特命ファイル1;ヘイ⭐︎ボンド参上! 4
「はあぁあ、すごいぃいい! いいぃい!!」
「え、ちょっと、これダメぇぇえ! 変になるぅ〜!」
「もう、さいこーー!!」
「あぁあ〜 これ以上ダメ、壊れちゃう!! あっ、いやっ!!」
(こいつも好き者だな……)
ここは帝国ホテルの一室。
ミケネコ美はベッドで狂い、醜態を晒している。
お淑やかで上品な昼の顔は消え去り、欲望を貪欲に追い求める一人の女に堕していた。体力の限界まで求め尽くすようだ。頭じゃ分かっていても、止められないか。
……ふうぅ、ふうぅ……
ひと通りしゃぶり終えたネコ美は汗びっしょりで脱力し、ベッドの上で寝そべった。肩で息をし絶え絶えながら、何とか声を絞り出す。
「はぁ〜すごい……最高よ、このマ タ タ ビ♡」
「そりゃどうも」
所詮はネコ獣人。この快楽には抗えない。
念のためだが俺もあいつも服を着ている。
いたって健全な格好だ。
これで垢BANするならば、なろうの見識も疑われるぜ。
(あ、いや、ヤバかったら直しますんで早めにご一報ください)
「はぁ、はぁ……こんな凄いの持ってるなんて、あなた一体何者?」
どうやらオレとは気付いてないらしい。
「名前なんて意味ないさ。姫は姫だろ?」
「それもそうね。でも変、あなた人間なのに獣の臭いがする」
「姫に会うために、香水つけてきたのさ」
「あら、そう。ありがと」
満更でもないようだ。
「よく見ると、あなたの体も逞しいわね」
そう言いながらすりすりしてきて、オレの胸板を触ってきやがった。社内一美人の秘書に上目遣いでうっとり見つめられると、オレも少しドキドキしちまうな。
だがあんた、それはまずいぜ。
オレは冷静に話を変える。
「さっきのアリクイ、姫の彼氏か?」
「え? あのオヤジ? ぜーんぜん! たまたま会っただけよ。会社の部長だから無下にもできないし、ちょっと付き合っただけ」
「そうか」
「無視しても良かったけど、仕方なくよ、仕方なく。銀座は駄目ねぇ。知り合いにあっちゃう」
「どこの会社なんだい?」
「ナ イ シ ョ♡ あんなオヤジより、あなたの方が好みよ♡」
そう言われてもな……
普段あれほど無視してるオレと分かったら、何と思うやら。
だがあくまで任務だ。今は正体を明かせない。
少し経つとマタタビが切れてきたのか、もじもじとモノ欲しそうな顔をし始めた。こいつ、普段はツンとしてるのにこんな可愛げなとこもあるんだ。女って分かんねえな。
「ねぇ……また欲しくなっちゃったぁ」
「悪りぃな、姫。今日はアレしかねぇんだ。それに用事を思い出しちまった。オレは先に帰るから、シャワーでも浴びてゆっくりしな」
「え、待って! ライイン交換しよ?」
慌てふためくミケネコ美も可愛いな。
だが個人情報を簡単に渡すのは危険だよ、お姫様。
「生憎やってねぇんだ」
「じ、じゃあ名前ぐらい教えてよ? わたし、ミケネコ美」
おいおい、本名言うのかい。
「オレはボンド」
「ボンド?」
「ああ、ヘイ・ボンド」
「素敵な名前ね♡ ボンド、また会える?」
「運命の赤い糸次第さ、じゃあな、お姫様」
「待って!!」
ミケネコ美はベットから飛び出し、部屋を出ようとするオレに抱きつきキスをせがんできた。仕方ない、これぐらいはやっとくか。
着てますからね!