表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女という名の魔女達  作者: 星降る夜
第3章 真実のかけら

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/40

30 王子と丁稚奉公


 王都が騒がしい頃、

 お屋敷には思いがけない“客人”がやって来る。


 バルドゥが馬に乗せてくれてお屋敷まで帰ることになった。


 明日からはランツを手伝いによこすらしい。

 バルドゥも、いろいろ大変ね。

 

 私たちがおばあさんのところを出ると後ろから騎士が追いかけてきた。


 おばあさんがお気に入りになったあの騎士だ。短く刈った金髪が精悍な顔を際立たせていた。


 「お待ちください!」


 大きな声で叫んでいる。どうしたんだろう?


 バルドゥが馬の歩みを緩めた。


 「何か?」


 さっきまでむせび泣いていた人とは思えないほど、落ち着き払って声をかけた。


 そうだよね。バルドゥは一応、騎士団の副団長なんだもの。


 ちょっとだけ見直しして尊敬のまなざしを送る。


 「あの、何でもします。雇ってください」


 その目は、逃げ場を失った人みたいに必死だった。


 いきなり雇ってくださいって、何かわけがあるのかしら……


 「はぁ……しかし、団長がいないので騎士団は無理ですな」


 けんもほろろに言う。


 「力仕事に庭仕事、何でもします」


 必死なその様子に私は少し同情してしまう。もしかしたら、この人も私と同じで行くところがないんだわ。

 あの日の自分を思い出して、胸が少し痛くなる。


 「ねぇ、バルドゥ。私、助手が欲しかったの。ダメかしら?」

 「ココ様の?それなら自分が……」


 私はぶんぶんと首を振った。副団長に庭仕事させていたら、見た目も悪いし、クロード様に見つかったら、何を言われるか分かったものじゃない。説教部屋行は確実だ。


 「さすがに、だめでしょ!今みんないないし」

 「いや、しかし、得体のしれない輩をココ様のおそばには……」

 「大丈夫よ。おばあさんが惚れた人だから、悪い人じゃないわ」


 騎士は驚いたように目を瞬かせ、それから子犬みたいにぱっと笑った。その素直さに、胸の奥が少しだけ温かくなる。


 バルドゥはまだ納得していない顔で騎士をじろりと見た。


 「……本当に大丈夫なのですかな」


 その声が妙に低くて、私は思わず笑ってしまった。


 「フェリクスです。フェルと呼んでくだされば嬉しいです」


 そう言って笑う騎士は、見えないしっぽをブンブン振っているみたいだった。


 そんなこんなでフェルという名の彼は私の助手として、しばらく手伝ってくれることになった。


 「フェル、そこのお花をこの机に並べてね」


 私が頼むとすごく嬉しそうに笑う。まるで子犬がご主人様にボールを投げてもらうのを待っているみたいだ。


 フェルは金髪に真夏の空を思わせるような青い瞳をしていて、バルドゥに負けず劣らず背が高い。侍女たちが二度見しちゃうようなイケメンだ。


 なぜここで庭仕事を?なぜ私の手伝いを?そんな疑問がぶんぶん降ってくる。


 不似合いだよね……。やっぱり騎士団の方が似合いそうだ。


 クロード様が帰ってきたら掛け合ってあげよう。そっと心に決めた。


 最近はフェルが来たせいかバルドゥがやたらとお屋敷に顔を出す。


 「ディーン様たちがいない間は私に責任があります。」


 なんて言っているけど、どうやら私の作るおやつが目当てらしい。


 「団長たちはいつもこんなに美味しいものを召し上がっていらっしゃったのですね」


 感慨深げにため息をつく。


 えっと、ディーン様もクロード様もそんな風に言ってくれたことはないけど……


 そんなに喜んでもらえると本当にうれしい。バルドゥの隣でフェルも美味しそうにフルーツティーを飲んでいた。


 今日はレモンタルトにしたの。暑くなってきたからね!


 最近はバルドゥとフェルもすっかり打ち解けて、おやつを食べると2人で騎士団の練習に参加するようになった。


 フェルが意外にも強かったらしくて、しかも戦い方が洗練されていたそうだ。


 バルドゥの負けん気に火が付いたらしい。昨日はどっちが勝ったか嬉しそうに、私に報告してくる姿は、大型犬二匹飼っている気分だ。


 フェルはすっかり庭仕事も板について、私はお礼にポプリときれいな瓶に入ったポプリ入りのお水を一つあげた。私にできることはこれぐらいしかないものね。


 「ココ、これはすごくきれいですね」


 瞬間バルドゥがフェルの頭を小突く。


 「ココ様だ」


 慌ててバルドゥの手を押さえた。


 「いいのよバルドゥ。私が頼んだのだから」

 「しかし、ココ様には敬意を払うようにと団長が……」

 「バルドゥ。フェルは騎士団の人じゃないから」

 「ココ、私は君が望めば何とでも呼ぼう」

 「ココでいいわ、この話はおしまいね」


 もう、私の名前なんか、なんでもいいじゃない。


 「ところで、田舎の母が、ポプリが好きなんだが、お土産に少し買ってもいいだろうか?」

 「お土産に?もちろんいいわ。でも、もう、帰るの?寂しくなるわね」

 「ココ様、私がいます。毎日伺います」


 う~ん、バルドゥはおやつ食べたいだけだと思うけど……。

 ちゃんと、手伝ってくれるのかしら。

 いつでも親しくなった人がいなくなるのはさみしいわね。


 「ココ、もし良ければ家に遊びに来るといいよ」


 フェルの提案に嬉しくなった。


 「本当!お友達の家に遊びに行けるなんて、初めてだわ」


 私が飛び上がって喜んでいると隣でバルドゥがつぶやく。


 「団長のお許しが出たらですな」


 そうなのよね。


 クロード様はケチだから。この間もお祭りもほとんど見れなかったしね。


 がっかりだわ。私が肩を落としていると、フェルがささやいた。


 「すぐに行って帰ってくれば分からないよ」


 そう言って片眼をつむった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ