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ある実験  作者: 砂川
3/13

1~2日目 ――毛受武人①――

 宗助の寝耳に水の頼みを受けた後、毛受武人(たけと)はさっそくLaplaceで不破海音(かいん)に個別にメッセージを送った。


 しかし、反応がないどころか、既読表示にすらならない。


 財布は忘れてもスマホは絶対に手放さない典型的な今どきの大学生である海音には、あり得ない反応である。


 現実の世界ではおどおどして自信なさげであるのに、Laplaceでは多弁でムードメーカーの海音は、湯上谷教授の処分で悩んでいる時でさえ、積極的に愚痴だけは書き込んでいた。


 スマホが故障したのか、それとも失くしたのかと思い、その日は武人も特に不審には思わず、それ以上のアプローチはしないまま一日を終えた。



 開けて翌日――。



 その日は出席必須の講義を海音と共に取っていたため、スマホがどうにかなっていようが、顔を合わせるだろうと思っていた。


 けれど、その講義どころか、丸一日海音と学校で会うことはなかった。


 北海道に行っているのだから当たり前と言えば当たり前なのだが、それを知らない武人は次第に不安になっていく。


 彼が知っている情報は、湯上谷教授から伝えられた海音は気に病んでいる、というものだけだったのだから。



 武人は講義終了後、すぐにLaplaceのグループに海音の事を聞いた。


 現実で顔を合わせる友達もいたが、個別に話すよりこちらで聞いた方が効率的だと思ったのだ。


 それが湯上谷教授の狙い通りの行動であったとも知らずに。


 武人の書き込みに、はじめ友人達は冗談半分で茶化し、意味のない絵文字を返すだけだった。


 けれど武人の真剣さと、実際に見てきた最近の海音の様子から、次第に真剣な話になっていった。


 そして誰かが言った、


 "この際海音の家に行って確認してみよう"


 と。


 その提案に武人も含めた提案に多くが賛成したが、問題があった。


 誰も海音の家を知らないのである。


 グループには何十人もいるが、実際にお互いの家にまで遊びに行く関係を持っている人間はごくわずかで、海音に至ってはそれが誰もいなかった。


 Laplaceにおける陽気で社交的な海音の事は皆が知っていても、現実の内気で気弱な海音の事はほとんど知らなかったのだ。


 武人にしても、今回の件がなければ海音と話すこともなかった。


 それでも彼らは海音を()()()1()()()()思っていたのである。


 海音の家を知ろうにもまだ事件性もなく、肉親でもなければ大学当局も教えてはくれない。


 そもそも、このリーダーのいないグループでは誰もが口だけで、実際に計画を立て、行動を起こそうという人間はいなかった。


 結局いつものように口だけで心配し、次の話題によって何事もなかったかのようにこの話は終わる。


 武人を含む誰もがそう思い始めていたが、今回は1人、()()()()()()()行動力を持っている人間が、誰も想像しなかったことをした。


 それを後日、湯上谷教授は教授室で知ることになる――。


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