特命ファイル1;ヘイ⭐︎ボンド参上! 6
「うわ、こんな硬いの初めて!! おいしぃ〜!!」
「この感触、すごい!!!」
「ペロペロちゅきぃい!! おいしい!!」
「もうだめ〜!! おかしくなっちゃうぅ!!!!!」
あのキリリとして男なんて知りませんて顔してたウサ子が、眼鏡をずらしルビー並みに目を真っ赤にしてよがり、至福の顔でヨダレを垂らしている。
耳ってあんなにそそり立つんだな。
オレなんか眼中にないと言った風で、自分の中に入り込んでいる。
所詮は仕事と割り切るものの、どこか複雑だ。
時々この稼業がやになっちまうぜ。
「……さいこうぅ、このニ ン ジ ン♡」
そう。今回も服は脱いでない。
ウサ子一人で勝手に悶えて人参を食ってるだけだ。
青森産の最高級品だから、ウサ子もイチコロってわけ。
運営が勘違いしたなら、あんた、心が汚れてるぜ。
(あ、マジでヤバかったら謝りますんで、連絡お願いします)
興奮しすぎてしばらく動けないウサ子。
ほんと、大人しくしてりゃ可愛いのにな。
フゥ、フゥ……
一時間ほど経ち、やっと戻ってきた。
だが目はまだ潤んでいる。
もう一本欲しそうなのを堪えてる顔だ。
「ありがとうございました」
「どういたしまして。それより、話の続きだが」
途端にウサ子の表情が変わる。
ヘナヘナとしおれた耳が分かりやすい。
悪いが、こっちも仕事なんでな。
「さっき、アリクイ部長から何か渡されたんじゃないか?」
「……はい、封筒を……」
カバンから取り出してきたのは、厳封された分厚い角2封筒だ。
ご丁寧に赤字で『絶対ヒミツ、見ちゃダメ』と書いてある。
ビンゴ。
「これ、何だか分かってる?」
「詳しくは知りません……でも悪いこととは薄々気付いてました……」
つまり、初犯じゃないってことか。
グスン、グスン……
「ごめんなさぁあい、すびまぁせぇえんんーー!!」
あーあ、泣いちゃった。
でも悲しいけどこれ、犯罪なのよね。
「この封筒をどこに?」
「明日の夜、晴海埠頭の五番倉庫に……お返しします、もうしませんから許してくださぁあいい!」
「いや、そのまま持って行ってくれ」
「え?」
意外そうな顔で、こちらを見上げる。
泣きはらしたウサ子を見るのは初めてだが、萌えるな。
「大丈夫、身の安全は保証する」
と言うわけで、敵をぶっ潰すことにする。
取り上げてあいつを処罰するだけでも良いんだが、ミツヨー電機にはヤバい奴がいると分からせないと、また同じ事が起きるからな。
やっとウサ子も泣き止んだ。
「そもそも君が何でこんなことを? 勤務態度は真面目で、仕事ぶりも優秀との評価だったのに」
「……上司がダメ課長でストレスたまっちゃって……マッチングアプリでいい彼氏見つけようと思ったら、アリクイ部長に会っちゃったんです。それで恥ずかしい写真を撮られてずるずると……」
え? それってもしかしてオレのせい?
「そ、その課長、本当はいい奴かもよ?」
「そうですかねぇ。ぶっちゃけ顔は好みですけど仕事してくれなくて……余計に腹立たしいんです」
まいったな、こりゃ……
それはともかく、アリクイ部長は救いようのないクズだな。
警察に捕まったら余罪がたんまり出てきそうだ。
そして夜の晴海埠頭の五番倉庫。
ウサ子はおずおずと、倉庫の前で待っている。
オレはちゃんと影に隠れて見張ってるぜ。
すると外車が一台やってきて、ウサ子の目の前に止まる。
車から、男が一人で出てきた。
よし、ヒーローの出番だ。
「待ちな!」
「だ、誰だっ!!」
オレの声に驚き、男はこっちをみた。
ふぅん、ブルドッグ獣人か。
「名乗るもんじゃねえが、ちとその書類に用があってな」
「なにぃ!! お前ら出てこい!!」
すると、倉庫の影からワラワラ野郎どもが湧いてきた。
あっちも見張ってたらしい。
仕方ねえ、ちょっと遊んでやるか。
読んでくださり、ありがとうございます。残り二話ですが、次回は早くても明日の夜になりそうです。
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