進発
「というわけで、本隊は4名となってしまったのであるが…」
「問題ないと思うよ?いや…思いますよ?」
「主はそのままで良い。なにか壁を感じるでな」
「はぁぃ!」
まぁ…成り行きと言うかなんというか…あのチンピラズが居なくなったので、人間関係的には問題ない?のだけれど、人数的な問題が少々。しかも、他の隊がすでに進発してかなりの距離が開いているから、追いかけなくてはいけない…。まぁ、大隊長もいるし、魔法と狙撃が得意な隊長殿もいるし、なんとかなるでしょ!
「ところで、なんで大隊長殿は、僕のことをヌシって呼ぶの?」
「ふむ…なんでであろうなぁ…ヌシは主と呼ぶのがしっくり来たのでな。マート。と呼び名を変えるであるか?」
「いや…なんかむず痒いからそのままで」
「うむ」
「ところで…「あのっさッ!」ん?あぁ!この間の…えっと…」
「自己紹介をしていなかったわね!あたしの名前は、レイル。この間はどーも!今回も遠目で見るだけで何もしてくれなかったし。でも、そんなことはどうでもいい。なんで、大隊長閣下にタメ口なの?あなたこそ上官への不敬罪で会議に上がるんじゃないの?」
「あぁ!そうだそうだ!この間、あの不貞上官に怒鳴られていたレイルさんね!さっき教えてもらったのに、もう忘れてた…ごめんごめん」
「あんた…トリ頭なの?つか、あたしの質問に答えて「れっレイルさん!」ん?なに隊長」
「こっ…このモゴっ」
『あんまり言ってほしくはないかなぁ…。貴女のことはよく知ってる。スノウ隊長。魔法の腕は、ピカイチ。とある人物に抜かされるまでは…ネ?だからさ。お願い。レイルさんには余計なことは言わないでほしいなぁ』
(コクコク)
「ぷはぁっ…。れっレイルさん…これ以上の詮索は…」
「なんですか?あたしはとぉっても気になるんですよ。確か名前は…「マートだよ。よろしくね?」そうそう!マート!なんでそんなに砕けた話し方なのよッ!」
「まぁ。レイル。私が許可しているのだ。なにか不満でもあるか?」
「いえ…。大隊長閣下がそう仰るのであれば、異論はありません」
「よろしい。では、我らも進発するとしよう。他の隊とはかなりの距離が開いたであろうからな」
「「はっ!」」
「はぁい!」
(なんで…あんなナヨナヨした色白が上官にタメ口を聞けるのよっ!それもあんな親しげに…。でも…大隊長に釘を刺されてしまったし…。あぁー!もう気になるぅ!)
なんというかさ。レイルさんって、心の名が賑やかだよね。ふふ。面白いからこのままにしてみようかな?
皆さんは、なんでタメ口が許されるかわかる?まぁ…わかるか。あの甘々な辺境伯で将軍で僕の義父上だからね。まぁ軍の上層部には秘密裏に話しがいっているみたいなんだよね。詳しくは僕も知らないけど、将軍と副将殿が何かしらしているらしい。でも、限られた人にしか話が行っていないから、大体は、レイルさんみたいな反応か、あの不貞隊長みたいに蔑んでくるかのどちらか。スノウさんは、彼女の記録を僕が目の前で抜かしたから、立場こそわかられていないけど、魔法の腕は知っているからって感じかな…。
「それでは、スノウ隊進発である!」
「ってぇ…大隊長殿が声を上げちゃだめでしょ?」
「おぉ…これは失念していた。では、改めて。スノウ。進発の合図を」
「えっえっ!?かっ…閣下の声で…。あっダメ…ですか。えっ?あっ!やっやります…。しっ…進発…です」
「はっ!」「うむ」「はぁい」
輜重隊最後の2台の馬車が進発した。他の隊から遅れること凡そ1時間であった。
「さて…少し急がないとですかね?」
「いや。大丈夫であろう。他の隊の物資が先に届くのであるからして、我が隊の物資位遅れても問題はなかろう。しかも、遅れた理由が理由であるし、私もいるからな」
「はぁい」
しかしまぁ…多少なりとも好奇の目を向けられてはいるけれど、人間関係の不協和音に比べれば全然!いやぁ…あの2人を隊から外せたのは、やっぱり【運】がいいなぁ。