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聖女という名の魔女達  作者: 星降る夜
第3章 真実のかけら

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29 畑仕事と騎士と涙


 おばあさんの畑仕事を手伝いに来たココ。

 そこへ現れたのは、少し不器用で、どこか訳ありの騎士だった。


 おばあさんの家に行く途中で熊五郎ゴンはサッサといなくなった。


 ねっちこいうえにせっかちな性格らしい。嫁の来てはないだろうな、と勝手に想像する。


 おばあさんの家に着くと、早速畑にお邪魔した。今は初夏で丁度トウモロコシの収穫まっただ中。少しでも人手が欲しかったそうだ。


 自分の背より高いトウモロコシや、向こう側にあるトマトにキュウリ、なすと収穫のお手伝いを始めた。どれも新鮮な野菜ばかりで、綺麗なお水が守れて本当に良かった。


 こちらの領地に来てからは、お屋敷の庭ぐらいしか出ていなかったから、久々の重労働にすぐにへばってしまった。おばあさんが笑いながら木陰に休むところを作ってくれた。


 すみません、役立たずで……心の中で深く頭を下げた。


 「すみませ~ん!」


 向こうから立派な馬にまたがった、これまた立派な騎士がやって来る。見かけない騎士服にこの領地の人じゃないと思われた。


 お屋敷への道を聞きたいのかしら?私だと今ひとつ道がわからないかも知れないわ。


 その人は私の所まで真っ直ぐとやって来た。


 「ここの家の方ですか?」


 私は首を振る。


 「違います。この家の方は向こう側にいらっしゃる方々ですよ」


 そう言っておばあさんを指さした。


 「ありがとうございます。あなたは?」


 騎士は丁寧に私に挨拶をする。


 「私はお手伝いに来ただけですから……」


 騎士は怪訝な顔をして私を見たけど脇の木に馬を繋ぐと、すぐにおばあさんの方へと行ってしまった。


 名乗らないのは、何か事情があるのかしら。


 しばらく見ていると向こうでおばあさんと何やら話している。上着を脱いで腕まくりまでし始めた。どうやらお手伝いを頼まれたみたい。


 私はいつものようにお馬さんの様子を見てみる。木陰で草を食べる様子はどことなしか疲れているみたいだった。


 きっと、長旅だったのよね。木の水桶に水を汲むと、いつものように”ちちんぷいぷい”とおまなじないをかけてあげた。


 お馬さんの耳がぴくりと動いて、騎士の方を眺めた。


 かしこいお馬さんね。知らない人からもらう物は用心してるのかしら。向こうから騎士の視線を感じた。


 お馬さんはしばらく水桶を嗅いだ後、嬉しそうにお水を飲み始めた。


 良かった。少しでも疲れが取れたら言うことないわ。


 木陰で眺めていると、騎士はおばあさんの畑仕事をせっせとお手伝いしていた。時々お馬さんが心配なのかこちらをチラチラと見ている。私は安心して良いよと言う意味を込めて、手を振って上げた。


 お手伝いにかり出されたはずなのに、騎士が現れたおかげで、すっかり出番はなくなってしまったわね。


 お馬さんにそっと話しかけた。人の話がわかるみたいに頷く。賢いんだわ。


 日が傾き始めた頃、街道を砂埃をあげてかけてくる一頭の馬が見えた。真っ赤な髪をなびかせて見覚えのある黒い騎士服は、バルドゥだ。


 「ココ様ぁ~~~!」


 バルドゥは真っ直ぐに私の所まで来ると跪く。


 げげげっ、何だか大袈裟なんだけど何があったの?


 「大丈夫?私で何か助けになるかしら……」


 「ココ様ぁ~~」


 そのまま腕で顔をぬぐいながら泣き出した。


 も、もしや、誰かに不幸が訪れたとか……


 「あの、誰か、に何かありましたか?」


 私が聞くと”違いますと”言いながら男泣きに泣く。一体何が……


 もしかして、女性に振られたとか?バルドゥならありそうだ。一途ぽいし。


 「元気出して下さい。またきっといい人が現れますよ」


 「ち、違います。うちのランツがココ様に失礼をしました」


 そう言ってむせび泣く。


 このパターン、前世だと死んでお詫びしますって言う流れだわ……いやなんだけど、死人は。殺傷沙汰は避けたいのよ。


 「あの、バルドゥ。ランツには明日からこちらでお手伝いをしてもらうのはどうかしら」


 私がおずおずというと、バルドゥはその瞬間、ピタッと泣き止んだ。


 今、泣いた烏がもう笑った。みたいな感じだぞ。嘘泣きだったのか?


 どうしたのかと、様子を見ていたおばあさんが、騎士の方に近寄る。


 「何やしらんけど、ここにいい男がおるけ、もういらんがな」


 そう言うと、おばあさんは、昼間尋ねてきた立派な騎士の腕を取った。


 騎士は困ったように視線を彷徨わせていた。焦った顔の騎士の顔がおかしい。


 年甲斐もなくちょっと赤い顔をして、騎士の顔を見上げるおばあさんは可愛かった。”おりゃ、1人もんじゃ”なんて呟いている。


 ありゃ、これは惚れたね!


 思わず、吹き出してしまった。



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