上官に喧嘩をふっかけちゃぁいけないよねぇ
「お前達ー!上官に向けてのその言動、許せん!軍法に則り処罰する!」
「「はぁぁぁ?」」
「お言葉ですが、大隊長殿。俺等になにか問題でも?ただただ、隊長殿とコミュニケーションを取っていただけですよ?」
「そうですよ!何も悪いことなんざぁしていませんよ?」
おぉ…大隊長殿の影になるように件の揉め事現場に着いて行くと、案の定チンピラみたいな2人は、言い返していた。あぁあ。上官の更に上官にまで楯突いて…。どれだけ処罰されたいんだか。
「あぁん?お前たちの言動なんざ、こっちに丸聞こえなんだよ」
「ハン!だからって証拠はあるんですか?証拠は!」
「そうですよ!証拠を出してくださいよ!なければ言いがかりによる冤罪ですよ?」
「…ッ!」
「ないんですよね?ないんじゃぁ仕方がない!冤罪だ!罪をふっかけられて、俺たちは貶められようとしている!」
「大隊長殿は、もしかして…聖国の間者ですか!?えぇ?」
あぁぁあ…見てられない…。凄いな…。あそこまで煽れるなんて…最早天才だよ。2人共確か、帝都の帝国陸軍軍人養成所時代からの問題児で、法衣貴族の息子たちだったっけか。今まで、親の権力を傘にして好き放題やってきたんだろうけど…そんなものは通用しないのが、軍なんだよね。もちろん、大隊長殿もわかっている筈…。
「…お前達…いいんだな?」
「はぁ?証拠がないのにどうやって処分するんですかぁ?なぁ?」
「そっそうだ!凄んだって証拠がなきゃ俺等はなんともないんだぜ!」
おっ…おぉ…。大隊長殿が本気だ…。ってか、あの2人半ば自白しているようなもんだけど…頭も弱かったのね…。
「おい…。主のことだ。当然、準備はしておったのであろう?」
「「?」」
「はっ…はいぃぃ!録音機器を私の軍服のそこかしこにぃ…。どれ1つとも誤作動はしていないので、あっあのっ…あの2人の言動は…しっ…確りと、録音できていると思われますッ!」
「「!!!」」
「っと言うわけだ。来いっ!2人共!その根性叩き直してくれる!」
「はぁぁ?たかが大隊長クラスがなにを言ってるんですかぁ?」
「そうですよぉ?俺たちの親は、帝都で…宮城で働いているんですから!あんたより偉いんだよ!」
あぁ…。そろそろ出ないとだめかなぁ。じゃないと…。
「お前らのその減らず口「ストップ!」…?」
「何だよ!」
「あぁ!この前のっ!」
「けっ!資料室の穀潰しがなんの用だよ!」
「あはは。大隊長殿。抑えて抑えて。こんなところでムキになっても仕方ないでしょう?」
「すまぬ…」
「あぁ…貴方たちは、僕より年上だったかな?ということは先輩か」
「それがどうしたって言うんだよ」
「なんだよ!突然出てきて!引っ込んでろよ!」
「いやぁ…そういうわけにもいかなくて。先輩?たちの認識にちょっとした間違いがあって。それの訂正?というか、現実を見てね?って感じ?」
「「はぁぁ?舐めてんのか?」」
「ん?舐めてないよ?美味しくなさそうだし…」
「そういう意味じゃねぇ!」
「頭湧いてんのか?」
「頭沸いてるのは、お前た「どうどう!」むぅ…」
「先輩方…向かって右の先輩に質問です。ここは、どこですか?」
「あぁん?舐めてん「美味しくないので舐めません!」ッちっ…帝都西方部、聖国との紛争地を抱える帝都の辺境だよ!それがなんだってんだよ」
「おぉー!正解です。では、向かって左の先輩に質問です。帝国法に置いて、三方の辺境…南は港町なので除かれていますが、辺境伯の持つ権力とは?」
「平時は内政に身命を賭し、帝国の発展に寄与すべし。戦時においては、独自の采配権を有し、勅命を除き、現地での裁可を是とし、その存在は準皇帝とする」
「おぉ!正解です!」
「だからなんだってんだよ?」
「何が問題なんだよ!」
「はぁ…まだわかりませんか?現在、我々が立っているこの場所は、西の辺境であり、聖国との小競り合い…即ち戦時体制となっている。ということは、辺境伯軍というものは、準皇帝軍という位置づけと言うことになり、帝都の法衣貴族の戯言なんかは届かないんですよ。しかも、先輩たちは上官と更にその上の上官に楯突いた。それに、音声を録音されているという証拠まで揃っている。しかも、今回のこの揉め事で、進発まで遅れている。さぁ…軍法会議で処罰されるのは誰でしょう?上官への不敬と軍全体の遅延損害。先輩たち…もうわかりましたよね?いかに重大な問題を引き起こしたのかを」
「「ひっ…ひぃぃぃ…」」
「…というわけだ。お前達…覚悟…できているんだろうな?」
「あっ!大隊長殿!ちょっと待ってね?」
「ん?」
「すみませぇーん」
「?あぁ!マートですか。この隊だけ進発が遅れていたので、心配して見に来たのですが…。どうやら訳アリのようですね」
「「「「「副将閣下!」」」」」
「うん。実はね…」
斯々然々喧々囂々 〜説明中〜
「なるほど。わかりました。では、この2人は私の方で引き取ります。マート。隊が3人になってしまいますが…」
「ん?あぁ!勿論、大隊長殿も一緒に来てくださいますよね?」
「ん?うっうむ!他の隊は頻発してしまったからな」
「よかったぁ…。断られたらどうしようかと、内心ヒヤヒヤしましたよ!っというわけで…」
「わかりました。こちらで書類の方は書き換えておきます。では、道中気をつけて」
「「「ハッ!」」」
「はぁい!」
「ふふ。そう。そこの2人!」
「「ハッ!はいぃぃ!」」
「…着いてきなさい」
あぁぁ。あの2人はもう軍務にもつけないし、多分…居なかったことにされるんだろうなぁ…。まっ!僕には関係のないことだけどね!でも…本当に【運】がいいなぁ!大隊長殿まで着いてきてくれるなんてさ!