おつかい ③
おつかいと言っても、将軍の手紙を西の関塞の様子を『マート』として見るだけだからね。面倒なことにはならないはず。それに、隣を歩く大隊長の指令書も持っているから変なのにも絡まれる心配はない。なんてったって、本人同行だからね。
「しかし・・・主よ」
「ん?どうしたの?」
「その・・・なんだ。目立ちたくないというのはわかるのだが・・・その・・・」
「歯切れが悪いね。あぁ。目立ちたくないのはね、仕事が増えて面倒なことに駆り出されて、責任が増えるのが嫌なんだよね」
「それだけ力があるのに、責任を負いたくないというのは・・・いささか無責任ではないか?」
「力ねぇ・・・。大隊長はさ。おとぎ話って読んでた人?」
「うむ。人並みには読んでいたが。それが?」
今でこそ女傑と呼ぶにふさわしい体格だけど、そうか。幼いころは確りと少女だったんだ。間違っても野山を棒切れ一本持ってかけていたわけではないんだろうな。うん。
「何やら、良からぬことを考えていそうであるが。幼いころは、本を読み白馬の王子様に憧れつつ、自分より弱い男は嫌であったからな。父が使っていた木刀を手に、大木に打ち込みなどをしていた」
「あっ・・・。やっぱり」
「ん?何か言ったか?」
「いや。何も。そっか。本を読んでいたんだ。当然、勇者の物語も?」
「あぁ!読んでいたぞ!男はあれだけ強くなければな。魔王城へと進撃し、側近たちをなぎ倒し。聖職者や格闘家、重騎士や魔法士とともに魔王へと挑み、勝利した。そして、勇者は自身の出身国の姫と結ばれる・・・。いやぁ。憧れるではないか。最強の男が姫と結ばれるのだ。これ以上の誉れはないし、そのような出会いをしてみたいものだ」
「もし、仮にその話の続きがあったとしたら?」
「む?そう・・・だな。姫とともに安穏とした日々を子どもたちとともに過ごすのではないか?人類の危機は去ったのだから」
「うぅん・・・。そういう未来もあったのだろうね。あっ!着いた」
「うん?主よ一体なんの・・・」
「大隊長。この駅からなら西の関塞の最寄りの街まで行けるよね?」
「うむ。先ほどの指令書を出せば、乗車賃もかからぬ。半官半民の駅であるからな」
「おぉ!お金・・・将軍からもらっていたけど、使わなくていいなんて!大隊長さまさまだよ!次の列車はっと・・・」
「15分後であるな。領都から最寄りの街までは約1時間ほどか。少し待っていてくれ。旅の共に何か見繕ってくる」
「はぁい!」
大隊長は駅の売店に行ってくれた。約1時間の旅路だ。少しおなかに入れたくもなるからありがたい。しかし・・・勇者の物語。大隊長の考え方の通りに勇者の余生が過ごせていたのなら良かったんだけれど・・・。あっ!そうそう。記憶は抜けていないんだよね。確りと全部覚えてるよ。ただ、居心地がいいからさ。将軍には悪いけれど、もう少しこのまま過ごさせてほしいかな。なんて・・・。
「主よどうした?虚空を見つめてブツブツと」
「ん?いや。なんでもないよ?それよりも・・・」
「うむ。確りと駅弁を購入してきたぞ。さぁ、列車に乗り込もうではないか」
「うん!大隊長ありがとう!」
さぁ・・・西の関塞までもう少しだ―――――。




