表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
運も実力のうち!  作者: 沙河泉
一章 第一部
3/25

将軍の憂鬱

「はぁぁぁ…」


おぉ。早々のため息、失礼した。儂は帝国辺境伯、帝都西方軍統括司令本部司令長官を拝命している。まぁ長ったらしいからな。皆は以前拝命していた西方将軍からとって、『将軍』と呼んでくれている。しかしなぁ…。


「はあぁぁ…」


「失礼いたします。おや?将軍。また溜め息なんか…あぁ。マートのことですね?」


「ああ。そうなのだ。しかしなぁ…前線に出てもらわんと功績が…」


「良いではありませんか。資料室に閉じこもっていても」


「ぬしは困らぬであろう。仕事の能率がマートによって上がっておるのだから」


「ええ。彼のお陰で、戸籍の見直しによる人口の増加から収穫量調査による兵糧の増加。商工業促進による税収の増加まで。上げればキリがありませんが、内政官として非常に優秀ですよ!」


「うむ…しかしだな…。帝都や後方の都市群であれば出世は望めるだろう。周りからの信頼や人脈も築けるであろう。だがな。ここは、国境に面しており、最前線でもあるのだよ。そうなると、信頼や人脈を築くには、マート自身の武力による活躍が必須なのだ…」


「それは存じておりますが…」


「それにな。やつは2年前にここに流れてきた。この辺境にだ。しかも比較的治安の良い街道を通ってではなく、魔物や盗賊が跋扈する森を抜けて…だ」


「将軍は、彼に武働きが可能である…そうお考えというわけですね」


「うむ。しかし…マートを前線に配置しようにも、本人から『お願い』をされてしまうと、どうにも断れぬ…」


「まぁ…彼の『お願い』に関しては、無理難題を押し付けるのではなく、まぁいいか。と思える妥協的な部分がありますから、断りにくいですよね。甘々な将軍様とはいえ」


「甘々は…多少認めざるを得ぬが…」


「多少ではないでしょうに…。それで、彼はなんと?」


「輜重部隊の配属を願ってきた」


「まぁ…戦うには食料が肝心ですからね。それは確かに断りにくい。しかし、武働きは望めない…」


「難しいが…」


そう。マートの願いは、儂の思う活躍をしてはくれなんだが、いやしかし…うぅん…。頭をフル回転させても望ましい答えは出てこない。活躍はしてほしいが、マートの望みも命も大切にせねば…。やはり甘いのか…?


「ふぅ…よし。これを」


「はい。マートの輜重部隊配属認可証明書。たしかに受け取りました。補給部隊長に提出し、マートに声をかけてきます」


「頼んだ」


「はい。承りました」


はぁぁ…少しは変わってくれないか…。まぁ無理だろうな。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ