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聖女という名の魔女達  作者: 星降る夜
第3章 真実のかけら

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28 澄んだ水と黒い石


 水が濁る原因を探しに、高原へ向かったココ。

 そこで彼女は、澄んだ水と――ひとつの「黒い石」に出会う。

 その石は、ただの石ではなかった。


 「嬢ちゃんはお屋敷にいるのかい?」

 「そうなの、お世話になっています」

 「お貴族様なんだねぇ」


 私はおばあさんの言葉にブンブンと首を振った。


 「違います。下働きです」

 「はりゃぁ~、お屋敷では下働きも綺麗な洋服を着ちょるんじゃな。あれ、まぁ~~」


 そう言うとおばあさんはしげしげと私の洋服を眺めたりつまんだりしていた。


 確かに神殿にいた頃に来ていた、グレーのお仕着せとは随分違う。今日来ているのは、初夏の空を思わせる水色のしっかりした生地だ。所々に銀色の糸で縁取りまでされていた。


 ディーン様の用意してくれたものだ。趣味が良いのよね。

いつの間にか部屋に置かれていたから、誰かのお下がりかと思っていたけれど……やっぱり不思議。


 「あの……この服じゃ、邪魔ですか?」

 「いんや、そげんこたぁないが、汚れちまうかもなぁ。まぁ、ばばぁの前掛けばぁ、かしちょうるけん気にするでねぇ」


 しばらく行くと王都の街から外れた高原に出る。はるか向こうに見えるのは街道かしら?その向こうはきっと魔の森ね。


 魔の森は瘴気が強くて、瘴気を好む魔獣達が多いという。その昔にあった大きな争いの時に生まれた負のエネルギーがたまり瘴気となしていくと神殿の書物に書いてあったわ。


 古い物は、負のエネルギーにまみれているか、光に満たされているか、あるいは無に帰している――そんな話だった。

 

 「おばあ、大変だ。また水が濁りだした」


 向こうからクワを片手にこちらへ走ってくる人がみえる。熊みたいに体格のいいひげもじゃのおじさんだ。


 「おんめぇのとこもだが?うちは昨日からにごっちょるだよ」

 「おばあ、このまんまだと、夏は越せねぇ」

 「領主様に報告せんと、いけんなぁ」


 領主様?ディーン様に報告するぐらいの事なのかしら。今は王都にいらしているし……何顔役に立てると良いんだけどなぁ。


 「おばあさま。私が少しでもお役に立てるかも知れません。ディーン様直伝のなにかがあるかも知れないので」


 直伝の何かは、実はないけど、こう言えばなんか箔が付くような気がした。

 

 それに、水の濁りの原因を突き止めないと……ディーン様にも迷惑がかかるし。


 「はっ、おばあ、こいつぁ、誰だ?こんな細っこいんじゃ、クワも持てないだろうぜ」


 確かにクワは持ったことがない。でもほうきは持てるしね。


 「クワだけが役に立つとは限らないわ。この間まで神殿にいたから水には詳しいの」

 「神殿?まさか、アルゴ神殿じゃないだろうな?」


 ぐっ、あたっているけど、そうだというと何だかまずい気がした。


 「遠からず近からず、ってところかしら」

 「はっ、あそこは有名だからな。嘘だぜ、おばあ、騙されるなよ」

 「そげん事より、水源ばぁ見にいかなぁいけんば。ゴンこのまま行くべ」

 「がってん」


 熊みたいなひげもじゃのおじさんだ。私は心の中で熊五郎と呼ぶことにした。本人はゴンらしい。


 そう言うと熊五郎は(ゴン)荷馬車をおばあさんから奪うと、ビシバシと勢いよく馬に鞭を入れた。馬は一泣きすると走り出す。勢いが良くて私は後ろにひっくり返った。


 「しっかり、つかまっちょれ!」


 おばあさんの叱責がとんだ。


 ひょえっ、この荷車ガタガタ言って分解しそうなんだけど大丈夫なのーーー


 山の方に向かっているのかしら……必死に荷台にしがみついていた。つく頃にはジェットコースターに乗った後みたいにプルプルしていた。


 「お前さん、生まれたての馬みたいだべぇ」


 そう言うと熊五郎ゴンとおばあさんに笑われた。良いんだけどね歩きにくいのよ!街道沿いに荷車を止めると脇へ降りていく。私はプルプルしながら必死に付いていった。


 草木の多い茂ったところを行くと岩場に出る。小さな滝があって、その横に水がしみ出ているような水たまりがあった。


 熊五郎ゴンとおばあさんが、その中に手をやったりして何かを確かめているようだった。その後滝の方へ行ったので、私は水たまりを覗いてみる。


 中を覗くと底の方からポコポコと水が湧いてきている様子が見えた。

 心なしかあまり透明度は高くないように見えた。この事なんだろうか?


 向こうでおばあさんと熊五郎ゴンが話をしていた。このぐらいなら、おまじないでなんとかなりそうよね。


 おまじないを唱えて、手をかざす。キラキラと光が舞って水の中に吸い込まれていった。


 いっきに透明度が高くなり底には綺麗な丸い石が転がっているのが見えた。その中の一つが黒くてつやつやした綺麗な石で目を引いた。


 1個ぐらいもらっても良いかしら……記念にね。

 なぜか、その石から目が離せなかった。


 そっと手を伸ばして取ると水は冷たくて思わず声が出た。

 石だけが、なぜかほんのり温かかった。


 「ひゃっ!」

 「おい、どうした」


 熊五郎ゴンが急いでこちらに駆け寄ってきた。


 「あっ、お水が冷たかったから」


 私は手に握った石を隠すようにスカートの後ろに持って行く。


 「冷たい?さっきは生ぬるかったぞ」


 熊五郎ゴンは慌てたように水たまりを覗き込んだ。


 「おばあ!来て見ろ。目の錯覚か?水が澄んでいる」

 

 おばあさんもこちらに来て水たまりを覗き込む。

 目をしばしばしてから、何度も手の甲で目をこすっていた。


 「年のせいかね、さっきはよう見えなかったんじゃろう」

 「いや、俺が見間違えるはずはないが……」

 「誰でも見間違うことはあるじゃろ」


 熊五郎ゴンはいつまでも”変だぞ”なんてぶつぶつ言っていた。


 どうやらねちっこい性格らしい。


 近づかないでおこう。ねちっこいのは嫌い。


 私はスカートのポケットに入れた石を確かめるようにそっと撫でた。


 不思議なことに、手のひらが少し温かい気がした。





 いつも読んで頂きありがとうございます。

 次回は来週土曜日に更新します。

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