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聖女という名の魔女達  作者: 星降る夜
第3章 真実のかけら

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22 おまじないの水とポプリ


 のんびりした領地で、今日もココは良いことを思いつく。

 それが、思わぬ波紋を広げていくとも知らずにーー。


 翌朝、庭で草木に水をやっていると、ローレンツが手押し車に木箱を積んで運んでいるのが見えた。


 あれ?どこへ行くんだろう、何を運んでいるのかしら?


 手を振るとローレンツは嬉しそうな顔をして、こちらの方へやって来た。

 ローレンツの額には見慣れない汗が浮いていた。


 朝からそんなに走ったの?


 私は興味津々で木箱の中を覗く。

 木箱の中にはビッシリと水の入った小瓶が並んでいた。


 あ、もしかして昨日のお水かしら……


 「ココ様、丁度良かった。クロード様がこれにおまじないをと言っていて……何のことだかわかりますか?」


 ローレンツは怪訝そうな顔をして、聞いてきた。


 「昨日のお水はどうしたの?」


 やっぱりお馬さんに悪いと思って、お馬さんに戻したのかしら?


 「あ、あれはもう配り終えました。まだ足りないのと予備の分です」

 「あ、そうなのね。ちょっと待ってね」


 私は、おまじないは得意なのよ。

 ちょっと自慢げに腕まくりをする。

 それから人差し指を立ててローレンツの前に差し出した。


 「いい、よく見ててね」


 ローレンツは何が始まるのかと、期待に胸を膨らませている……と、思う。


 人差し指を空中で、くるくるっとまわした。それからいつものおまじないを唱える”ちちんぷいぷい”そして、えいっと指で木箱を指した。これでおしまい。


 どうだとばかりにローレンツを見るけど、木箱に目をやったままこちらを見ない。


 んっ?終わったんだけど。


 「ローレンツ、かけたわよ。おまじない」


 ……静寂。

 ローレンツは木箱と私を交互に三回見てから言った。


 「……あの、終わりですか?」


 私は力強く頷く。何か問題でもあるかしら?


 ローレンツは何か首を傾げたままだ。

 さっきと何の違いもないけどなぁ~~などとぶつぶつ小声で呟いているのが聞こえる。


 私、地獄耳なんだから、失礼ね!


 でも香水を入れるみたいなちいさくて綺麗な瓶。

 物足りないのもわからないでもない。


 そうだわ!


 私は両手をパンッと打つと良いことを思いついた。


 「ローレンツ、実はね、最後の仕上げがあるの。ちょっと待っていてね」


 私は、庭の隅で作っていた、小花のポプリを手に取るとローレンツに渡す。


 「これは……入れるのですか?」

 「可愛いでしょ? お水って見た目も大事なのよ」

 「……は、はあ……(そういうものなのか?)」

 「いい、見ててね」


 そう言うと瓶を1つ取って蓋を取り、中にポプリの花びらを落とした。

 ピンクや薄紫のポプリが水に映えて綺麗だ。


 「こんな風に、ポプリを入れてね。色は揃えた方が良いのよ。黄色は黄色だけとかね」


 そう言って、二人で瓶にポプリを入れていった。


 ローレンツはこれは綺麗ですね。と言いながらご機嫌で手押し車を押して戻っていった。


 ふふふ……今日は、朝から良いことをした気分。


 何か良いことがありそうな気分だわ……


    ♢   ♢   ♢


 数日後。一仕事終えてのんびり昼を食べていると、侍女達がひそひそ話していた。


 「クロード様とディーン様、今日は随分早くお戻りね」


 え、もう帰ってきたの?

 まだ昼よ?


 何かあったのかしら……と思いつつ、私は今日のおやつをどうしようか考えていた。


 その時、侍女が私を呼びに来る。


 「クロード様がお呼びです」


 あら、やっぱり何かあったのね。

 もしかして、この間のポプリ入りのお水のことかもしれない。

 ついに、褒めてもらえるのかしら……!?


 スキップしそうな気持ちを抑えながら、執務室の扉をノックする。


 部屋に入ると、机の上には色とりどりのポプリ入りの水が並び、光を受けてキラキラと輝いていた。


 やっぱり綺麗!ポプリを入れて正解だったわ。


 ディーン様は書類から顔を上げ、クロード様はソファーから立ち上がる。


 「ココ、こちらにかけてくれ」


 促されて座ると、クロード様が正面、ディーン様が横に座り……なんだか面接みたいな雰囲気になった。


 えっ、今さら面接?

 もうここに来て二ヶ月は経っているのに。


 「悪いね。今まで君のことをちゃんと聞いてこなかった。生い立ちや神殿でのこと、仕事内容を教えてくれるか?」


 ディーン様の優しい声に、ああそう言えば……と思った。

 私は突然“身請け”されて、この領地でふわふわ過ごしていただけだもの。


 孤児院で育ったこと。

 鑑定も受けず神殿に入ったこと。

 下働きの内容。

 そして神殿で読んだ本のことを話すと、ディーン様は特に本の話に興味津々だった。


 (本好き仲間だわ……ふふ。図書室、期待できそう!)


 「君は魔力測定を受けていないな」


 クロード様の問いに頷く。


 「君は魔法を使える。違うか?」


 え……どうなのかしら?

 治療魔法は使えないし、何かを動かしたり壊したりもできない。

 でも、前世の知識を使って色々やっているのは確か。


 私は首を傾げた。




 いつも読んで頂きありがとうございます。

 ※少しだけお知らせ

 年末に向けて、短い完結作品を一本予定しています。

 詳細はまた近くなったら。

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