


 フェルの家まで行くのは無理だけど、アルゴ神殿までなら何とかならないかしら?


 それに、雰囲気が良くない?前はそんなことはなかった。


 それを聞けばますます行って確かめたくなるわ。


 「フェルが帰るときにポプリとポプリの水をたくさんあげるわ!だから、ちょっとだけでいいの行ってみたい。」


 フェルの眉毛が片方だけ上がる。器用ね、私にはできないけど。もう一押しかしら。


 「本当にくれるか?」

 「もちろんよ!」

 「領主さまの許可が出なくても?」

 「大丈夫! まかせて」


 なんせ、私が作っているんだから、どうにでもなるのよ。


 ――現代風に言えば、成分はただの水。


 おまじないの水(ポプリの水)なんて、そこいら辺の水さえあればいいんだから!


 私はぶんぶんとうなずいた。


 ここでは徒歩か馬に乗れないとどこにも行けない。徒歩はさすがに遠すぎるし、馬車は出してもらうわけにはいかないもの。バルドゥが絶対にダメって言うわ。


 私たちは次の日の早朝に出ることにした。


 馬が疲れなければ夕方には着くというから、飲み水には前日からおまじないをこっそりとかけておく。


 用意周到なのよ。私はね!


 バルドゥが探すかもしれないけど、その日のうちに帰ってくれば問題ないわ。ディーン様たちはまだ帰ってこられてないものね。


 書置きだけはしたためておいた。


 『今日中に帰ります。探さないでください。ココより』


 ってね!


 抜かりはないわ。


 いつも読んでくださりありがとうございます。次回は来週土曜日に投稿予定です。


 本日0話プロローグを入れました。ぜひ読んでみてください。

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