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聖女という名の魔女達  作者: 星降る夜
第3章 真実のかけら

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25 金貨一枚と、香りの行方


 香りに導かれ、隣国の王子は辺境を後にする。

 金貨一枚で渡ったそれが、何をもたらすのか──まだ誰も知らない。


 「殿下、さすがにもう帰らないと、怒られます」

 「わかってるって」


 従者ジルの言葉を無視して、そのまま祭り会場を眺めた。ここは少し小高い丘になっているから、街並がよく見えた。


 さっきの子はこのポプリと同じ香りがした。あの子もポプリを持っていたんだろうか?聞きたかったな。


 忌々しげに口元をゆがめた。


 あれはクロード、エルガード公爵。

 今は従兄弟でもある第三王子にその身分を譲っている男だ。


 しかし、本来ならば彼がこの土地を治めていただろう。辺境の勇者とたたえられた公爵を祖父に持ち、確かその娘が王家に嫁に行ったはずだった。


 現第三王子の従兄弟、面識もなく、会うこともあるまいと思っていたが……気が付かれたか?


 いずれにしろ、母上(王妃様)から賜った役目は終えた。後は帰るのみだな。あの少女……良い香りがした。心が洗われるような……


 何れまた会えるだろう。


 「ジル、帰国だ。皆にも通達しておけ」


 我が国セリウス王国では、近年奇病がはやりだした。病自体は風邪と変わらないのだが、後遺症が出る。病が治ってから2~3ヶ月もしてから現れるので、最初は気が付くのが遅くなり、ただのストレスと言われていたのだ。


 悪夢にうなされるようになり。段々と寝るのが怖くなる。睡眠を取らないと食欲や気力が落ちていき、幻覚症状や幻聴症状まで出だすのだ。


 たまたま、隣国にて聖水を手に入れた者が聖水を持ち帰り、ただの気の病と思われていたその病がみるみる改善されたのだ。


 ここの所陛下に不眠が続いていた。心配された王妃様が密かに私を呼び、聖水を持ち帰るように依頼してきた。


 当初簡単に思われたその依頼が、突然の聖水販売禁止。どうなっているのかと、有名なアルゴ神殿まで足を運んだところだった。


 アルゴ神殿では、けんもほろろに追い返されて、何となく、引き寄せられるようにこの領地までやって来たというわけだ。


 昔から妙に鼻だけは利く。勘というより、本当に“匂い”で道が分かるのだ。


 皆半信半疑のようだったが……


 ”だいたい、こっちの方が匂うって……?犬じゃあるまいし”とジルに言われるが、説明のしようがない。


 良いじゃないか。取りあえず。『馬の水』なるものと、グッスリ眠れるって言うポプリを手に入れたのだから。


 母上は父上の不眠を心配されていたのだ。バッチリではないか。


 何の問題も無い。ジルが言わなければ『馬の水』だなんてわからない。何なら聖水の空き瓶に詰め替えれば良いだけだからな。

 

 ポプリを嗅げばリラックスした気分になるさ。


 全くもって、問題は無い。


 馬の水か……ちょっとばかり馬になめさせてみた。特に何の変化も無いと思った。


 「殿下~~~~!!!飛ばすのやめて下さい!!!」


 後ろからジル達の声が聞こえて来る。飛ばすつもりはないんだが……


 どうやら“馬の水”には、妙に体力がみなぎる効果があるのか?


 木陰に止めて休んでいるとしばらくして、やっと追いついてきたジル以下総勢八名。精鋭揃いのはずなんだが。


 「殿下、飛ばしすぎです。馬が可哀想です」


 ヒィヒィ言いながらジル達に責められた。


 「そ、そうかぁ?飛ばしたつもりはないんだが……」


 もしかしたらと思いながら手の平に馬の水を振りかけて他の馬たちにもなめさせた。


 後から考えるともったいない事をした。


 母上にこっぴどくしかられたが、馬の水だろ?馬に使うものだと思ったんだ。


 何が悪い。

 

 旅は順調につつがなく、いや、あっと言う間に帰国した。


 ふむ、馬の水は凄いな。こんなに早く着くなら、もう少し遊んでくるんだったな。


 脳裏には良い香りの少女が浮かんだ。妖精がいたらあんな感じなのかな、頬の筋肉が緩む。


 「殿下にやけるのはやめて下さい。まさかと思いますが、もっと寄り道すれば良かったなんて思っていないでしょうね」


 ジルめ、人の心を見透かしたようなことを言うの早めて欲しいな。


 「まさか、急いで帰りたかったんだ」

 「どちらにしろ、ルミナリア王国にはまた行かないとですね」


 お、そうなのか?うれしさを隠しつつ答える。


 「何かあるのか?」

 「第一王子の婚約式があるみたいですよ。さっき招待状が届いていました」


 第一王子?確か第二王子じゃなかったか?腕を組んで考えているとすかさずジルが言ってくる。


 「何か色々あったみたいですよ」


 色々?まあ、後でゆっくり聞かせてもらうか。

 リアン第二王子とは留学していたときの顔なじみだからな。


 顔を出さないわけにもいかないな。リアンには世話になったし、女の趣味は合わなかったな。


 やたらときつい香りのする女がリアンに張り付いていて、まいったな。あれは何だったんだ?他に婚約者がいると聞いていたのだが……


 「殿下~~~~!!!王妃様がお待ちかねです」


 向こうから宰相が駆けてくるのが見えた。


 やれやれ、自由な時間は終わりだな。気を引き締めて母上の元に向かう。


 何時まで経っても母上の中ではできの悪い次男坊だ。


 子供扱いは終わりにしてほしいものだ。




 新しく

 **「かぼちゃのパンツはもういらない」**を投稿しました。

 10話読みきりです。


 まだ読んでいない方も、

 よろしければぜひ覗いてみてください。


 今年も残すところ後わずかとなりました。

 いつも読んで頂き本当にありがとうございました。皆様良いお年をお迎えください。


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