特命ファイル1;ヘイ⭐︎ボンド参上! 終
「よくやった」
「どういたしまして」
処分は下され、アリクイ部長は網走に出向となる。
アリクイは寒いの苦手だけど、大丈夫かな。
辞めずに済むのはニッポン企業の甘さだな。けど下手に逆噴射されて犯罪したり暴露されるより、生活保障して穏便に処理する方が良いかも知れない。最近のニュースを見てるとそう思う。
何でそいつを入れたと言われたら困るが、人間、いざって時じゃないと本性は分かんねえものさ。
それよりウサ子だ。
処分の結果は知らされてない。
ただ翌日から普段どおり仕事する様は、さすがジャパニーズサラリーマン、おっとウーマンか。ボンドがオレだと気付いてないので小言も相変わらずなものの、ツンデレと思えば可愛く見える。
しかし、彼女にも変化があったようだ。
数日後、真剣な表情でオレのとこにやってきた。
「課長、ちょっと良いですか」
「ああ、どうした?」
「個人的な相談なんですが、明日夕食をご一緒できませんか?」
? どういうことだ?
「分かった、ちょうど行きたい銀座のイタリアンがあったから予約しておくよ」
オレは上司らしく、平然と対応する。
「急なお願いなのに、ありがとうございます」
ウサ子はいつも通り礼儀正しくお辞儀して、席に戻る。
今までの態度から分かるように、オレに相談なんて無かった。
そもそも会社でオレを誘った女も居なかったな。
もしかしてバレた?
好きってコクられちゃう?
「かちょぉ〜、セックスしよ♡」
とかあるのか?
好みって言ってたしなあ。オレもまあ嫌いじゃない。
いや、まいったなあ、はは……
念のためホテルも予約しとくか。
さて当日。ちょっと寄るところがあると言うので、オレは先に店で待つ。
「すいません、ありがとうございます」
「お疲れさん」
やってきたウサ子は、心なしかさっきより輝いて見える。
シャンパンで乾杯しコース料理を堪能する。良いムードだ。
……
「今日はありがとうございます。それで話なのですが……」
きたっ!!
「ああ、そうだったね。何だい?」
「わたし、結婚します」
え???
「まだ付き合ってないのに?」
「え?」
驚いた顔でウサ子がこっちを見る。
きっとオレも素っ頓狂な顔だろう。
「あ、隠しててすいません。半年前から実家でお見合いしてたんです。良い人だったんで決めました」
「あ、いや、そーなのか。おめでとう!」
思いっきり勘違いしちまったじゃねえか!
あー、けど意外としっかりしてるな、こいつ。
マッチングアプリもアリクイ部長も、何だったんだ?
「それで……すいませんが今度の三月で辞めることにしました」
「そうか、分かった」
多分こっちがホントだな。
今回の件もあるし、それが一番無難だろう。
その後は会話も弾み、ディナーも終わる。当然お持ち帰りもなし。オレは新橋のガード下でおっさん達としこたま飲んでくだ巻いてから、家路に着く。
あ〜、島コーサクにはなんねえな。ま、頑張れよ。
そして四月。桜も花咲きやる気みなぎる季節になった。
「タイラ課長、新しく配属されたツバ子です。よろしくお願いします!」
今度は元気そうなツバメっ娘か。
さて、どうなることやら。
読んでくださり、ありがとうございます。一話完結なので完結設定にしましたが、いずれ再開する予定です。二話は『あやうしボンド! 強敵現る!』の予定ですがどうなるか分かりません。
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